起業するためには、書類の提出や法人口座の開設など様々な手続きが必要です。会社設立をスムーズに進められれば、事業を行うためのまとまった時間を確保できます。

 

反対に、起業に必要な手続きの正しい流れを理解していなければ、会社設立に時間がかかってしまう恐れがあります。

 

今回は、起業に必要な手続きの種類や具体的な流れ、手続き時の注意点について解説します。この記事を参考にすれば、企業の手続きをスムーズに進められ、事業を進めるためのまとまった時間を確保することが可能です。

 

起業に必要な手続きは個人か法人で異なる

 

起業の種類には、個人事業主として起業する方法と法人として起業する方法があります。

 

個人事業主は、税務署に「個人事業の開廃業等届出書」を提出すれば設立手続きが完了するため、手続きの手間や費用がかかりません。法人を設立するためには「法人設立届出書」「源泉徴収票」「消費税関係届出書」「定款」の3つの書類を税務署に提出しなければならず、手間や費用がかかります。

 

そのため、費用を抑えつつ、簡単な手続きのみで起業したいと考えている人は個人事業主がおすすめです。

 

しかし、法人として起業することで経済的・社会的なメリットを受けられるため、手続き方法だけで判断するのではなく詳細まで理解した上で選択することが大切です。

 

起業に必要な手続きの種類

 

起業に必要な手続きの種類は、下記の通りです。

 

  • 登記申請書
  • 登録免許税納付用台紙
  • 定款
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑証明書
  • 資本金の払込みがあったことを証する書面
  • 印鑑届出書
  • 「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R

 

法人の種類や目的によって、必要な手続きは異なります。そのため、上記全てが必要になるわけではありません。

 

手続きによって、提出先や取得先が異なるため、1つ1つを理解しておきましょう。例えば、登記申請書は登記所で取得する必要がありますが、法人設立届出書は税務署へ提出する必要があります。各手続き書類の取得先や提出先を理解しておくことで、効率的に会社設立を進めやすくなります。

 

起業に必要な手続きの種類を理解するだけでなく、どんな手続きで費用はどの程度かかるのかなども理解しておくことが大切です。必要な手続きにどの程度の費用がかかるのかを理解しておくことで、会社設立時に資金不足になるリスクを減らせます。

 

法人として起業する際の正しい手続き手順

 

法人として起業する際の正しい手続き手順は、下記の通りです。

 

  • ①会社の基本情報を決める
  • ②資本金を用意し法人口座を開設する
  • ③必要書類を役所へ提出する
  • ④定款を作成し認証を受ける
  • ⑤資本金を支払う
  • ⑥登記申請書類を作成する
  • ⑦法務局へ会社設立登記申請を行う

 

起業として最も代表的なものが「法人としての起業」です。法人として起業するためには、登記申請書の作成や法人口座を開設しなければいけません。

 

法人として起業する際の正しい手続き手順を理解しておくことで、会社設立までの無駄な時間を削減し、事業をより早く進めることが可能です。

 

①会社の基本情報を決める

 

手続きを進める前に、会社の基本情報を決めましょう。会社の基本情報としては、会社名や印鑑の作成、役員報酬や資本金の金額設定などが挙げられます。

 

会社では、好きな名前をつけることが許されています。ただし、同じ住所で同じ社名を使用することはできません。そのため、事前に法務局に相談し、登記簿上の住所に同名の会社がないことを確認しましょう。

 

また、銀行ではないのに「銀行」と付けたり、有名企業の名前を選んだりすることは、不正競争防止法違反となるため注意が必要です。

 

会社名が決定したら、法人印鑑を製作しましょう。代表者印一本だけでも良いですが、会社銀行印や会社角印、会社認印、ゴム印も作っておくことをおすすめします。

 

また、役員報酬や資本金額も決めておくことが大切です。役員報酬額は、事業開始後3ヶ月以内に税務署に提出しなければいけません。資本金額は、会社の社会的信用度にも影響するため、先に決めておくことをおすすめします。

 

②資本金を用意し法人口座を開設する

 

会社の基本情報を決まったら、資本金を用意して法人口座を開設しましょう。資本金額のおすすめとしては、初期費用に加え、およそ3カ月から半年間は売り上げがなくても事業を続けられる程度を用意しておくことをおすすめします。

 

ただ、資本金額が1000万円以上の場合、設立1期目から消費税の支払い義務が生じるため、税負担額も考慮した上で検討することが大切です。

 

また、法人口座も開設しておきましょう。法人口座の開設は、必須ではありません。しかし、社会的な妥当性や取引先との交渉時の利便性を考えると、開設しておくのがおすすめです。

 

法人口座の開設には時間がかかるので、できるだけ早く申し込みを行いましょう。手続きには、金融機関の届出書、登記事項証明書、印鑑証明書、印鑑が必要です。

 

③必要書類を役所へ提出する

 

会社を設立するためには、関係する政府機関に法人を設立した旨を通知する必要があります。会社設立の際には、法人設立届出書や給与支払事務所等の開設届出書などの提出が必要です。

 

税務署や役所に提出する書類の種類は地域によって異なるため、事前に確認した上で期限内に必要な手配をすることが重要です。

 

④定款を作成し認証を受ける

 

必要書類を提出したら、定款を作成して定款認証を受けましょう。定款とは、会社を統治する規則を包含する法的拘束力のある書類のことです。

 

会社法では、定款に記載しなければならない事項が定められており、下記の3つに分けられます。

 

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項

 

絶対的事項に分類される内容を盛り込まなければ、定款の効力が失われるため注意が必要です。定款は、紙で作成する他にPDFファイルなどに保管する電子定款があります。電子定款を作成するためには、専用の機械が必要となるため、経済的に考えてもどちらで保管すべきかを検討しましょう。

 

定款を作成したら、公証人による定款の認証が必要となります。都道府県内の公証役場に連絡を取り、訪問日時を予約しましょう。また、訪問前に定款を送付して審査してもらい、矛盾点を事前に修正しておくことで、認証作業をスムーズに進められます。

 

⑤資本金を支払う

 

資本金の支払いは、定款の認証が確定した後に行います。なお、まだ出資しておらず、法人口座もないため、発起人の個人名義の口座に振り込みます。

 

登記手続きには、資本金が全額払い込まれたことを示す書類が必要となるため「振り込んだ通帳の表紙と1ページ目、振込をしたページをコピーしておきましょう。

 

⑥登記申請書類を作成する

 

資本金の支払いが終わったら登記申請書類を作成しましょう。登記に必要な書類は、下記の通りです。

 

  • 登記申請書
  • 登録免許税納付用台紙
  • 定款
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑証明書
  • 資本金の払込みがあったことを証する書面
  • 印鑑届出書
  • 「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R

 

所定の書類が揃ったら、法務局に提出しましょう。代表取締役が委任状を交付している場合は、代理人も申請可能です。

 

⑦法務局へ会社設立登記申請を行う

 

登記申請書類を揃えて製本できたら、法務局へ会社設立登記を申請しましょう。資本金を振り込んでから14日以内に、法務局に会社を正規のものにするための申請書を提出します。会社所在地を管轄する法務局に直接書類を提出することで申請できます。

 

会社設立のために法務局に書類を持ち込めない場合は「申請書類在中」のラベルを貼った上で郵送しましょう。なお、登記申請の認証には印紙が必要ですが、これは郵便局か法務局の販売窓口で購入可能です。

 

起業手続きをする際の注意点

 

起業手続きをする際の注意点としては、下記の3つです。

 

  • 正しい手順で起業手続きを行う
  • 会社登記にかかる費用を理解しておく
  • 起業後のことも考えた上で手続きする

 

起業手続きの注意点も理解していなければ、手続きをスムーズに行えなかったり、会社設立後の資金繰りに困ってしまう恐れがあります。起業手続きのことだけを考えるのではなく、起業後のことも考えた上で起業手続きを行いましょう。

 

正しい手順で起業手続きを行う

 

正しい手順で起業手続きをしなければ、予想以上に時間がかかってしまうため注意しましょう。予定では1か月で起業する予定だった場合に3か月程度かかってしまうと、事業が先延ばしになってしまう恐れがあります。

 

例えば、法人口座の開設には時間がかかることもあり、後回しにすると起業開始まで長期間を要してしまうため注意が必要です。

 

起業手続きに必要な手順を理解し、効率良く起業手続きを進めましょう。

 

会社登記にかかる費用を理解しておく

 

起業手続きをする際には、会社登記にかかる費用を理解しておくことが大切です。また、会社の登記変更に対しても、それぞれに税金がかかります。

 

会社には、役員の任期満了、辞任、死亡などによる担当者の変更登記が一定期間ごとに義務付けられています。また、定款に定めのない事業を開始する場合には、意思表示の変更登記が必要です。

 

さらに、旧本社所在地と異なる法務局の管轄区域に移転する場合は、旧本社所在地を管轄する法務局と移転先の所在地を管轄する法務局の双方に変更登記を申請しなければいけません。

 

変更の都度、変更の日から2週間の事務処理期間が必要となります。企業の経営計画に変更があった場合には、この期間内に該当する登記を変更する必要があるため覚えておきましょう。

 

起業後のことも考えた上で手続きする

 

起業手続きを焦るのではなく、今起業手続きを行い起業しても問題ないかを確認しておくことが大切です。中でも起業資金だけでなく、起業後の事業を運営する上で必要な資金も確保しておきましょう。

 

事業資金の確保では、銀行融資をおすすめします。銀行融資を受けることで、資金繰りが安定しやすくなるだけでなく、社会的信用にも繋がります。

 

銀行口座に資金を預けておくことで、銀行機関との関係を構築し、いずれ融資を受けられる可能性を生み出すことが加納です。また、一定の貯蓄があることを証明することができ、信用面でも有利に働くことがあります。

 

手続きの手順を理解してスムーズに起業しよう

 

法人として起業する場合には、手続きが複雑かつ手間がかかります。複数の書類を用意したり法人口座を開設したりしなければいけないため、正しい手順を理解していないと予想以上に時間がかかってしまいます。

 

反対に、正しい起業手続き手順を理解すれば、スムーズに起業できるため事業に費やす時間を確保できる可能性が高いです。

 

起業手続きの方法によって、スタートダッシュを成功させられるかどうかが異なるため、今回の内容を理解した上で起業手続きを行いましょう。

送る 送る

関連記事