
株式会社Sirbeは、中小企業の経営者が事業承継を検討する際に、複数のM&A仲介会社や専門家と匿名で出会い、比較・相談できるマッチングプラットフォーム「MAny」を運営しています。特定の仲介業者に肩入れせず、登録している20社以上の専門家から匿名のまま一括で意見や手数料を集められる中立性が強みです。今回は、代表取締役である杉澤侑樹氏に、業界の課題に気づいた起業の経緯や、クラウドファンディング・学生団体との連携について伺いました。
当社は、中小企業の経営者が事業承継を検討する際に、M&A仲介会社などの専門家とつながり、複数の提案や条件を比較・検討できるプラットフォーム「MAny」を運営しています。経営者と専門家をつなぐ、いわば「仲介の仲介」に近い立ち位置です。
現在、事業承継やM&Aを検討する経営者の多くは、普段から付き合いのある銀行や税理士、会計士などに相談し、そこから紹介された仲介会社と進めるケースが一般的です。
ただ、国内には多くの仲介会社や専門家が存在するため、自社に合った専門家がどこなのか、誰と進めれば信頼できる支援を受けられるのか分からないという課題があります。
また、手数料も大きな悩みの一つです。紹介された仲介会社から高額な手数料を提示され、本当にその金額を支払わなければ事業承継ができないのか、ほかの選択肢はないのかを知りたいという経営者もいます。MAnyでは、そうした方がセカンドオピニオンとして複数の専門家の意見を聞ける仕組みをつくっています。
登録時には会社名や売上、従業員数、業種、地域などを入力していただきますが、それらの情報がそのまま相手に開示されるわけではありません。
例えば、東京都で売上2億5,000万円の建設会社であれば、東京都・建設業・売上1億〜3億円といった形で情報をぼかし、会社を特定されない状態で相談できるようにしています。
事業承継では、会社を売る、継ぐといった情報が外部に漏れることで、取引先や従業員にさまざまな憶測を与えてしまう可能性があります。そのため、匿名性を保ったまま相談できることは、サービスを設計するうえで特に重視している点です。
また、自社ではM&Aの仲介業務を行わないと決めています。現在は20社を超える仲介会社が参加しており、相談内容を登録すると、匿名のまま複数社から提案を受けることができます。1社ずつ問い合わせる必要がないため、比較にかかる時間を減らせることも特徴です。
買い手企業も利用でき、希望する地域や業種、売上規模などを登録すると、その条件に近い案件を持つ仲介会社から提案を受けられます。これまでどの仲介会社が希望に合う案件を持っているのか分からなかった部分を可視化し、希望する案件に出会える可能性を高めています。

大きなきっかけは、前職でM&A仲介の仕事に携わる中で、業界の課題を感じたことです。起業前は、M&A仲介会社に約5年間、コンサルタントとして勤務していました。
M&A仲介業界は参入する会社が増え、競争が激しくなっています。ノウハウや経験、実績を持つ会社がある一方で、十分な実力を持たないまま参入する会社もあり、不誠実な仲介業者の存在が問題として取り上げられることも増えていました。
私自身、お客様と向き合う中で、本当に自社が最適なのか分からないと感じることがありました。中小企業の経営者にとって大切なのは、手数料の高い・安いだけで判断するのではなく、正しい物差しの上で、自社に合った方法を選び、納得できる形で事業承継を進めることだと考えています。
また、専任契約を結んだ仲介会社が相手を見つけられず、契約期間中はほかの会社にも依頼できない状況になることがあります。こうした状況が続き、経営者の間でM&Aへの不信感が広がってしまえば、本末転倒です。
そこで、適切で誠実な仲介業者を絞り込んでいく役割を誰かが担う必要があると考えました。自ら仲介を行うのではなく、仲介会社と中小企業の橋渡しをする立場で取り組もうと考えたことが、現在の事業を始めた大きな理由です。
仕事をするうえで大切にしているのは、「中小企業の経営者のために」という視点をぶらさないことです。もともと経営者の方々を主語にして始めたサービスなので、経営者にとってどうすればより良くなるのかという視点は、どこまでいっても変えてはいけないと考えています。
もし仲介会社にとって都合の良いサービスに偏ってしまえば、経営者が混乱し、結果として最善の選択ができなくなる可能性があります。だからこそ、常に経営者にとって何が良いのかを基準にサービスを設計しています。
また、MAnyはM&Aそのものを勧めるサービスではありません。親族への承継や従業員への承継、他社と組む方法なども含めて、自社に合った選択肢を考えていただくことを大切にしています。
さらに、経営者自身が知識を持ち、自分なりの判断軸をつくることも欠かせないと考えています。1社だけから話を聞いていると、その会社の意見がすべてになってしまいます。複数の専門家から意見を聞き、比較しながら判断できる状態をつくることが、トラブルを避けることにもつながります。
そのためMAnyでは、何を聞けばよいのか分からない方でも、手数料や具体的な進め方など、確認しておきたい内容をテンプレートから選べる仕組みを用意しています。経営者が必要な情報を得ながら、自分自身で納得できる選択をしていける環境づくりを目指しています。

最大の壁は、MAnyのようなサービスがまだ業界にほとんどなく、認知されていなかったことです。
これまでの事業承継では、銀行から紹介された専門家と進めたり、ダイレクトメールや電話をきっかけに最初に接点を持った仲介会社と進めたりする方法が主流でした。
MAnyは、そうした従来の進め方に対して、それで本当に良いのかと問いかけるサービスです。そのため、まずはサービス自体を知っていただくことに苦労しました。
立ち上げ当初は、紹介を中心に利用者を増やしていきました。私は大分県の商工会で事業承継相談員の専門家登録を受けていたため、事業承継に悩む経営者の方をご紹介いただくこともありました。また、そうした経営者と接点を持つ方々にもサービスを説明し、身近に困っている方がいれば紹介していただく形で、少しずつ利用者を増やしていきました。
当時、中小企業の経営者と直接話しながら営業活動をしていたのは、実質的に私一人でした。そのため、一件ずつテレアポを重ねるのではなく、紹介や何かのきっかけで出会った方にサービスについてお話しする形で進めていました。現在は、紹介以外からご相談いただく機会も少しずつ増えています。
モチベーションになっているのは、このサービスを通じて、後継者不在や事業承継に関する社会課題を少しでも解決していきたいという思いです。
国内には330万社を超える中小企業があり、そのうち170万社以上が後継者不在とも言われています。事業承継に悩む経営者の課題は、これからもしばらく続いていくと考えています。
MAnyが広く認知され、経営者自身が事業承継について詳しくなり、自社に適した承継方法を選べるようになると、企業の成長や雇用の継続にもつながっていくと考えています。人口減少や経済規模の縮小が進む中で、このサービスが少しでもその流れに歯止めをかけ、社会課題の解決につながればと思っています。
実際に、後継者が見つからず会社を閉じることを考えていた経営者の方が、MAnyを通じてさまざまな話を聞く中で、誰かに会社を継いでもらう方がメリットが大きいことを初めて知り、今後の経営について整理できたと話してくださったことがあります。
もしこのサービスによって、会社を次の世代へつなげる可能性を少しでも高められたのであれば、やっていてよかったと感じます。そうした会社を一つでも増やしていきたいという思いが、日々事業に向き合う原動力になっています。
今後は、事業承継という切り口を起点にしながら、中小企業の経営者をより幅広く支援できるサービスをつくっていきたいと考えています。経営者が抱える悩みは承継だけではなく、さまざまなタイミングで生まれるため、MAnyにつながる形で、そうした課題にも対応できるサービスを広げていきたいです。
また、事業承継は会社を続けていく以上、いつかは向き合うことになるものです。だからこそ、必要になってから初めて使うのではなく、もっと早い段階から使っていただけるサービスを目指しています。
その一つとして取り組んでいるのが、クラウドファンディングとの連携です。M&Aや従業員への承継後に新商品や新事業へ挑戦する際、クラウドファンディングを活用することで、資金を集めながら市場の反応を確かめたり、応援してくれる方を増やしたりすることができます。
そうした仕組みを通じて、承継後の新たなチャレンジのハードルを下げていきたいと考えています。
事業承継をネガティブなものではなく、次のチャレンジに向かうポジティブなものにしていきたいです。将来的には、承継とクラウドファンディングが自然につながるようになれば面白いと思っています。
さらに、若い世代に事業承継を知ってもらう取り組みとして、学生団体との連携も進めています。起業については会社をつくるまでの入口を学ぶ機会がありますが、その後に事業をどう次の世代へつないでいくのかという出口まで考える機会は多くありません。
学生のうちから承継について知ることで、出口まで見据えて事業を考えられるようになれば面白いと思っています。

まずはやってみることが大切だと思っています。
最初にこれをやろうと思った形のまま、すんなり進むことはあまりありません。実際にやってみると、想定していた反応と違ったり、見え方に違和感があったり、ユーザーから思うような共感を得られなかったりと、さまざまな壁や課題が出てきます。
そうした課題に直面するたびに、少しずつブラッシュアップを重ねていけば、徐々に形になっていくと思います。
最初から完成したものをつくらなければならないと考えるのではなく、完成に近づけるまで粘り強く改善を続けていく気持ちがあれば、たくさんチャレンジしてみていいのではないかと思っています。
大学卒業後、株式会社みずほ銀行に入社。2018年に株式会社日本M&Aセンターへ転職し、約5年間にわたり、中小企業の事業承継やM&Aにおける買収・売却支援に携わる。その後、笑5株式会社の専務取締役として、M&A後の経営統合(PMI)や地方創生事業に従事。2023年11月には株式会社Sirbeを設立。現在は、中小企業の経営者とM&A仲介会社をつなぐマッチングプラットフォーム「MAny」を運営し、事業承継を支援している。
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法人名 |
株式会社Sirbe |
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HP |
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設立 |
2023年11月 |
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事業内容 |
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