会社設立で大切な事は、会社経営を進める方法を理解しておくことだけではありません。安定した経営を進めるためには、会社設立で必要な税金について理解しておくことが大切です。
会社設立にかかる税金を理解しておかなければ、資金繰りで苦労したり、税金が支払えず罰則を受けたりしてしまいます。
今回は、会社設立前に知っておくべき、税金や節税のポイントについて解説します。個人事業主から法人成りする人は、個人事業主と法人にかかる税金の違いについても理解しておくことが大切です。
Contents
会社設立で必要な税金
会社設立で必要な税金は、下記の2つです。
- 定款にかかる印紙税
- 登録免許税
会社設立では、上記2つが必ず必要となります。会社設立前には、税金の内容や必要な費用について理解しておきましょう。
定款にかかる印紙税
会社設立では、定款にかかる印紙税が必要です。定款とは、会社の基本的なルールに関する内容を定めたもののことです。定款は、会社設立の際に必ず作成しなければいけないため、免除される事はありません。
また、定款作成には4万円の印紙税がかかります。しかし、紙ではなく電子定款で作成すると印紙税がかからないため、費用を抑えたい場合は電子定款での作成がおすすめです。
登録免許税
会社設立では、印紙税の他に登録免許税も必要です。会社を設立する際には、法人登記が必要であり、法人登記にかかるのが登録免許税です。
株式会社の登録免許税は15万円であり、合同会社では6万円の登録免許税がかかります。ただ、株式会社の登録免許税は一律で15万円ではなく、資本金の0.7%と定められています。資本金の0.7%が15万円を超える場合には、15万円以上の登録免許税が必要となるため理解しておきましょう。
会社設立前に知っておくべき税金
会社設立前に知っておくべき税金としては、下記5つが挙げられます。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
- 消費税
会社設立前には、会社設立後にどんな税金がかかるのかを理解しておくことが大切です。利益が出たからといって全てを使用してしまうと、税金が支払えなくなるため注意しましょう。安定した経営を進めるためには、支払う税額を事前に理解し、備えておくことが大切です。
法人税
法人税は、法人の所得に対して課税される税金のことです。法人税の税率に関しては、下記表を参考にしてください。
法人税は「課税所得×税率-税額控除額」で求められます。例えば、資本金3,000万円の企業で年間売り上げが600万円だった場合には「600万円×15.0%」となるため、90万円の法人税支払わなければいけません。
法人税率は、最大でも23.40%と定められているため、個人事業主の所得税率よりも低いのが特徴です。
法人住民税
法人住民税とは、法人登記をしている都道府県や市区町村に対して納める税金のことです。法人住民税の大きな特徴は、登記している都道府県や市区町村によって税率が異なることです。また、法人住民税は法人税割と均等割で考えられています。
法人税割と均等割の算出方法は、下記の通りです。
- 法人税割:法人税額(税額控除前の税額)× 税率
- 均等割:市町村区や資本金額、従業員数によって異なる
均等割は、企業によって税率が異なるため登記している住所や会社規模によって判断することが大切です。東京都の場合の法人住民税率を知りたい人は「均等割額の計算に関する明細書 – (第6号様式 別表4の3)記載の手引」を参考にしましょう。
法人事業税
法人事業税は、事業を営む都道府県に納める税金のことです。法人事業税率は、基本的に「課税標準額(所得等)×税率」で求められます。しかし、事業区分や法人の種類によっても異なるため、下記表を参考にしてみましょう。
引用:法人事業税・法人都民税 | 税金の種類 | 東京都主税局
特別法人事業税
特別法人事業税とは、法人事業税率の引き下げに伴い、新たに創設された税金のことです。特別法人事業税自体は国税ですが、法人事業税と一緒に納税しなければいけません。
全ての法人が対象となるわけではなく、法人事業税の納税義務のある法人が対象となります。また、令和元年10月1日以降に会社設立をした法人が対象です。
特別法人事業税率は、下記表を参考にしてください。
引用:特別法人事業税の創設について | 2019(平成31年度(令和元年度))年度の新着情報
消費税
消費税とは、商品販売やサービスに対して一律で課税される税金のことです。事業主でない限りは、消費税が含まれた状態で納税しているため、間接税に分類されます。
しかし、事業主の場合、課税売上高によっては消費税の納税義務が発生します。消費税の納税義務が発生するケースは、下記の2つです。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている
- 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている
ただ、資本金額や課税売上高によっては、会社設立から2年間は消費税の納税が免除されるため理解しておきましょう。
消費税について詳しく知りたい人は「消費税法改正のお知らせ(平成23年9月)|国税庁」を参考にしてください。
法人と個人事業主にかかる税金の違い
個人事業主にかかる税金は、法人にかかる税金とは名称が異なります。また、税金によっては名称だけでなく、内容や税率が異なるため理解しておくことが大切です。個人事業主にかかる税金としては、下記5つが挙げられます。
- 所得税
- 特別復興所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税及び地方消費税
上記の中でも、細かく理解しておくべき部分として所得税が挙げられます。所得税と法人税は、基本的な要素は同じなため、名前が違うだけだと思ってしまいがちです。
しかし、実際には法人事業税を損金算入できるため、法人税の課税所得金額が減少するため実際の税率よりも低くなる可能性が高いです。法人税と所得税の違いについて理解していないと、損をしてしまう可能性が高いため注意しましょう。
会社設立による税金面でのメリットデメリット
会社設立では、税金面でのメリットとデメリットを理解していなければ、会社設立後に税金に関するトラブルを引き起こしてしまうかもしれません。会社設立による税金面でのメリットデメリットは、下記表を参考にしてください。
会社設立による税金面でのメリット |
会社設立による税金面でのデメリット |
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会社を設立すれば、複数の控除や節税の利用が可能となります。また、相続税がかからないため、個人事業主と比較するとメリットが多いです。社会的信用度も高いため、個人事業主より資金調達に時間もかかりません。
しかし、会社設立をすると、会社の財政状況にかかわらず法人住民税がかかります。東京都の場合、年間で7万円の法人住民税が必要となるため大きな負担となる可能性が高いです。他にも、会社設立のために定款にかかる印紙税や登録免許税が必要となるため事前に理解しておくことが大切です。
会社設立後に節税するポイント
会社設立後に節税するポイントは、下記の5つです。
- 給与所得控除を利用する
- 家族と所得分散を行う
- 退職所得を活用する
- 欠損金の繰越控除を行う
- 納税義務免除の適用を受ける
少しでも節税することで、会社の利益を増やすことができるため事業を安定させやすくなります。経費として使用するだけでなく、さまざまな方法を利用することで節税できるため理解しておくことが大切です。
給与所得控除を利用する
給与所得控除を活用すれば、大きな節税効果を期待できます。給与所得控除とは、会社から支払う給与に対して一定額の控除が適用される制度のことです。
個人事業主の場合は、給与所得控除ではなく青色申告特別控除が利用できます。
また、役員報酬の形で給与を受け取った方が節税に有利になるためおすすめです。
家族と所得分散を行う
家族と所得分散を行うことで、節税できるため利用を活用しましょう。所得分散とは、1人で所得を得ることではなく、家族と所得を分散する方法のことです。家族に所得を分散するためには、役員報酬または給与として支払う必要があります。
所得分散することで節税できる理由としては、所得税が「累進課税制度」になっているからです。累進課税制度は、所得が高い分税率も高くなるため、1人で所得を得てしまうと税率が上がってしまいます。しかし、所得分散することで1人あたりの所得が少なくなるため、結果的に節税につながります。
また、個人事業主でも所得分散を行うことは可能です。しかし、法人と比較すると制限が多いため、利用前には法人と個人事業主との違いを理解しておきましょう。
退職所得を活用する
退職所得を活用することでも、節税可能です。ただ、全員に退職所得を活用できるのは、5年以上勤務した役員が対象となります。退職所得は、退職金支給額から退職所得控除を差し引けるだけではありません。
退職所得は、他の所得とは別として考えられます。つまり、退職所得を利用しても累進課税が適用されることはなく、節税に効果的です。
ただ、個人事業主だと退職所得を活用できないため理解しておく必要があります。
欠損金の繰越控除を行う
欠損金の繰越控除を行うことで、高い節税効果を期待できます。事業で赤字になった場合には、赤字を翌年以降に繰り越せる「繰越控除」を利用可能です。
例えば、起業して2年間は赤字が続いていても、3年目で利益が出た際に過去2年分の赤字額を繰り越すことで大きな節税に繋がります。 事業開始後は、赤字になる可能性が高いため、欠損金の繰越控除を活用できるかどうかで黒字化後の安定性が異なります。
繰越控除が可能な期間は下記の通りです。
- 個人事業主:3年
- 法人:9年
さらに、平成28年度の税制改正によって、法人の繰越期間が10年に変更されました。個人事業主の繰越控除可能期間よりも圧倒的に長いため、会社設立では積極的に活用することをおすすめします。
納税義務免除の適用を受ける
消費税の納税義務免除の適用を受けることで、節税できる期間を伸ばすことが可能です。消費税の納税義務は、課税売上高が1,000万円を超えている場合が対象です。課税事業者の対象となった場合には、2年後の確定申告で消費税を納税しなければいけません。
しかし、課税事業者になる前年に会社設立すれば、最大4年間は納税義務免除の適用を受けられる可能性が高いです。消費税の納税は、会社にとっても大きな負担となるため、個人事業主からの法人成りを考えている場合は参考にしてください。
会社設立前に税金の違いを理解しておこう
会社設立前には、会社設立にかかる税金について理解しておくことが大切です。また、個人事業主と法人の税金の違いを理解しておくことで、税金によるトラブルを未然に防止でき、経営を安定させることができます。
税金の支払いに関する罰則は非常に重いため、罰則を受けるだけで、事業経営を安定させられなくなる可能性が高いです。さらに、節税のポイントも理解しておけば、利益を増やすことにも繋がります。会社設立後に資金繰りによる倒産を防止するためにも、今回の記事を参考にして節税に関する仕組みを有効活用しましょう。
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