株式会社be-FULL 代表取締役CEO 岩井 凌太

株式会社be-FULLは、ミドルマネジメント支援プラットフォーム「PXクラウド」の開発・提供を行っています。マネジャーが会議に追われる時間を減らしながら、意思決定や部下の育成といった本来集中すべき業務に注力できるよう支援し、その質の向上まで伴走するAIエージェントとして、エンタープライズ企業を中心に導入が広がっています。今回は、代表取締役CEOの岩井凌太氏に、事業の詳細や起業の経緯、今後の展望などについてお話を伺いました。

マネジャーの右腕として動くAIが、忙しい現場に伴走する

事業の内容をお聞かせください

当社は、マネジャーの右腕として動くAIエージェント「PXクラウド」を開発・提供しています。

 

マネジャーには意思決定や部下の育成、メンバーのモチベートなど、本来注力すべき業務が数多くある一方で、プロジェクトや部下の状況を把握するための会議をはじめとした情報収集業務に追われがちです。

 

そこで、マネジャーが本来集中すべき業務にしっかり時間を割けるよう、それ以外の業務をAIで代替・効率化するとともに、意思決定やモチベートといったマネジメントの質そのものを高められるよう伴走することを目指しています。

 

具体的には、会議などの現場のデータと、組織のミッションやKPIといった戦略に関するデータを組み合わせて分析しています。これにより、マネジャーが出席していない会議の中にも、フォローが必要なメンバーや課題が潜んでいないかを自動的に検知できる仕組みになっており、あらゆる場に顔を出さなくても目を配るべきポイントが明確になります。

 

実際に、マネジャーの会議出席時間は平均で月9〜10時間ほど減少しているという結果も出ています。

 

同時に、会議での振る舞いに対して「ここは良かった」「ここを変えるとより部下をモチベートできる」といったフィードバックも送っており、マネジメントスキルの向上も後押ししています。

 

利用時のインターフェースにもこだわっています。会議にAIのメールアドレスを招待するだけで自動的に分析が行われ、基本的には1日1回、朝8時にその日の会議をまとめたレポートがメールで届きます。

 

加えて、2週間や1ヶ月、半年といった周期でしか見えてこない情報は、それぞれのタイミングで別途届く設計です。普段の業務に溶け込む形でなければ使ってもらえないという課題感から、あえてメールという身近な手段を選びました。

 

こうした提案の精度を支えているのが、裏側にある膨大なロジックです。マネジメントに関する知見をもとに、人事コンサルタントや企業でマネジメント研修を担当していたメンバーとともに土台を作り、5万件ほどの会議データを1件ずつ分析しながらロジックやプロンプトを磨き上げてきました。現在も継続的にブラッシュアップを重ねています。

 

主な導入先はメーカーや金融機関、IT系企業などのエンタープライズで、トライアルをしていただいた企業様は全社が本導入に至っており、ご導入先の企業様からのご紹介でもサービスが広がっています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

原点にあるのは、大学時代に出会った「ウェルビーイング」という概念です。研究室を選ぶ際、自分を含めできるだけ多くの人が幸せになれる方向で何かできないかと考えるようになり、「幸せとは何か」を突き詰めていく中でウェルビーイングという考え方に行き着きました。

 

当時はまだ日本では馴染みの薄い概念でしたが、大学の研究室で学びながら、イギリスに留学して学びを深めました。その過程で、ウェルビーイングを届けるために、自分の人生やキャリアに納得感を持てていることと、周囲から評価/感謝され、貢献できているという実感を持てていることの両方を重視したいと考えるようになりました。

 

そして、組織の中でメンバーのキャリアと成果の両方に伴走できる唯一の存在がマネジャーであることに気づき、マネジメントをより良くすることで、多くの方のウェルビーイングを実現できるのではないかという考えに至りました。

 

起業を決意したきっかけは、2022年の年末に人生の転機となる出来事がいくつか重なったことです。3が日に一人で下呂を訪れ、温泉に入ったり飛騨高山の山を登りながら「挑戦しよう」と決意し、会社を離れて起業しました。

 

当初は1on1のサポートツールを展開し、エンタープライズ企業への導入や売上にもつながっていましたが、事業を進める中で、現場では1on1そのものへの関心が高くない、という実態に気づきました。そこで2024年の末に事業をゼロから見直し、現在のPXクラウドの形にたどり着いています。

感謝を軸にした組織文化と、ゼロからの事業再構築

仕事におけるこだわりを教えてください。

こだわっているのは、感謝を忘れず、伝え続けることです。

 

メンバーにやりがいを持ってもらうには、納得感を持って仕事に取り組めているかということと同じくらい、周囲に貢献できている、感謝されているという実感を持てることが重要だと考えています。

 

そのために、自分から感謝を伝えたり、頑張ってくれたメンバーを称賛することを意識していますし、そうした姿勢が広がることで、社内にも自然と感謝や賞賛を伝え合う文化が根づいていくのではないかと考えています。

 

私自身がそのような文化が好きだからこそ自分から実践するようにしています。結果的にそのような考えに共感してくれる方が自然と集まってくれて、感謝や賞賛が自然と起こる組織になっていると感じています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

もっとも悩んだのは、事業をピボットした時期です。

 

もともとは1on1のサポートツールを展開しており、エンタープライズ企業への導入も進み、売上も上がっていました。しかし、現場では1on1そのものへの関心があまり高くなく、質や効率を上げても十分に使ってもらえないという実態に、事業を進める中で気づいてしまいました。現場に浸透しなければ、ビジネスとしても社会にとっても大きな変化にはつながりません。

 

また、社会に届けられるインパクトという意味で市場規模も重視しているのですが、1on1から派生する市場が当初の想定よりも伸びないと感じたのも一つの要因です。

 

とはいえ、その時点ですでに4人ほどのメンバーがおり、費用をお支払いいただいているお客様も数社ありました。簡単に「やめます」とは言いにくい状況でしたが、メンバー一人ひとりに相談し、何度もお客様のもとにも足を運んで事情をお伝えしたうえで、ゼロから事業を考え直すことにしました。

 

このとき、メンバーが「岩井がそうしたいならついていく」と言ってくれたこと、お客様も好意的に受け止めてくださったことに大変助けられました。

 

事業を見直すという難しい局面でも、事情を率直にお伝えし、関係者の皆様と丁寧に向き合ったことで、関係を途切れさせずに進むことができました。当時のお客様には、現在も変わらずお付き合いいただいています。

 

変わらぬ軸を胸に、マネジメント領域で世界のトップへ

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

進み続ける原動力は、キャリアに納得感を持ち、やりがいを感じながら働ける人を増やしたいという思いです。組織の中で成果を出し、周囲から感謝され、自分が貢献できていると実感できる人を増やしたいという目標は、事業をピボットした後も変わっていません。 

 

ピボットを決めた時も、目指しているミッションがはっきりしていたからこそ、諦めるという選択肢は一度も浮かびませんでした。

 

今も課題は尽きませんが、周囲に助けていただきながら少しずつ改善できているという実感があり、そこから生まれる感謝の気持ちと、事業の進捗を実感した時の達成感が、前に進み続けられる大きな理由になっています。

 

壁は尽きませんが、その分だけ成長の実感も得られているため、楽しみながら取り組めています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

プロダクトとしては、組織マネジメントの領域で、まずは日本、将来的には世界のトッププレイヤーになることを目指しています。

 

私たちが考えるマネジメントのあり方が広がることで、働く人のウェルビーイングにつながる組織も増えていくと信じているため、組織マネジメントの新たなスタンダードをつくる存在でありたいと考えています。

 

企業規模としては、ユニコーン企業として上場し、将来的には時価総額1兆円規模の会社をつくることが目標です。社会に届けたい価値をより多くの人へ広げるためにも、事業を着実に成長させていきたいと考えています。

 

焦らず備え、タイミングが来た時に踏み出す起業論

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

すぐにでも動けるという方には、まずやってみるのがおすすめです。動いてみて初めて学べること、気づけることはたくさんありますし、実際にやってみて「違うな」と気づく方も少なくありません。

 

一方で、お子さんがいらっしゃるなど、すぐには身動きが取りにくい方も多いと思います。日本では起業を急かされるような空気を感じることもありますが、それが正しいとは思いません。

 

そうした方は焦らず、今のお仕事を続けながら起業の準備を本気で進めていけばよいのではないでしょうか。準備を積み重ねていけば、いつか「今だ」と思えるタイミングが訪れるはずです。

 

また、勢いだけで起業し、思い描いていたことがビジネスとして成立せず、生活のために本意ではない仕事に追われてしまうケースも見てきました。 そして、会社に勤めながらやりたいことをサイドビジネスとして育て、うまくいった段階でそちらに軸足を移していく方がリスクが圧倒的に小さく、幸せな選択になることもあると思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:岩井 凌太 氏

英国リーズ大学への留学を経て同志社大学卒業。2019年にパナソニックに入社。入社後より、スマートシティ開発プロジェクトで新規事業開発などを担当。並行して、ありたい姿を明確化するために思考と行動を両輪で回す「ライフデザイン」のプログラムやワークショップを社内外で実施。ライフデザインが自然と続く仕掛けを散りばめたライフデザインコミュニティを運営。2024年にbe-FULLを創業し、ミドルマネジメント支援AIを開発・運用。プロコーチ・国家資格キャリアコンサルタント。

企業情報

法人名

株式会社be-FULL

HP

https://befull-lifedesign.com/

設立

2024年6月5日

事業内容

ミドルマネジメント支援プラットフォーム「PXクラウド」の開発・提供

 

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