
Pestalozzi Technology株式会社は、学校向けに体力テストのデジタル集計・分析システム「ALPHA」を開発・提供し、企業向けには体力チェックサービス「ALPHA for Biz」を展開しています。年間数百万人規模の運動データを分析し、そこから相関や課題を導き出す分析力が強みです。今回は、代表取締役社長である井上友綱氏に、アメリカンフットボール経験から生まれた起業の原点や、運動データを価値に変える取り組みについて伺いました。
当社の事業は、大きく分けて学校向けと企業向けの2つのプロダクトで構成されています。共通するテーマは、「運動データを価値あるものにする」というパーパスです。
この考え方を軸に、学校向けには体力テストのデジタル集計・分析システム「ALPHA」を、企業向けには体力チェックサービス「ALPHA for Biz」を開発・提供しています。
学校向けの「ALPHA」は、教員と児童・生徒の双方に価値を提供するサービスです。
これまで体力テストの実施は、教員にとって非常に手間のかかる業務でした。例えば全校生徒600人の学校では、600枚以上の記録用紙が届き、それを学級ごとに仕分け・配布し、回収後は「この数字は0か6か」と読み取りを確認しながら集計する必要がありました。さらに、用紙の紛失リスクにも気を配らなければなりませんでした。
「ALPHA」では、この一連の作業をデジタル化しています。児童・生徒一人ひとりにアカウントを付与し、自身で結果を入力することで、その場で結果を確認でき、データも自動的に蓄積されます。教育委員会への提出もしやすくなり、先生方の業務改善に大きく貢献しています。
また、子どもたちにとっても大きな価値があります。従来は紙で運用していたため、集計・分析結果が返ってくるまで数か月かかっていましたが、子どもたちが最も運動への興味・関心を持つのは、体力テストを終えた直後です。
「ALPHA」では結果をリアルタイムで返却し、一人ひとりに合わせた運動動画をレコメンドすることで、すぐに改善へ取り組める環境を提供しています。
動画を自宅に持ち帰り、家族で一緒に取り組むケースもあります。実際にサービスを利用した保護者の方が「良いプロダクトだ」と感じて当社へ転職した事例もありました。
こうしたサービスが学校現場で実現できた背景には、1人1台端末環境の整備があります。2019年にGIGAスクール構想が始まり、現在では全国の小・中学校で児童・生徒一人ひとりにタブレット端末が配備されています。
「ALPHA」はモバイルアプリではなくWebアプリケーションとして提供しているため、ブラウザからログインするだけで利用できます。
企業向けの「ALPHA for Biz」は、主に労災予防を目的としたサービスです。高年齢の労働人口が増える中で、転倒などの労働災害も増加しています。65歳以降の再雇用が進む中、「これまでと同じ身体活動を伴う業務を安全に続けられるか」という不安を抱える企業が増えています。
そこで「ALPHA for Biz」では、従業員の体力や運動機能を測定・スコア化し、リスクを可視化します。企業には設備や作業環境といったハード面の改善を進めていただき、当社は体力や身体機能の維持・向上というソフト面から労災リスクの低減を支援しています。
さらに、当社では集計した運動データの活用にも取り組んでいます。体力テストの8種目だけでなく、身長・体重・視力や生活習慣アンケートなどのデータも蓄積しており、例えばBMIと朝食の摂取状況をクロス分析すると、肥満度が高い子どもほど朝食を食べていない傾向が見えてきます。
こうした分析結果をもとに、課題を抱える地域や学校を特定し、食品メーカーや製薬会社などと連携して食育の出前授業を実施するなど、本質的な課題解決につながる取り組みも進めています。
運動データを集めるだけでなく、分析・活用を通じて教育現場や企業、地域社会の課題解決につなげていくことが、当社の目指す「運動データを価値あるものにする」というパーパスの実現です。

私自身、高校・大学、そしてアメリカでアメリカンフットボールをプレーしてきました。アメリカには高校生や大学生、プロ選手が共通で受けるスポーツテストがあり、そのデータに基づいて大学生が奨学金を得たり、プロチームがスカウトしたりする仕組みがしっかりと機能しています。このビジネスモデルを日本でも展開しようと考えたのが、起業のきっかけです。
ただ、日本のスポーツビジネス市場は規模が小さいのが現実でした。そこで、学校現場が抱える体力テスト集計の手間、その切実な課題の解決へとピボットし、現在の事業へ発展させてきました。
大きなピボットはその一度ですが、製品の形は進化を続けています。当初は教員のスマートフォンアプリで撮影して計測する仕組みを開発していました。しかし現場では複数人が同時にテストを実施するため撮影が難しく、肖像権の問題も浮上しました。
ちょうどその時期にGIGAスクール構想で1人1台のタブレット環境が整備されたため、ブラウザで動作するWebアプリケーションへと切り替えました。環境の変化を捉えて製品の形を柔軟に変えてきたことが、現在の「ALPHA」につながっています。
私が大切にしているのは「まずはやってみる」ことです。どれだけ頭で考えても、実際に試してみなければ分からないことが数多くあります。仮に失敗したとしても、それは貴重な経験として財産になります。
一方で、検討だけを続けて時間を空費してしまうことは、最大の機会損失だと考えています。
だからこそ、スタートアップである当社では、思考に時間をかけるよりも、まず行動し、試行錯誤を重ねるスピードを大切にしています。この姿勢は私個人だけでなく、組織全体の文化としても根づかせていきたいと考えています。

事業構造上、法規制などが特別に厳しい業界ではないため、これまで事業を進める中で絶望的な壁を感じたことはあまりありませんでした。
強いて言えば、スピード感を持って実行する文化を組織全体に浸透させることが一番の課題であり、今もっとも注力している点です。私自身が大切にしている「まずやってみる」という姿勢を、どうチーム全体の当たり前にしていくかが挑戦だと捉えています。
なお、児童・生徒の個人情報を扱う事業のため、その取り扱いには細心の注意を払っています。国際標準の情報セキュリティ認証を取得しているほか、システムの設計段階で「個人情報を直接保持しない」仕組みを構築しています。
氏名や測定数値はサーバー送信時に暗号化され、ランダムな文字列として保管されます。そのため、万が一ハッキングが発生した場合でも情報を読み取ることはできず、開発元である当社であっても内容を閲覧できない仕様です。さらに、閲覧権限も厳格に管理することで、安全性を確保しています。
健康の三要素である食事・睡眠・運動の中で、運動はもっとも手軽で、かつ効果のレバレッジが大きい領域だと考えています。それにもかかわらず、大人になるにつれて運動習慣は途絶えてしまいがちです。
だからこそ当社は、「体力帝国を建国する」というビジョンを掲げています。子どもの頃から運動を習慣化できる環境をつくることはもちろん、企業でも就業時間内に運動を取り入れる取り組みを広げることで、運動が当たり前の社会を実現したいと考えています。
こうした取り組みは、日本国内にとどまらず、ASEANをはじめとする海外にも展開できる大きな可能性があります。まだ競合の少ない領域だからこそ、自ら市場を切り拓きながら挑戦できることに、大きなやりがいとモチベーションを感じています。
企業向けの「ALPHA for Biz」については、PDCAの「P・D・C」までは確立できていますが、最後の「A」にあたる伴走支援の部分は、現在まさに強化を進めている段階です。特定の年齢層への対応にとどまらず、企業全体への導入にも柔軟に対応できる体制を整えています。
企業向け市場には、単発のイベントとして体力測定を提供する事業者は存在します。しかし、労災予防や継続的な健康管理を目的に、データを高度に分析しながら改善まで支援する企業はほとんどありません。そのため、私たちはこの領域を「市場をゼロからつくる」フェーズだと捉えています。
仮に今後、後発企業が参入してきたとしても、当社の最大の強みはデータ分析力にあると考えています。学校向け事業を通じて、小・中学生を対象とした年間数百万人規模の運動データを蓄積・分析してきた実績があり、そこから得られた相関や因果関係に関する知見は、簡単に再現できるものではありません。
こうした分析基盤を強みに、スタートアップならではのスピード感を生かして先行優位を築き、カスタマーサクセスを通じて顧客との関係を深めていきます。そして、運動データを価値へと変え、企業の健康経営や労災予防に貢献する取り組みをさらに広げていきたいと考えています。

「迷っているなら、まずやってみよう」とお伝えしたいです。
人生100年時代において、20代や30代での挑戦と失敗は、いくらでも挽回が可能です。「あの時やっておけばよかった」と後悔を残すくらいなら、一歩踏み出して経験を得るほうが、はるかに価値があると考えています。
早稲田大学スポーツ科学部卒業。学生時代からアメリカンフットボールに取り組み、卒業後は単身渡米しNFL(National Football League)挑戦を経て、2009年に室内プロリーグAFL(Arena Football League)で1シーズン、先発4試合を含む合計7試合に出場。
帰国後、2014年にTHE CAMPを創業して、2015年に会社をMedical Fitness Laboratory株式会社(現:CAPS株式会社)に売却後、取締役最高執行責任者に就任。
2016年1月より株式会社XiborgでExecutive Officerを、2018年7月より株式会社Deportare PartnersでExecutive Directorを務める。
2019年7月、Pestalozzi Technology株式会社を創業し、代表取締役社長CEOに就任。
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法人名 |
Pestalozzi Technology株式会社 |
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HP |
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設立 |
2019年7月1日 |
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事業内容 |
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