
株式会社トリファは、海外旅行者向けeSIMアプリ「トリファ」の開発・運営を行う企業です。使いやすいUI/UXや24時間365日の有人サポート、海外キャリアから直接仕入れる通信品質など、価格の安さに頼らない総合的な安心感によって、海外eSIMアプリダウンロード数No.1へ成長したことが強みです。今回は、代表取締役CEOである嘉名雅俊氏に、組織づくり・採用へのこだわりや、今後の展望について伺いました。
当社は、海外旅行者向けのeSIMアプリ「トリファ」を展開しています。スマートフォンにアプリをダウンロードするだけで、世界各国のeSIMを購入・利用・管理できるサービスです。
従来のレンタルWi-FiやポケットWi-Fiとは異なり、海外での通信手配をアプリ一つで完結できる点が特徴です。
市場全体を見渡すと、いまだレンタルWi-Fiをスタンダードだと感じている層も一定数いらっしゃいますが、ここ1〜2年でeSIMの認知度、そしてトリファの利用者数は着実に伸びています。
現在、ユーザーの9割は海外へ渡航する日本人ですが、台湾でも事業を展開しており、台湾人旅行者の利用が広がっています。更に訪日旅行での利用は、結果的にインバウンド需要の取り込みにもつながっています。
当社の強みは、単純な価格の安さではありません。使いやすさを追求したUI・UX、24時間365日の有人サポート、海外の通信キャリアから直接仕入れることによる通信品質など、サービス全体の安心感を評価いただいています。その結果、国内で最も利用されるeSIMサービスというポジションを築くことができたと捉えています。
直近では、eSIMの購入とあわせて、ESTA申請の入国手続きをサポートする機能もリリースしました。航空券やホテルの予約と比べると、入国に必要な申請や書類手続きの領域は、まだ十分に整備されていません。旅行者の負担を軽減できる余地は大きく、今後も旅行にまつわる不便や課題を一つずつ解消していく方針です。
私たちが掲げているプロダクトビジョンは、「トリップインフラ」の実現です。パスポートとトリファさえあれば、誰もが世界中を自由に旅行できる状態を目指しています。
そのため、eSIMだけを提供するサービスに留まるつもりはありません。将来的には旅行周辺の領域にもサービスを広げ、旅行に必要な体験を一つに統合していきたいと考えています。
こうした大きなビジョンを実現するため、組織づくりにも独自の工夫を取り入れています。意図的に少数精鋭の組織を目指してきたわけではありませんが、必要な人材を必要なタイミングで採用してきた結果、大規模な採用を行わずにサービスを成長させることができています。
採用においては、まず各部署を牽引できるリーダー人材を迎え、その後にリーダーを中心としてチームを形成していく方針です。特に、エンジニア組織には当社ならではの特徴があります。私自身、前職でエンジニアを経験しており、トリファの初期アプリも自ら開発しました。
当社では、ビジネスサイドが決めた仕様をエンジニアがそのまま実装するという進め方はしていません。エンジニア自身がビジネスへの理解を深め、要件定義から開発、リリース、リリース後の数値分析までを一気通貫で担う文化を大切にしています。
また、エンジニアリングの現場では、AIによる開発支援を積極的に活用しています。ビジネスサイドのメンバーも、ノーコードやローコードのツールを使い、自分たちの業務に必要なワークフローを自ら構築しています。
会社全体として、AIドリブンな業務効率化を強く意識しています。私自身も日常的に小さなワークフローを自作するなど、まずは経営陣が実践し、その姿を社内に示し続けることを大切にしています。

当社は2020年に創業し、2021年にサービスをリリースしました。もともとeSIM事業を立ち上げようと考えていたわけではなく、出発点にあったのは、旅行領域でスタートアップをつくりたいという思いです。
海外旅行が完全に停止していたコロナ禍の時期に事業アイデアを探していたところ、スマートフォンへのeSIM搭載が2019年から2020年にかけて進んでいたタイミングと合致し、コロナ収束後に使われるサービスとしてeSIMアプリ「トリファ」を着想しました。当時、日本国内ではほぼ競合がいない先駆けだったと思います。
起業の原点には、大学時代に約1年間、ベトナムで暮らしながら働いた経験があります。 当時のベトナムでは、Grabのようなインターネットサービスが数年で生活インフラ化し、スタートアップが社会を変えていく様子を目の当たりにしました。少人数・小さな資本からでも社会を変えられる。その可能性を肌で感じたことが、起業を志す原体験になっています。
同時に、「日本人として生まれたのだから、日本のためになることをしたい」という思いがずっとありました。「失われた30年」と呼ばれる停滞に、単一の解決策があるとは思っていません。ただ、悲観するだけでは何も変わらないので、自分たちがリスクを取って挑戦することが誠実な向き合い方だと考えています。日本発でグローバルに進出する企業が増えることが、日本全体の活力につながると信じています。
当社には「Go Fast」「Beyond Comfort」「Focus Centerpin」という三つのバリューがあります。私自身が大切にしている価値観を、組織全体の共通言語として掲げたものです。
なかでも意思決定の軸になっているのが「Focus Centerpin」です。スタートアップの時間・お金・人といった限られたリソースを、事業インパクトに直結するセンターピンに集中投下する。この判断を、経営陣だけでなく従業員全体が意識する文化を大切にしています。
組織づくりや採用においても、このセンターピン思考は徹底しています。採用基準はスキルだけでなく、人柄や「トリファらしさ」を重視しています。結果として、社内コミュニケーションにおいてやりづらさを感じる人がほぼいない組織になっており、これが組織拡大時のマネジメントのしやすさにつながっていると感じています。
選考では対話を重視し、場合によっては3〜4回の面談や会食を重ねることもあります。まずカジュアル面談でトリファについて丁寧に説明し、候補者の方と相互にすり合わせながら選考を進めるスタイルをとっています。
一方、「Go Fast」を体現しているのがマーケティングです。ウェブ検索で上位を独占するようなデジタル広告をはじめ、テレビCMやインフルエンサータイアップなど幅広く展開していますが、一部の媒体買付などを除き、メディアプランニングや運用はほぼすべて社内で内製化しています。代理店任せにせずインハウスで行うことで、チャネルをまたいだ知見や学びをチーム全体で共有し、改善スピードを圧倒的に高められる点が私たちの強みです。
大きな壁という感覚はあまりないのですが、振り返って大変だったのは、創業直後、最初の正社員が入社するまで一人で事業を回していた時期です。
心理的な迷走や孤独感が、いちばんこたえた時期だったと思います。2022年に最初の資金調達をしてからは、数値も着実に伸びて成果が目に見えるようになり、それが大きな自信に繋がっています。

目指しているトリップインフラの実現に対して、私たちはまだスタートラインに立てたかどうかも分からない段階です。ですから、モチベーションの上下に左右されるのではなく、目標に向けてやるべきことを着実に積み重ねるスタンスを大切にしています。
一方で、社員のモチベーション管理においては、「なぜトリファで働くのか」という軸を本人の中でしっかりと理解してもらうことを重視しています。仕事は人生の大部分を占めるものなので、面談や1on1の場で、長期的なキャリアの方向性を改めて話し合う機会を設けています。
今のトリファは、ファーストキャリアとしてだけでなく、複数社を経験してきたミドル〜シニア層が、これまでの経験の集大成として選んでくれるケースが増えてきました。それぞれが培ってきた知見や経験値と、トリファの強みや文化をうまく掛け合わせながら、日本国内での拡大や世界への挑戦という重要な局面を、一丸となって走り抜けていきたいと考えています。
すでにダウンロード数200万件を突破していますが、まだまだ通過点と捉えており、「日本で一番使われる旅行サービス」の一つになることを目指しています。
そのうえで、今後注力していく領域は二つです。一つは海外旅行の周辺領域を立ち上げ、統合的な旅行体験へと事業を拡張していくこと。もう一つは海外展開、特に東アジアの強化です。
海外市場は、トリファより一回りも二回りも規模の大きいスタートアップが複数存在する競争環境にあります。そのなかで台湾事業は徐々に目処が立ってきており、ここを足がかりに東アジア圏での勝機をつかみたいと考えています。
事業には必ず「潜る時期」、つまり停滞や下積みの時期があります。そこを乗り越えて続けられるかどうかは、そのドメインへの思い入れの強さと、その先にある未来の世界線を自分なりに具体的にイメージできるかにかかっていると思います。
人生をかけて取り組めるドメインに出会うことが、何よりも大切です。私自身も、旅行というドメインへの強い思い入れが、起業の原動力になっています。
将来的な目標を達成するうえで、今もっとも力を入れたいのが人材の獲得です。「トリファらしい人」を言葉にすると、熱意を持ちながらも数値に基づいた意思決定ができる、バランス感を備えた人です。同時に、前に進む判断力も併せ持っていてほしいと思っています。
職種ごとに一定のスキル水準は求めますが、それ以上に大事にしているのは、自分の専門領域が全社的にどのようなレバレッジを持つか、ユーザー体験や価値にどうつながるかにアンテナを張れる姿勢です。これは、エンジニアがビジネス理解を持つという当社の組織文化と地続きの考え方です。
現在の社員の平均年齢は30代前半ですが、直近では30代後半から40代の入社も増えています。他社での経験を積んだ方が、その集大成としてトリファを選んでくれるミドル〜シニア層の入社も、これから積極的に歓迎していきたいと考えています。
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1995年石川県小松市生まれ。学生時代にベトナムへ渡航し、Sun*(旧Framgia)にてエンジニアインターンを経験。帰国後、株式会社Zealsにエンジニアインターンとして参画し、2019年新卒入社。PM・海外開発拠点責任者を歴任。2020年に株式会社トリファ(旧:株式会社ERAKE)を創業。2021年にeSIMアプリ「トリファ」をリリース。2024年10月にANAホールディングス・グローバル・ブレイン等から総額12億円の資金調達を実施。2025年「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」選出。2026年6月に総額約50億円の資金調達を実施。
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法人名 |
株式会社トリファ |
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HP |
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設立 |
2020年11月17日 |
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事業内容 |
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