株式会社キャリアハブ 代表取締役 村上 悠司

株式会社キャリアハブは、インフラ・ネットワークに特化したエンジニアを未経験から育成し、企業へ派遣する育成型SES事業を展開しています。自社開発の学習ツールで一人ひとりの進捗をデータで管理する研修体制、エンジニアが配属後も集える「第二の家」のような場、そして顧客とエンジニアをつなぐ営業力。この三つを自社で併せ持つことが強みです。今回は、創業者である村上悠司氏に、事業を始めた経緯や進み続けるモチベーションについて伺いました。

未経験こそインフラエンジニア。育成と場で人を育てる

どのような事業をされているのですか?

インフラ・ネットワークに特化したエンジニアを育成し、企業へ派遣する育成型のSES事業を行っています。最大の特徴は、研修に力を入れていることです。未経験者には、まずネットワークの基礎資格であるCCNAを約1〜1.5カ月で取得してもらい、その後に現場へ送り出しています。 

 

研修では、独自に開発した学習ツールを活用しています。過去問や試験の出題傾向を分析した問題集をWeb上で提供するだけでなく、「誰がどれだけ問題を解いたか」といった学習データをもとに進捗をデータドリブンで管理します。勉強が得意ではない人でも、決められたカリキュラムを着実に進めれば資格取得を目指せる、いわばライザップのような仕組みです。

 

授業は教員免許を持つ専任講師がマンツーマンで担当し、3時間の講義を6回ほど、約2週間かけて実施します。その後の約3週間は自習期間です。

 

この学習ツールは市販の教材ではなく、すべて自社で開発したものです。誰がどの分野でつまずいているかが講師側にリアルタイムで見えるため、脱落しそうな方に先回りして手を打てる。ここが、動画教材を配って終わりの研修との決定的な違いだと考えています。

 

2026年7月時点で10名弱が学んでいます。2026年5月後半にはオフィスも開設し、研修環境をさらに充実させました。

 

私たちは「未経験者こそインフラエンジニアに」という考えを大切にしています。IT人材不足が深刻化する中で、業界全体として人材の母数を増やすことが不可欠であり、誰かが未経験者を育成して経験者へと成長させる役割を担う必要があります。

 

もちろん、中長期的には経験者採用も進めていきますが、まずは未経験者を育てることを事業の軸に据えています。

 

数ある職種の中でインフラ・ネットワークを選んでいるのにも理由があります。一つは、生成AIの進化によってコードを書く仕事の一部が置き換わりつつある一方で、物理環境の構築や障害対応といった現場作業は人が担い続ける領域だということ。もう一つは、CCNAという明確な入口の資格があり、未経験からでも「何をどこまでやれば通用するか」を設計しやすいことです。

 

もう一つのこだわりは、研修後も毎日気軽に集まれる場を用意していることです。SESという働き方では、派遣先でも派遣元でも一人になりやすく、孤立しがちです。辞めていく理由として「相談できる相手がいなかった」という話は、この業界にいるとよく耳にします。

 

そのため、20代から30代前半の同世代が自然につながれる「第二の家」のようなオフィスを整えました。食事や勉強のために気軽に立ち寄れる場所として活用してもらっています。実際に多くのメンバーが自然と顔を出しており、これが定着につながっていると感じています。

 

当社の強みは、この研修制度とコミュニティづくりに加え、「営業力」にあります。当社が売っているのは、パッケージ製品ではなく人です。だからこそ、お客様とエンジニアをつなぐ橋渡し役として、一人ひとりに寄り添ったきめ細かな営業活動とフォローを徹底しています。

 

当社の営業力の強みは、私自身のこれまでの経験にも支えられています。私自身も10年以上にわたり法人営業に携わってきました。現在は、IT業界特有の多重下請け構造の中で、大手SIer企業の下請け・孫請け企業から案件を受注しています。

 

将来的にはエンドユーザーとの直接取引を増やしていきたいと考えていますが、ベンチャー企業である以上、実績や与信の壁もあります。そのため、まずは着実に実績を積み重ねながら、段階的に取引先を広げていく方針です。その中でも徹底しているのは、案件を「頭数」で埋めないことです。

 

本人が伸ばしたいスキルと現場の要件を突き合わせて提案する。営業を外部に委託せず社内で完結させているからこそ、エンジニア本人の希望を一次情報として持ったまま交渉できます。これは規模が大きくなるほど難しくなることだと考えています。 

 

事業を始めた経緯を教えてください。

もともとは外資系のITメーカーやベンダーで、ソフトウェアやハードウェアの法人営業に携わっていました。その中で強く感じたのは、「テクノロジーそのもの」ではなく、「テクノロジーを使いこなす人」にこそ、多くの企業が課題を抱えているということです。

 

DXやIT活用を根本から推進するには、システムを導入するだけでは不十分で、それを使いこなせる人材を育てることが欠かせません。AIが普及する時代になっても、最終的にAIを使いこなすのは人です。だからこそ、人を育てることにこそ大きな価値があり、人生を懸けて取り組みたいと思うようになりました。

 

一方で、起業自体は以前から考えていました。もともと組織の中で働くよりも、自ら意思決定をしながら挑戦するほうが性格に合っていると感じていたからです。人生で最も多くの時間を費やす仕事だからこそ、自分が本気で価値を信じられる事業に挑戦したい。その思いから、「人を育てる」というテーマで起業することを決意しました。 

 

信頼関係がすべて。凡事徹底とスピードで勝負する

仕事におけるこだわり、譲れない軸はありますか?

仕事で最も大切にしているのは、人と人とのコミュニケーションです。結局のところ、ビジネスは信頼関係に尽きると考えています。

 

私自身は、テイカーではなくギバーでありたいと思っています。まずは自分から相手に価値を提供することを意識し、その積み重ねが信頼につながると信じています。会社を立ち上げたばかりで、実績やブランドといった競争力はまだ十分ではありません。

 

だからこそ、人間力で勝負し、「この人と仕事がしたい」と思ってもらえる存在であることを何より大切にしています。

 

信頼を築くために意識しているのは、相手が求めていることを先回りして提供すること、接点を増やして関係性を深めることです。

 

特別なことではありませんが、当たり前のことを当たり前にやり続けることが、最終的には大きな差になると考えています。サッカー日本代表の森保監督がよく口にする「凡事徹底」という言葉には、強く共感しています。 

 

組織づくりにおいても、大切にしている考えがあります。それは、スタートアップの最大の強みは「スピード」だということです。大企業や長い歴史を持つ企業と同じ土俵で競争するのではなく、意思決定の速さで勝負したいと考えています。そのため、悩みを抱え込まずにすぐ相談できることや、その場で意思決定できることを重視し、フラットで話しやすい組織づくりを心掛けています。 

 

起業から今までで最大の壁は何でしたか?

現在の最大の課題は、起業したばかりだからこそ、経営に必要なあらゆることを同時並行で進めなければならないことです。

 

育成型のSES事業は、一定の育成期間を経て現場へ配属され、そこで初めて売上が発生するビジネスモデルです。そのため、育成に時間をかける一方で、事業を継続的に成長させるためには、常に新しい案件を獲得し、キャッシュフローを維持していく必要があります。立ち上げ期だからこそ、スピード感を持って売上をつくることが重要だと考えています。

 

加えて、市場環境も大きく変化しています。AIによる自動化が進み、これまで未経験者でも担いやすかった業務の一部は、今後ますます求められるスキルが高度化していくでしょう。そうした逆風の中でも、未経験者を育成し、企業から選ばれる人材として送り出していく仕組みを磨き続けなければなりません。

 

だからこそ当社は、CCNA取得をゴールにせず、その先のクラウドやセキュリティへ進める学習環境を用意しています。AIが進化しても、物理環境の構築や運用の現場で実際に手を動かせる人材の価値は落ちない。むしろ今から始める価値がある領域だと考えています。

 

営業、採用・育成、資金調達、組織づくりなど、経営者として向き合うべきテーマは数多くあります。どれか一つに集中できるわけではなく、すべてを同時に前へ進めなければならない。その意味では、時間がいくらあっても足りないというのが、今の率直な実感です。

 

世の中の8割の人に、できる喜びを届けたい

進み続けるモチベーションはどこにありますか?

短期的なモチベーションになっているのは、目標を数字で追いかけることです。採用人数や2〜3年後の会社規模をKPIとして設定し、そこから必要な案件数や1日の行動量まで細かく落とし込んでいます。やるべきことを可視化することで、一歩ずつ着実に目標へ近づいていけると考えています。 

 

その根底にあるミッションは、「できなかったことを、できるに変える」ことです。実は私自身、新卒で社会人になった頃は決して優秀な人間ではありませんでした。そんな私に真剣に向き合ってくれたのが、新卒で入社した会社の女性上司です。仕事に対する考え方から営業の細かなノウハウまで、一つひとつ丁寧に教えていただきました。その経験を通じて、「仕事は面白い」と思えるようになり、自ら考え、行動できるようになったのです。 

 

世の中には当時の私のように、まだ自分の可能性に気づいていない人がたくさんいると感じています。そうした人たちに気づきや成長のきっかけを与え、「できなかったこと」を「できる」に変えることで、人生をより豊かにしてほしい。そのために、今度は私自身が、かつての女性上司のような存在になりたいと考えています。

 

今後の展望や野望を聞かせてください。

まずは、何よりも事業を軌道に乗せることが目標です。現在は自分の全資産を事業に投入しており、「後がない」という覚悟で日々経営に向き合っています。 

 

その先に見据えているのは、単にエンジニアを派遣する会社ではなく、高い技術力を持つエンジニア集団を育てる会社になることです。未経験からスタートしたメンバーが経験を積み、将来的にはプロジェクトマネージャーやネットワークの設計・構築、さらにはクラウドやセキュリティといった専門性の高い領域で活躍できるようなキャリアを築いてほしいと思っています。

 

そのためにも、研修だけで終わらせるのではなく、実務経験を積みながら継続的に学び、成長できる環境を整えていきたいと考えています。一人ひとりが市場価値の高いエンジニアへと成長し、その結果として会社全体の技術力や競争力も高まっていく。そんな好循環を生み出したいと思っています。

 

5〜10年という時間をかけて、メンバーとともに技術力のある会社をつくり上げていくことが、私の目指す未来です。

 

最後は自分で決める。挑戦して失敗しても死なない

起業しようとしている方へメッセージをお願いします。

人の意見に耳を傾けることは大切ですが、最後に意思決定をするのは自分自身です。周囲のアドバイスを参考にしながらも、自分で決断し、その結果に責任を持つことが何より重要だと思っています。

 

もし「自分はこんな人生を歩みたい」「こんな社会をつくりたい」という思いがあるのであれば、ぜひ一歩踏み出して挑戦してほしいです。挑戦には失敗がつきものですが、やってみてうまくいかなかったとしても、それで人生が終わるわけではありませんし、法に触れるようなことでなければ、何度でもやり直すことができます。

 

だからこそ、失敗を恐れて立ち止まるのではなく、まずは行動してみることが大切です。その挑戦や失敗の積み重ねが、自分自身を成長させ、次のチャンスにつながっていくのだと思います。

 

採用や組織について、伝えたいことはありますか?

現在、未経験からインフラエンジニアを目指したい方を募集しています。

 

20代を中心に、ITに少しでも興味がある方や、「このままの働き方でいいのだろうか」と将来に不安を感じている方に、ぜひ一度お話を聞きに来ていただきたいです。

 

たとえば飲食業など、異業種で働いている方でもまったく問題ありません。経験の有無ではなく、「挑戦したい」という気持ちを大切にしています。

 

育成体制については、教員免許を持つ専任講師が在籍しており、マンツーマンで成長をサポートできる環境を整えています。私たちの強みは、未経験者を責任を持って育成し、その後のキャリアまで見据えて企業へ送り出していることです。

 

資格取得だけをゴールにするのではなく、現場で活躍し、長く働き続けられる人材へと育てることを大切にしています。スピード感ときめ細かなサポートの両立で、一人ひとりの挑戦を支えていきます。

 

キャリアパスについても、入口だけでなくその先まで示すようにしています。まずは運用・監視からスタートし、1〜2年で構築・設計へ、その先はクラウドやセキュリティ、あるいはプロジェクトマネージャーへ。当社では、そのステップごとに必要な資格と実務を対応させて可視化しています。「とりあえず現場に入れて、あとは本人次第」にはしません。

 

また、ITインフラやネットワーク領域に関わる企業の皆さまにも、ぜひ私たちのことを知っていただきたいと考えています。私たちは、未経験者の育成を通じてIT人材不足という社会課題の解決に本気で取り組んでいます。同業他社を含め、多くの企業の皆さまに「安心して任せられるパートナー」だと感じていただけるよう、誠実に実績と信頼を積み重ねていきたいと思っています。

 

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:村上 悠司 氏

関西学院大学商学部卒業。在学中はアメリカンフットボール部に所属し、ルールも知らない状態から始め、最終的に日本一を経験。卒業後、大手商社を経て外資系IT企業4社にて法人営業に従事。インフラ・SaaS・CRM等の幅広い領域で大手SIer・通信キャリア・エンタープライズ企業を担当し、トップパフォーマーとして10年間実績を重ねる。直近はスタートアップにて営業責任者を務めた後、2026年5月に株式会社キャリアハブを設立。

企業情報

法人名

株式会社キャリアハブ

HP

https://careerhub.co.jp/

設立

2026年5月

事業内容

  • 育成型SES事業(インフラエンジニアの育成・派遣)

 

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