Rice Platformer株式会社 代表取締役 川原田美雪

Rice Platformer株式会社は、おにぎり専門店「ONI&Co.」の運営を通じて、おにぎりを世界基準のファストカジュアルとして国内外に広げる事業を展開しています。前提を疑い続ける姿勢から、既存のおにぎりの常識にとらわれない商品・ブランド開発を行っている点が強みです。今回は、代表取締役である川原田美雪氏に、事業を始めた経緯や、起業から今までの最大の壁について伺いました。

おにぎりを世界基準のファストカジュアルへ

事業の内容をお聞かせください

当社はおにぎり専門店「ONI&Co.(オニアンドコー)」を東京都内で2店舗運営しています。2025年9月に1号店となる「ONI&Co. Tokyo Lab.」を東京都渋谷区の初台エリアに、続く2号店を2026年4月に東京駅内にオープンしました。

 

初台店では、近隣に住む方や働く方の利用が中心で、毎日、あるいは毎週足を運んでくださるリピーターも少なくありません。特に女性のお客様が多いことが特徴です。一方、東京駅店には、新幹線に乗る前の方や海外からの旅行者をはじめ、幅広いお客様が訪れます。立地ごとに異なるニーズを捉えながら、商品や店舗づくりの検証を重ねています。

 

素材選びで大切にしているのは、おいしさだけでなく、その背景にあるストーリーです。

 

お米は、地元・青森で出会った農家から仕入れています。当初は海外への発信に積極的ではなかった生産者とも対話を重ね、「この特別なお米を東京から世界へ届けたい」という思いに共感していただいたことで、取り組みが始まりました。具材についても、実際にアラスカを訪れ、天然漁業の現場を見たうえで選んだものを使用しています。

 

私自身、自分の目で確かめ、自信を持っておすすめできる食材を使うことを大切にしています。すべての商品で実現できているわけではありませんが、AIによって多くのものが効率化される時代だからこそ、生産者の思いや土地の背景が伝わる商品には、より大きな価値が生まれると考えています。

 

新商品の開発は、「世界のスタンダードになるおにぎり」をテーマに、月1回程度のペースで行っています。既存のおにぎりの延長線上で考えるのではなく、「なぜ三角形なのか」「米でなければならないのか」と、前提そのものを疑うところから発想を広げました。

 

以前は代表と飲食業界で20年以上の経験を持つ副代表が中心となって商品開発の軸をつくりました。現在は若手メンバーも加わり、立場に関係なく意見を出し合いながら新商品を生み出すチームへと育っています。

 

東京駅の海外客に向けたベジタリアン対応のおにぎりなど、テーマを投げかけて全員で考えることもあります。 新作を競い、採用されたメニューに成果を還元する企画も、メンバーのモチベーションにつながっています。 

 

私たちの強みは、こうした商品開発におけるスピード感と遊び心です。 スタートアップが持つ機動力をおにぎり専門店の運営に取り入れながら、今後店舗数が増えても、この柔軟な商品開発を続けられる体制をつくっていきたいと考えています。 

 

集客面では、立地や顧客層を分析した結果、SNS以上にGoogleマップの口コミが効果を発揮しています。

 

売上に占めるデリバリーの割合も大きく、Uber EatsやRocket Nowなどを利用したお客様から寄せられるレビューが、新たな注文や来店につながっています。写真付きの口コミを見た海外のお客様が店舗を訪れるなど、オンライン上の評価が次の利用を生む好循環ができています。

 

こうした施策には学生インターンのアイデアも取り入れており、若いメンバーの提案が実際の成果につながっています。 

 

インバウンド需要も、重要なターゲットの一つです。

 

東京駅店には多くの海外客が訪れるほか、初台周辺にも民泊施設があり、新宿などへ観光に向かう旅行者の利用が見られます。国内店舗を、海外のお客様にどのようなおにぎりが受け入れられるのかを検証する場としても位置づけています。

 

また、社名の「Rice Platformer」には、お米やおにぎりを起点に、地域の魅力を発信するプラットフォームになりたいという思いを込めています。農家との出会いから、青森のお米だけでなく、梅やちりめんなど、さまざまな地域食材を紹介していただく機会が広がっています。

 

今後は、生産者が手がけるおいしい食材や地域の特産品を商品として届け、その背景にある思いまで国内外へ発信する役割を担っていきたいと考えています。

 

現在の仕事・事業を始めた経緯をお伺いできますか

大学・大学院ではAI・機械学習を研究しており、最初に入社したのもLINE株式会社という技術系の会社でした。しかし次第に、技術だけで世界と勝負するよりも、アニメや漫画、食といったコンテンツの方が伸びしろがあるのではないかと考えるようになりました。

 

経営者になるきっかけは、大学の先輩から「おにぎりの会社を始めるので、社長をやってほしい」と声をかけられたことでした。

 

もともと自ら起業を強く志していたわけではありませんが、大学時代に所属していたアメリカンフットボール部で培った「頼まれたことは断らない」という姿勢から、その誘いを引き受けました。

 

寿司やラーメンといった日本食は、すでに世界中で多くの店舗が展開されていますが、おにぎりの海外市場はまだ十分に開拓されていません。その余白の大きさに魅力を感じ、おにぎりを「世界基準のファストカジュアル」として確立することを目指すようになりました。 

 

そうした経験を積み重ねる中で、次第に仲間やビジョンができあがり、経営者という役割が自分に合っていると実感するようになりました。

 

そして2025年4月、「おにぎりを世界基準のファストカジュアルへ」というビジョンを掲げてRice Platformer株式会社を設立し、同年9月に「ONI&Co. Tokyo Lab.」をオープンしました。

 

 

「なんとなく」を疑い続ける経営

仕事におけるこだわり、譲れない軸を教えてください

「なんとなくそういうものだ」という前提を疑い続けることを大切にしています。

 

たとえば、おにぎりは三角形でなければならない、コンビニには勝てないといった思い込みも、本当にそうなのかを一度立ち止まって考えます。多くの場合、明確な理由やルールがあるわけではなく、単に慣習として受け入れられているだけだからです。

 

社内でも、「普通は無理です」と言われたときには、まず「なぜ無理なのか」を問い直すようにしています。

 

生産数に限界があるのであれば、機械を増やせば解決できるかもしれません。資金が必要であれば、次に考えるべきは「できない理由」ではなく、「どうやって資金を集めるか」です。前提を疑い、課題を一つずつ分解しながら、実現する方法を考え続けることを重視しています。

 

組織づくりにおいても、上下関係ではなく「役割の違い」という考え方を大切にしています。

 

社長、社員、アルバイト、取引先、株主には、それぞれ異なる役割がありますが、誰かが上で誰かが下ということではありません。全員が自分の役割を果たすことで、初めて組織としての目標を達成できると考えています。この考え方の原点には、大学時代にアメリカンフットボール部でマネージャーを務めた経験があります。

 

スポーツでは、監督やコーチ、選手、マネージャーなど、それぞれの立場が異なります。しかし、全員が「勝つ」という同じ目標に向かい、それぞれの役割を果たして初めて成果につながります。

 

会社も同じです。私は経営者としての役割を担い、現場のメンバーはそれぞれの専門性や責任を果たす役割を持っています。上下の関係ではなく、横並びで意見を出し合い、共に考えられる組織を目指しています。

 

現在のフラットな関係性を、会社が成長した後もどのように維持していくかは、今後の大きな課題の一つです。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、資金調達の連続的な苦労です。

 

初台の店舗は約20坪あり、一般的な飲食店の開業と比べても大きな規模でした。居抜き物件ではあったものの、内装や設備を含めた初期費用は約1500万円と、小規模な居抜き店舗から始めるケースが多いなか、創業時としてはかなり大きな投資でした。

 

それでもこの店舗を選んだのは、将来的に東京駅のような大型施設へ出店するという明確な構想があったからです。

 

大きな商業施設への出店を申し込むためには、一定の広さと生産能力を持つ拠点が必要でした。当時は東京駅への出店が決まっていたわけではなく、空き区画すらありませんでしたが、いつ機会が訪れてもすぐに対応できるよう、先に必要な環境を整えることを決断しました。

 

しかし、オープン直後の売上は当初の予算の半分以下で、現在の10分の1程度でした。多額の初期投資を抱える一方、スタッフの人件費も支払わなければならず、資金繰りは非常に厳しい状況でした。自分の資金だけでは足りず、両親や親戚にも協力をお願いしました。

 

その後、2週間でエンジェル投資家からの資金調達を実現し、銀行からの融資も取り付け、借りた資金を返済しました。まさに綱渡りのような状況でしたが、初台店のオープンから4ヶ月後、念願だった東京駅への出店の話が舞い込みます。

 

想定よりもはるかに早い展開だったため、東京駅店を開くための資金も十分にはありませんでした。必要な資金がすべて入金されたのは、オープンのわずか1週間前です。

 

敷金などの支払いもなるべく待ってもらい、入金された資金をそのまま支払いに充てました。営業開始食後は、手元に運転資金がほとんど残っていない状態だったため、売上が立たなければすぐに事業が立ち行かなくなる状況でした。

 

それでも東京駅店はオープン当初から黒字となり、売上規模は一気に拡大しました。東京駅への出店によって、初台店がテレビなどで紹介された際にも、視聴者がアクセスしやすい東京駅店へ足を運んでくれるようになりました。初台店がブランドの魅力を発信し、東京駅店が販売の受け皿になるという好循環も生まれています。

 

振り返ると、創業時から大きな店舗を構えるという判断は、無謀ともいえる挑戦でした。東京駅への出店が実現していなければ、資金繰りが続かず、事業が立ち行かなくなっていた可能性もあります。しかし、将来の機会を信じて先に投資したからこそ、突然訪れたチャンスをつかむことができました。

 

現在も、事業の成長につながると判断すれば、積極的に投資する姿勢は変わっていません。資金面では常に緊張感がありますが、おにぎりの可能性を信じ、次の成長に向けた挑戦を続けています。

 

 

仲間の夢を背負い、世界一のおにぎり専門店を目指す

進み続けるモチベーションは何でしょうか

昔からとにかく大きな話が好きな性分で、「自分の想像の延長線にないことをやってみたい」という知的好奇心が、今も原動力になっています。

 

東京大学を卒業しておにぎり事業を選んだことに疑問を持たれることもありますが、全力で取り組まなければ答えは出ないと考え、日々事業に向き合っています。

 

今後やりたいこと・展望・野望などをお聞かせください

目指しているのは「世界一のおにぎり専門店」です。マクドナルドやサブウェイに並ぶ、世界基準のファストカジュアルとして定着させていきたいと考えています。海外でも朝食を選ぶ際に、「サンドイッチにするか、おにぎりにするか」と自然に迷うような世界を目指しています。

 

おにぎりそのものの市場価値を高めるとともに、おにぎり専門店と聞いたときに、真っ先に「ONI&Co.」を思い浮かべてもらえるブランドをつくっていきます。そのために、店舗展開だけでなく、プロモーションやブランディングにも力を入れていく方針です。出店については、東京を中心に展開しながら、海外進出も並行して進めていきます。

 

当面は東京の店舗数が最も多い状態になると考えていますが、アジアやアメリカでの出店に向けた準備も進めています。直近では三越(日本橋)でのイベント出店を実施するなど、新たな販路の開拓にも取り組んでいます。

 

店舗形態については、現在のようなテイクアウト専門店を主軸としながら、一部ではイートイン型の店舗も検討しています。さらに、オフィスなどにおにぎりを届ける卸売りのような形態も視野に入れ、店舗を持たない販売方法にも挑戦していく考えです。 

 

一歩踏み出す勇気と、引く勇気を

起業しようとしている方へメッセージをお願いします

起業を考えているのであれば、できるだけ早く一歩を踏み出してほしいと思います。どれだけ考えても、その事業が本当にうまくいくかどうかは、始めてみなければ分かりません。私自身も、今なお正解が分からないまま経営を続けています。

 

それでも、自分の可能性を信じて動き出したからこそ、仲間が増え、夢が大きくなり、新しい出会いや次の挑戦が生まれてきました。最初の一歩を踏み出すことで、そこから新たなモチベーションが生まれ、次の行動へとつながっていきます。すべてを理解してから始めようとするのではなく、まずは動いてみることが大切です。

 

一方で、走り続けるためには「引く勇気」も必要だと考えています。家族を犠牲にしてまで続けるのか、何年挑戦するのか、どの程度の売上を目指すのかなど、自分なりの基準をあらかじめ決めておかなければ、際限なく続けてしまう可能性があります。

 

引き際を決めることは、失敗に備えるというよりも、自分の人生や事業にメリハリをつけるためのものです。どのような状態になったら立ち止まるのかが明確であれば、それまでは迷わず、まっすぐに走り続けられると思います。

 

私自身は、「10年で世界一のおにぎり専門店になる」という目標を掲げています。そこを一つの基準として、目指す未来に向かって挑戦を続けていきます。

 

採用を強化されているそうですね

現在は、ファイナンスやマーケティング、商品開発、人事・労務など、事業の成長を支えるコーポレート機能が十分に整っているとはいえません。そのため今後は、各領域を担う経営メンバーや、現場と経営の両方に関わる人材を迎えていきたいと考えています。

 

当社では、コーポレート業務だけを専任で担当するのではなく、店舗運営や商品開発などの現場と兼任する働き方が多いことが特徴です。今後はCXOなどの専任メンバーも必要になると考えていますが、現時点では自ら手を動かしながら、会社全体の仕組みづくりにも携われる方を求めています。

 

採用において重視しているのは、世界を舞台に挑戦したいという思いを持ち、既存の前提や常識にとらわれずに考えられることです。手段を限定するのではなく、目標を実現するために必要なことへ柔軟に取り組める方と働きたいと考えています。私たちが目指しているのは、食を通じて世界で勝負することです。

 

現在はおにぎりを軸に事業を展開していますが、おにぎりという手段そのものに固執しているわけではありません。「世界で勝つために何が必要か」という視点から、事業や役割を柔軟に捉えられることが重要です。変化の激しい環境を楽しみ、状況に応じて素早く行動しながら、世界を目指して一緒に挑戦してくれる仲間を募集しています。

 

採用サイトはこちら

 

 

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:川原田 美雪 氏

1996年、青森県弘前市生まれ。東京大学工学部卒業後(大学院修了)、LINE株式会社に入社し、広告営業本部にて新人賞を受賞。その後、おにぎり専門店「TARO TOKYO ONIGIRI」を運営するRICE REPUBLIC株式会社の代表に就任し、都内に5店舗を展開。2025年4月、「おにぎりを世界基準のファストカジュアルへ」をビジョンにRice Platformer株式会社を設立。同年9月、おにぎり専門店「ONI&Co. Tokyo Lab.」をオープン。一般社団法人おにぎり協会「おにぎりアンバサダー」に就任。

企業情報

法人名

Rice Platformer株式会社

HP

https://rice-platformer.jp/

設立

2025年4月15日

事業内容

  • おにぎり専門店「ONI&Co.(オニアンドコー)」の運営(1号店:ONI&Co. Tokyo Lab. 東京都渋谷区本町・初台エリア。2025年9月25日オープン)
  • おにぎりを「世界基準のファストカジュアル」として国内外へ展開するためのブランド・店舗開発
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