株式会社エグゼマッチ 代表取締役 猪谷 進介氏

株式会社エグゼマッチは、経営者や個人事業主が参加するビジネスオンラインコミュニティの運営と、SEO対策を中心としたWebマーケティング支援をしています。会員同士が掲示板で紹介を依頼できるほか、課題解決の会議や専門家による勉強会まで用意し、つながるだけで終わらせない設計にしているのが特徴です。今回は、代表取締役である猪谷 進介氏に、事業を始めた経緯や業務委託メンバーの定着に苦戦した経験について伺いました。

つながるだけで終わらせない、経営者向けオンラインコミュニティ

事業の内容をお聞かせください

当社は、Webマーケティング支援とビジネスオンラインコミュニティの運営を行っています。

 

Webマーケティング事業では、Webサイト制作をはじめ、SEO対策、SNS運用代行、広告運用、MEO対策など、Web集客に関する施策を一貫して支援しています。中でも特に強みとしているのがSEO対策です。

 

SEOはGoogleのアルゴリズムが頻繁に変化するため、継続的な検証が欠かせません。当社では自社メディアを活用してさまざまな施策を試し、実際に上位表示につながった方法をその時点で有効な施策としてお客様への支援にも活かしています。

 

もう1つが、ビジネスオンラインコミュニティの運営です。現在はコンセプトの異なる3つのコミュニティを運営しており、合計で約250名の方に参加いただいています。

 

主な参加者は、法人の代表者や役員、個人事業主など、経営や事業に携わる方です。特に法人では、年商1億円前後の、これからさらに事業を成長させていきたい中小・小規模企業の経営者が中心です。

 

業種では無形商材を扱うBtoB企業が多く、東京を中心に、大阪、福岡、名古屋のほか、北海道から沖縄、海外から参加されている方もいます。

 

私たちが目指しているのは、単に人と人がつながるだけのコミュニティではありません。参加者同士が互いの経験や知見を持ち寄り、学びや経営課題の解決につなげられる環境づくりを大切にしています。

 

コミュニティ内では、参加者のプロフィールを検索して気になる方へ直接連絡できるほか、自社サービスの発信や、「こうした業界の経営者とつながりたい」といった呼びかけもできます。そこから信頼関係が生まれ、顧客を紹介し合ったり、お互いの強みを活かして協業につながったりするケースもあります。

 

交流だけでなく、参加者同士で経営課題を共有し、意見を出し合う機会も設けています。自分自身の課題だけでなく、コミュニティで知り合った方の課題についても一緒に考えることで、新たな視点や気づきを得られる場にしています。

 

必ずしもその場で答えを出すことが目的ではありません。何か一つでもヒントを得ることや、自分のことを真剣に考えてくれる人がいると感じてもらうことが、参加者同士の信頼関係につながると考えています。

 

より具体的な経営課題については、運営側との壁打ちも行っています。

 

私自身が金融機関でさまざまな経営者と向き合ってきた経験を活かし、必要に応じてコミュニティ内でその分野に詳しい方や役員にも加わってもらいながら、複数の視点から課題を整理します。希望があれば、話し合いだけで終わらず、施策を実行した後の結果まで継続して伴走しています。

 

また日々の学びという面では、営業、財務、税務、法務、AIなど、それぞれの分野に強みを持つ参加者による勉強会を開催しています。内容はアーカイブとして残しているため、参加できなかった方も後から学ぶことができます。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

もともと私は信用金庫で働いていましたが、仕事をする中で、やりたいことができないもどかしさを感じていました。

 

例えば、キャッシュフローに困り、本当に融資を必要としている企業ほど、財務状況を理由に稟議が通らないことがあります。

 

一方で、金融機関にはノルマがあるため、資金を必要としていない経営者のもとへ「とりあえず借りてください」とお願いに行くこともありました。そうした状況に本質的ではないものを感じ、金融業界を離れることを決めました。

 

次に選んだのが、Webマーケティングの世界です。もともと数字を見ることが好きだったことに加え、これからの時代はWebの知識をきちんと持っておかなければいけないと感じていたことがきっかけでした。

 

まずSEOの領域から入り、約1年間集中的に学んだ後、フリーランスとして独立しました。

 

ただ、独立した当初は、何をすればいいのかも分からず、人脈も相談相手もいませんでした。かなり勢いで独立したこともあり、手探りで進むしかなく、最初の1年は相当な遠回りをしたと思います。

 

状況が変わったのは、さまざまな方とつながるようになってからです。ある経営者の方から「SEOに興味がある人がいる」と紹介していただき、そこから仕事につながっていきました。この経験を通じて、横のつながりの大切さを強く実感しました。

 

どれだけAIが発展しても、AIが勝手に仕事を持ってきてくれるわけではありません。これからも人と人との関係は必要だと考えています。だからこそ、まずは人がつながれる場所をつくりたいと思い、コミュニティ事業を始めました。

 

もちろん、思いつきだけで形にしたわけではありません。事業として本格的に取り組むと決めてからは、競合調査も兼ねてさまざまなコミュニティに実際に参加しました。その中で、「ここは良い」「ここは自分には合わない」と感じた要素を取捨選択しながら、現在の基盤をつくっていきました。

 

その後も、自分自身が経営する中で困った経験を振り返り、「当時こういうサービスがあれば助かった」と思えるものを少しずつ追加しています。

見返りを求めず、まず先に与える

仕事におけるこだわりを教えてください

私が大切にしているのは、まず自分から与える姿勢です。どんなに小さなことでも、相手にとってプラスになると思えば、まずは行動するようにしています。

 

ギブアンドテイクという言葉は少し古いかもしれませんが、本質は変わらないと思っています。こちらから先に何かを差し出せば、その中の何割かの方は自然と返してくださいます。

 

ただ、最初から見返りを期待しすぎないことも大切です。半数以上は返ってこないくらいの気持ちでいるようにしています。見返りを求めすぎると、本来の目的からずれてしまいますし、自分自身のストレスにもなってしまうからです。

 

相手にとってプラスになりそうなことがあれば、まずやってみる。そのうえで、返してくださった方との関係を大切にしていく。そうした積み重ねが、また次のつながりにつながっていくと考えています。

 

この考え方の原点には、独立して間もない頃の経験があります。当時、仕事を紹介してくださった経営者の方に対して、私は何もお返しできるものがありませんでした。

 

食事の席で「何もできなくてすみません」と伝えたところ、その方から「見返りを求めてやっているわけではない」と言っていただきました。その姿を心から格好良いと感じ、自分もいつか同じように、見返りを求めず誰かに与えられる側になりたいと思いました。

 

その経験が、今の私の仕事や人との関わり方におけるこだわりにつながっています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、一緒に働く方々の定着でした。

 

個人事業主だった時代、Webマーケティングの業務は一人では回らないため、ディレクターやライターの方にお願いする必要がありました。ところがなかなか長続きせず、報酬の高い依頼先があればそちらへ移ってしまうという状態が2年ほど続きました。

 

当初は報酬単価を上げることで解決しようとしましたが、それでも離れていく方もいました。そこでようやくお金の問題ではなく、日頃のコミュニケーションが必要だったことに気が付きました。

 

基本的にはオンラインでのやり取りですが、オンラインだから関係を築けないとは思っていません。Zoomで15分ほど時間を取り、「今日は仕事の話は一切なしで」と伝えて、近況などを気軽に話す機会をつくるようにしました。特に関係を築き始めた頃は、短い間隔で何度も話すことを意識していました。

 

すると、4回、5回と話すうちに、少しずつ本音を聞けるようになっていきます。この経験から、人は何度か接点を重ねて初めて本音を話してくれるのだと実感し、それ以降は意識して接触回数を増やすようになりました。

 

その結果、報酬単価に関係なく4年ほど一緒に仕事を続けている方が何人もおり、現在はコミュニティ運営も支えてくれています。

 

関係ができた後は以前ほど頻繁に話す必要はありませんが、最初の段階でしっかり接点を重ねることが、長く一緒に働くうえで何より大切だと考えています。

新しい出会いと、会員同士がつながる瞬間

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

今、一番のモチベーションになっているのは、新しい出会いそのものです。世の中には本当にさまざまな人がいるのだと感じますし、その違いに触れることを純粋に面白いと思っています。

 

例えば、「なぜこの人はいつもこんなに元気なのだろう」と、その秘訣を知りたくなることもあります。そうした出会いを重ねるたびに、自分の知らない世界がまだまだあると感じられることが、そのまま原動力になっています。

 

また、会員同士が自然につながっていく姿を見ることも大きな励みです。「あの方と一緒にセミナーを開くことになりました」と報告を受けて、そこで初めて2人がつながっていたことを知ることもあります。そうした新しい関係や取り組みが生まれているのを見ると、コミュニティをやっていて良かったと感じます。

 

仕事そのものを楽しめていることも大きいと思います。例えば、コミュニティのシステムを見ていて「この画面をこうした方が使いやすい」と思いつくと、エンジニアがいるにもかかわらず、自分で触ってみたくなります。

 

開発経験はまったくありませんが、AIツールに相談しながら試行錯誤していると、気づけば夜中の2時になっていることもあります。それくらい、今は仕事自体を楽しみながら取り組めています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

直近では、コミュニティ内に士業チームをつくり、経営者が気軽に相談できる仕組みをつくりたいと考えています。

 

これまでの勉強会などによって、まず人とつながり、課題を共有し、その解決に必要なことを学ぶという段階までは少しずつ形になってきました。次は実際の悩みを相談できる場をつくりたいと思っています。

 

経営をしていると、大小さまざまなトラブルが起こります。中でも難しいのが、数万円から数十万円程度の未払いです。弁護士に依頼すると、回収額と着手金がほとんど変わらず、結果的に諦めてしまうケースがあります。

 

私自身も最近、20万円ほどの未回収がありましたが、弁護士費用を考えて回収を断念しました。金額の大小にかかわらず、こうした問題を抱えたままにしておくことは、経営者にとって大きなストレスになります。

 

そもそも当社の会員様に多い年商1億円規模では、顧問弁護士を置いている方はほとんどいません。着手金の20万円台は、人ひとり分の給料に相当します。回収できるかも分からない以上、後回しになり、トラブルが起きてから慌てることになります。

 

だからこそ、この課題に共感してくださる弁護士の方と連携し、少額のトラブルでも相談しやすい仕組みをつくりたいです。例えば、内容証明の送付など比較的シンプルな対応を成功報酬型で提供できれば、これまで泣き寝入りしていたようなケースにも対応できる可能性があります。

 

その先では、1社ごとの経営に、より深く入り込んだ支援もしていきたいです。

 

私は信用金庫にいた経験から、財務分析を得意としています。決算書を見ながら無駄なコストを減らし、その分を人材や設備、Webマーケティングなどの成長投資に回す。

 

必要であれば、融資を活用した資金調達まで含めて考える。そうした支援ができれば、企業の成長にもっと深く関われると思っています。

 

ただ、決算書を見せていただくには、それだけの信頼関係が必要です。まずはコミュニティで関係を築き、将来的には経営の深い部分まで相談していただける存在になりたいと考えています。

 

さらに、今後はオンラインだけでなく、オフラインで交流できる機会も増やしていく予定です。オンラインだからこそ生まれる距離の制約を超えたつながりと、リアルだからこそ築ける関係性の両方を生かしながら、参加する経営者の事業成長につながる環境をつくっていきたいと考えています。

行動量の積み重ねが、30代で質に変わる

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

起業を目指している方には、まず行動量をとにかく意識してほしいとお伝えしたいです。ただし、そのベクトルを間違えないことが前提になります。漫然と人に会うのではなく、経営者に数多く会いに行くことで良質なインプットが自然と手に入ります。

 

若いうちほど行動できる量は多いはずです。そして、その積み重ねが30代になったときに質へと変わっていきます。逆に言えば、行動量がないまま質に転じることはないと思っています。

 

ですから、失敗を過度に恐れる必要はありません。挽回できない失敗はそうそうなく、ほとんどは取り返しがつくものです。臆せず、たくさん行動していただければと思います。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:猪谷 進介 氏

大学卒業後、信用金庫に入庫。30歳でWebマーケティング会社へ転職し、SEOを中心に1年間実務を学ぶ。31歳でWebマーケティングの領域で独立し、36歳で株式会社エグゼマッチを設立。現在は経営者向けビジネスオンラインコミュニティの運営、営業顧問、Webマーケティング支援を手がける。

企業情報

法人名

株式会社エグゼマッチ

HP

https://exem.co.jp/

設立

2025年7月

事業内容

  • コミュニティ運営事業
  • 営業顧問事業
  • webマーケティング事業

 

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