株式会社ユトリア 代表取締役 岩井陽祐氏

株式会社ユトリアは、日本の縁起物である「だるま」を現代的なデザインで再解釈し、ギフトやインテリアに合う形へと生まれ変わらせただるまブランド「YOHΛKU TOKYO」を企画・販売しています。カラフルなデザインやポップカルチャーを取り入れ、インバウンド層や若い世代が手に取りやすい和モダンなだるまを提案しながら、企業向けのオリジナル制作まで手がける点が特長です。今回は、代表取締役である岩井陽祐氏に、事業を始めた経緯や資金調達で直面した壁について伺いました。

縁起物のだるまを現代のライフスタイルへ再定義するネオスタイルブランド

事業の内容をお聞かせください

当社は、日本の伝統工芸品であり縁起物でもある「だるま」を、現代のライフスタイルに合わせて再定義するネオスタイルだるまブランド「YOHΛKU TOKYO」を展開しています。デザインやアートの力を取り入れることで、ギフトやインテリア、空間装飾など、新たなユースケースを創出していることが特徴です。

 

これまでのだるまは、赤色の縁起物として年末年始や受験、選挙など限られたシーンで使われることが多く、季節性の高い商材というイメージがありました。

 

しかし近年では、カラーバリエーションを増やしたり、企業ロゴを取り入れたりするなど、従来の枠を超えた活用が広がっています。当社は、この変化をより明確にブランドとして打ち出しています。  

 

最近POP MARTのLABUBUなどが社会現象になっていましたが、そうしたポップカルチャーを体験できる現代の若者が手に取れるギフト向けのだるまや、インバウンド層の方々が手に取りやすい和モダンなだるまを展開しています。また、日本を象徴する「侘寂」「禅」「菊」といった要素をだるまに取り入れ、新しいだるまの形を作っています。

 

さらに、だるまはフォルムそのものの汎用性が高く、IP(知的財産)やキャラクターとのコラボレーション、他ブランドとのタイアップにも展開しやすいプロダクトです。そのため、従来は比較的低価格帯が中心だった伝統工芸品を、高付加価値・高単価な商品へと展開できる点も、当社の大きな強みだと考えています。 

 

ターゲットは大きく2つあります。BtoCでは、日本を訪れる中華圏やヨーロッパ、北米などのインバウンド旅行者が中心です。従来の縁起物としてのだるまではなく、思わず持ち帰りたくなるデザインプロダクトとして提案しています。

 

一方、BtoBでは、海外VIPの来日時やインセンティブ旅行などで活用される企業向けノベルティとして、オリジナルデザインのだるまを制作しています。企業ロゴやブランドコンセプトを反映した一点物として提供できることも評価されています。

 

販売チャネルについては、D2CではECサイトを中心に展開しています。加えて、浅草でポップアップストアの開催も予定しており、ECと期間限定店舗を軸に一般消費者との接点を広げていきます。

 

法人向けでは卸販売が中心で、セレクトショップやインバウンド向け和雑貨店、ツアー会社、観光会社などへ商品を提供しています。企業のノベルティや訪日客向けのギフトとして採用されるケースも増えています。

 

こうした販路を拡大できる背景には、市場そのものの変化があります。2020年頃から、だるまは従来の「縁起物」という位置づけだけでなく、インテリアやギフトとしても楽しまれるようになり、通年商材としての認知が広がってきました。

 

一方で、この市場においてスタートアップとしてブランドを展開している企業は、当社を含めても1〜2社程度と非常に少なく、大半はメーカーによる直接販売です。当社は、OEMモデルで企画・ブランディング・マーケティングを担い、製造は職人や工房と連携するビジネスモデルを採用しています。

 

このような役割分担でブランドを展開している企業は非常に珍しく、それが当社ならではの競争優位性につながっていると考えています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

元々は前職で、日本の抹茶を海外へ届ける「Japan to Global」を掲げるスタートアップに所属し、粉末抹茶の輸出事業に携わっていました。この経験が、現在の「YOHΛKU TOKYO」の事業につながっています。

 

当時のビジネスモデルは、現在の事業と非常によく似ています。前職では、農園や製茶会社など一次産業に携わる方々から商品を仕入れ、それを私たちがパッケージ化し、ブランドとして国内外へ展開していました。

 

一次産業に携わる方々は、強いこだわりや情熱を持って素晴らしい商品を生み出しています。しかし、その価値を適切に届ける役割がなければ、日本の文化や伝統産業は徐々に縮小してしまいます。

 

だからこそ、商品を現代のマーケットに合わせてリブランディングし、再編集することで、日本の文化や工芸の魅力をより多くの人に届けられるのではないかと考えるようになりました。

 

実際に抹茶事業では、海外でのブームを通じて、ブランドづくりやマーケティングを担うプレイヤーが増えることで、市場全体が成長していくことを実感しました。この考え方を別の日本文化にも広げられるのではないかと考え、次に着目したのが「だるま」でした。

 

だるまを選んだ理由は、単に日本文化の象徴だからというだけではありません。現在はAIやITの進化によって、多くの意思決定が効率化される一方で、人々が自分自身と向き合ったり、願いを込めたりする「心の余白」が少なくなっているように感じています。その反動として、世界的にスピリチュアルな価値観への関心が高まっています。

 

だるまには、願いを込めて右目を入れ、目標を達成した際に左目を入れる「目入れ」という文化があります。受験や仕事、恋愛など、どのような目標であっても、自分の意思を形にし、達成まで寄り添ってくれる存在です。

 

海外では「SBNR(Spiritual But Not Religious)」という考え方が広がっています。特定の宗教には属さないものの、精神的な豊かさやスピリチュアルな価値を求める人々が増えているという潮流です。こうした価値観の変化を踏まえると、だるまは現代の国内外の人々の感覚に非常に合うプロダクトだと感じ、この事業を始める大きな理由の一つになりました。

 

また、前職の抹茶事業を通じて、日本文化そのものの可能性にも強く惹かれるようになりました。それ以前は、そこまで「日本文化」というテーマを意識していたわけではありません。しかし、テクノロジー分野で世界と競争することが容易ではない中で、日本が今後グローバルで存在感を発揮するには、「文化産業」や「文化IP」の領域が重要になると考えています。

 

抹茶やだるま、和牛、錦鯉、盆栽など、日本には世界に評価される独自の文化や美意識があります。こうした価値を現代的に再編集し、世界へ届けていくことが、日本ならではの競争力につながると考えています。

感情ではなく根拠で決める。リーン・スタートアップで仮説検証を重ねる

仕事におけるこだわりを教えてください

感情的な意思決定も大切ですが、何かを判断する際には、自分の中で明確な根拠を持つことを大切にしています。

 

どの事業においても、まずは要素を分解し、市場や顧客をセグメント化した上で、本当にニーズがあるのかを検証します。その上で、POCを繰り返しながら仮説検証を行い、市場に求められるサービスへと磨き込んでいく「リーン・スタートアップ」の考え方を重視しています。

 

大きな構想をいきなり形にするのではなく、小さなモデルをスピード感を持って展開し、実際の反応を見ながら改善していく姿勢は、だるま事業においても変わりません。

 

現在も、BtoB営業、リテール、EC、店舗販売など、さまざまな販売チャネルを試しながら、どこに最もリソースを投下すべきかを検証し、事業の成長につなげています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

資金調達における壁は非常に大きかったです。伝統工芸品をテーマにしたスタートアップへの投資は前例がほとんどなく、実際に30数社の投資家やファンドを訪問しましたが、最終的に出資いただいたファンド以外からは断られるという経験もしました。

 

大きなハードルとなったのは、スタートアップ投資においては市場規模や成長可能性が重視される一方で、伝統工芸品の市場は将来性を数字で示しづらく、投資家にとって判断が難しい領域だったことです。

 

そのため、単なる「だるま販売」の事業ではなく、だるまを起点にIPビジネスへ展開し、日本の文化産業そのものをブランド化・IP化していくという大きなビジョンを、どのように伝えるかが重要でした。

 

投資家向けの資料も、最終的に7回ほど大きく修正しました。投資家によって重視するポイントは異なるため、スライドの一部を調整するだけでなく、時には全体の構成を見直しながら、プレシードラウンドの資金調達を進めました。試行錯誤を重ねた結果、最終的に調達を完了することができました。

 

こうした壁に直面した時に自分の中で決めていたことは、とにかく手を止めないということです。精神的に厳しい状況でも、行動を続けていれば必ず次の可能性が見えてくる、という経験則がありました。

 

資金調達で思うような反応が得られない時も、VCを訪問し続けました。また、SNSでの発信も止めず、日々できることを積み重ねました。こうした地道な行動の積み重ねが、時間とともに複利のように積み上がり、事業の成長につながっていくと信じています。

 

もちろん、適度にリフレッシュする時間も大切にしていますが、大きな視点で見ると、挑戦を続ける上で最も重要なのは手を動かし続けることだと考えています。

「だるまと言えばYOHΛKU TOKYO」第一想起ブランドを作り上げる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

社会にインパクトを残すサービスを作りたいという思いのもと、「だるまと言えばYOHΛKU TOKYO」と国内外で認知される、だるまの第一想起ブランドを作り上げることが一番のモチベーションです。 

 

従業員のモチベーションを維持する上で意識しているのは、スタートアップとして描いている未来をしっかり共有すること、そして創業フェーズならではの環境を楽しんでもらうことです。

 

現在のような10名以下の組織では、営業、マーケティング、バックオフィスなど、幅広い業務に関わることができます。役割が細分化されていないからこそ、自ら考えて動き、ゼロから事業をつくる経験ができます。

 

こうした裁量の大きさや、事業の成長に直接関われる環境は、個人のキャリアにおいても大きな財産になります。創業期だからこそ得られる経験や成長機会の魅力を伝えながら、メンバーが主体的に挑戦できる組織づくりを大切にしています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください

国内でインバウンド向けに販売している事業者は多く存在しますが、今後は海外向けにしっかりと輸出の販路を作っていくことに注力していきたいです。「日本のだるま」という文化産業そのものを、日本のアイコンとして認識してもらうことが当社のテーマです。

 

そのためには国内の基盤を強固にしつつ、定常的に海外輸出を行える仕組みづくりをしていきたいと考えています。現在も、だるま工房の職人が海外からの依頼を受けて制作するケースはありますが、今後は日本側から積極的に海外営業を行い、輸出量を増やしていくことを目指しています。 

 

また、自社メディア「Daruma Times」などを通じて、国内外にだるまの魅力や背景にある文化を発信し、だるまをより身近な存在として広げていきたいと考えています。

 

短期的な数値目標を過度に追うことはしていません。販売数だけを重視すると、ブランドが本来目指す成長曲線とずれてしまう可能性があるためです。その代わりに、有名キャラクターやIPとのコラボレーション、ギフティング、インフルエンサーマーケティングなどを通じて、まずはブランド認知を高めることを重視しています。

 

難しく捉えず飛び込む。アーリーなベンチャーで基礎体力を磨く

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

起業はなかなか踏み出しづらいものだと思いますが、あまり難しく捉えすぎずにチャレンジしてほしいです。

 

ゼロから1人で始めるのが難しい場合は、まずは5名以下のアーリーなベンチャー企業に飛び込んで、創業期の動きを学ぶのが一番の近道だと思います。そこでビジネスの基礎体力をつけ、根拠を持って意思決定できるマインドセットを身につけることをおすすめします。

採用を強化されているそうですね

当社は「Japan to Global」として、これから日本が大切にすべき文化産業を現代風にアップデートし、世界へ展開していく面白さがあります。これまでにない市場を切り拓く経験ができる環境のため、興味を持っていただけた方はぜひ飛び込んできてほしいです。

 

当社が求めているのは、スキルよりもバイタリティやガッツです。何事にも全力で取り組んでくれる方や、時間をかけて熱量を持って事業に向き合ってくれる方をお待ちしています。

 

採用サイトはこちら

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:岩井 陽祐 氏

2025年7月、デジタルマーケティングを活用したメディア事業を手がける株式会社ユトリアを設立。学生時代から抹茶ブランドの海外展開に携わり、商品企画、SNS運用、SEOメディア運営、海外マーケティングを経験。2026年2月にメディア事業を譲渡し、同月より日本の伝統工芸品であるだるまの魅力を発信する「Daruma Times(だるまタイムズ)」を運営。現在は、現代的なデザインを掛け合わせただるまブランド「YOHΛKU TOKYO」の立ち上げを推進している。

企業情報

法人名

株式会社ユトリア

HP

https://yutoria-inc.jp/

設立

2025年7月

事業内容

  • だるまブランド「YOHΛKU TOKYO」の企画・販売(EC・ポップアップ・法人営業等)
  • だるま専門メディア「Daruma Times(だるまタイムズ)」の運営

 

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