会社の相続では、相続税がかかったり相続時に理解しておくべき注意点が多いです。会社相続はしっかりと理解した上で行わなければ、トラブルを引き起こす可能性が非常に高いです。

 

しかし、会社相続では相続税だけでなく、財産や負債など様々な面で手続きが必要になります。相続放棄をした方が良い場合もあるため、この記事を参考にした上で相続するかどうかを判断し、適切な手順で相続を行いましょう。

 

今回は、会社相続で知っておくべきことや正しく行う手順、相続放棄のやり方についても解説します。

会社の相続とは?

 

会社の相続とは、会社が発行する株式を相続することです。法律上は、自然人の相続はできないため、会社自体を相続するわけではありません。 

 

また、会社の財産についても被相続人の財産ではないため、相続の対象には含まれません。しかし、経営者が個人保証や借入をしていた場合には、相続の対象となることもあるため注意が必要です。

 

会社の相続では、株式の評価方法や相続税、正しい手順などを理解していないと後からトラブルになってしまいます。 会社相続でトラブルを起こさず円滑に手続きを進めるためには、重要事項を事前に理解しておくことが大切です。 

 

会社の相続を適切に行わないとどうなる?

 

会社の相続を適切に行わないと、自分自身が損をする可能性が高いです。会社の相続手続きには、期限があるものも多いため、各手続きにおいて一定期間を過ぎると後から手続きができなくなります。

 

例えば、相続放棄や限定承認の手続きでは「自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月以内」と定められています。例外で期限を過ぎても相続放棄が認められる場合はありますが、絶対ではありません。

 

相続放棄期間を過ぎてしまうと、原則として相続を「承認」したことになってしまいます。内容によっては、大きく損をする可能性が高いため注意が必要です。

 

会社の相続で知っておくべきこと

 

会社の相続で知っておくべきこととしては、下記5つが挙げられます。

 

  • 自社株の評価方法
  • 株式の相続時にかかる税金
  • 事業に関係する財産の相続方法
  • 後継者以外の相続人との関係
  • 会社債務に関する相続

 

会社の相続と言っても、上記のように様々な手続きが存在します。それぞれの手続きについて、概要や期間などを理解しておくことが大切です。

 

自社株の評価方法

 

会社相続をする際には、自社株の評価方法について知っておくことが大切です。会社相続の大部分を占めるのは「株式の相続」となるため、自社株を正しく評価しなければいけません。

 

株式の評価額によって相続税も変化します。また、株式の評価が高くなることで、他の相続人との間でトラブルが発生するかもしれません。

 

自社株の評価方法としては、下記3つが挙げられます。

 

  • 類似業種比準方式
  • 純資産評価方式
  • 配当還元方式

 

株式の評価方法についてさらに詳しく知りたい人は、下記記事を参考にしてみましょう。

 

中小企業の相続対策では事業承継税制を活用しよう!株式の評価方法も解説! – Venture.jp

 

株式の相続時にかかる税金

 

会社相続をする際には、株式の相続時にかかる税金についても理解しておきましょう。会社相続をすると相続税がかかります。相続税の対象となるものとしては、 下記のようなものが挙げられます。

 

  • 会社株式
  • 会社の事業用財産
  • 不動産
  • 預貯金
  • 生命保険
  • 経営者から会社への貸付金

 

上記の中で最も注意しなければいけないのが「経営者から会社への貸付金」です。貸付金では、会社の経費を立て替えたり個人資産を使ったりしています。貸し付けたお金が回収できなくても、相続税はかかります。

 

回収できない貸付金があると、支払い能力がないのに相続税だけが高額になることもあるため注意が必要です。 

 

事業に関係する財産の相続方法

 

会社相続をする際には、事業に関係する財産の相続方法についても理解しておくことが大切です。事業に必要な機械や備品などの財産は、後継者が相続しなければ事業継承が難しくなってしまいます。

 

小さな会社であればあるほど「事業に利用している財産が経営者の資産だった」ということもあるため注意しましょう。

 

事業継承でトラブルを起こさないためにも、事業に関係する機械や備品などの財産に関しては、生前に対策しておくのがおすすめです。

 

後継者以外の相続人との関係

 

会社相続をする際には、後継者以外の相続人との関係についても確認しておくことが大切です。後継者だけ株式の割合が多いと、他の相続人とトラブルになる可能性があります。

 

なぜなら、他の相続人が受け取れる遺産が少なくなってしまうからです。遺産分割協議がスムーズに進まなければ、会社経営全体にも影響を及ぼす恐れがあります。

 

会社相続でのトラブルを減らすためにも、生前から後継者以外の相続人との関係を明確にしておくことが大切です。

 

会社債務に関する相続

 

会社相続では、会社債務に関する相続についても理解しておきましょう。会社の負債自体は、相続の対象にはなりません。 しかし、相続によって会社の経営者となれば、負債も一緒に引き継ぐ必要があります。

 

ただ、負債だからといって全てが悪いものではありません。事業拡大のために必要な借入なら、売上状況によって良い場合もあります。反対に、赤字を補填したり返済のための借入があるなら相続はおすすめしません。

 

また、経営者が個人保証や借入をしていると、相続の対象となるため注意が必要です。会社債務がある場合には、何がどれくらいあるのかを明確にした上で相続を検討しましょう。

 

会社の相続を行う正しい手順

 

会社の相続を行う正しい手順は、下記の通りです。

 

  1. 会社の経営権を相続する
  2. 相続した自社株の名義変更を行う
  3. 株主総会で役員の地位を確保する
  4. 代表取締役就任後に様々な手続きを行う

 

会社相続では、自社株を相続すれば良いだけではありません。会社相続に関する詳細を理解していないと「経営権はあるのに株主としての権利行使ができない」のようなトラブルになってしまいます。

 

①会社の経営権を相続する

 

会社相続を行う際には、会社の経営権を相続する必要があります。会社の経営権を相続するためには、株式の過半数を保有しなければいけません。

 

また、事業目的の変更や定款変更などをする場合には、発行株式の議決権の3分の2が必要です。

 

つまり、会社の経営権を相続したとしても、会社に関わる重要な行為をするためには、発行株式の議決権の3分の2が必要となります。会社相続後に事業を安定させるためには、1人の相続人に株式を保有させるのが望ましいです。 

 

②相続した自社株の名義変更を行う

 

会社の経営権を相続したら、相続した自社株の名義変更を行いましょう。相続の名義変更を行わなければ、株主として権利行使できません。なぜなら、株式名簿に記載されている人しか株主としての権利が使用できないからです。

 

そのため、自社株を相続した後は、出来るだけ早めに自社株の名義変更を行いましょう。

 

③株主総会で役員の地位を確保する

 

自社株を保有することができたら、株主総会を開きましょう。株式を保有しても役員としての地位は確保できていないため、株主総会で役員の地位を確保しなければいけません。

 

株主総会で役員の地位を確保し、登記が完了すれば正式に会社相続をしたことになります。

 

④代表取締役就任後に様々な手続きを行う

 

正式に会社相続できたら、代表取締役就任後に必要な様々な手続きを行いましょう。具体的な手続きとしては、下記4つが挙げられます。

 

  • 法人の銀行口座の代表者の変更手続き
  • 社会保険関係の代表者変更手続
  • 許認可事業にかかる代表者の変更手続き
  • 取引先への通知

 

上記は、すぐにやらなければいけないわわけではありません。しかし、なるべく早くに手続きすることが望ましいです。

 

会社の相続を放棄することも可能?


会社相続を放棄したいと考えているなら、下記2つについても必ず理解しておきましょう。

 

  • 内容次第では相続放棄ができる
  • 相続放棄するなら「相続放棄申述書」を提出する

 

会社相続は、必ずしなければいけないというわけではありません。会社の業績や財産によって、会社相続を放棄した方が良い場合も多いです。しかし、会社相続を放棄するためには、定められた書類を提出する必要があり期限が設けられています。

 

提出期限を過ぎてしまうと、自動的に「承認」したと考えられてしまうため、必ず理解しておきましょう。

 

内容次第では相続放棄ができる

 

会社相続は、必ずしなければいけないわけではなく、相続放棄も可能です。相続放棄の理由としては、多額の負債や単純に相続したくないという理由などもあります。相続放棄しなければ、多額の借金を負ってしまう場合には、相続しない方が良いことも多いです。

 

しかし、相続放棄した場合は全ての相続ができないため注意しましょう。例えば、会社の株式や負債は相続せずに、土地や建物、備品だけは相続するといったことはできません。

 

相続放棄することで、メリットとデメリットのどちらが大きいのかを考えた上で、相続するかどうかを判断することが大切です。

 

相続放棄するなら「相続放棄申述書」を提出する

 

相続放棄するためには、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出する必要があります。相続放棄申述書は、相続開始の事実を知った日から3ヶ月以内に提出しなければいけません。

 

相続放棄申述書を期限内に提出しないと「単純承認」したと考えられるため注意しましょう。相続放棄申述書は、裁判所のホームページからダウンロード可能です。

 

相続の放棄の申述書(成人) | 裁判所

 

会社相続は専門家に依頼するのもおすすめ

 

会社相続は、手続きが複雑なだけでなく、相続した方が良いのかを考えること自体が大変です。しかし、会社相続を適切に行えなければ、自分自身が損をしたり他の相続人を巻き込んだトラブルに発展してしまう恐れもあります。

 

会社相続についての不安があるなら、専門家に依頼するのがおすすめです。専門家へ依頼すれば、相続人の確認から相続税の申告など幅広く対応してもらえるでしょう。

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