会社を起業したり、経営を続けたりするために、資金調達を考えている方は多いのではないでしょうか。資金調達が必要になるケースはさまざまで、その調達方法も異なります。
本記事では、資金調達方法を9つ詳しく解説しています。それぞれメリットだけでなく、デメリットもあるため、しっかり理解した上で適切な方法を選択することが大切です。最後に注意点も解説しているので、資金調達を検討している方はぜひ参考にしてください。
資金調達とは
資金調達とは、会社を経営するにあたって必要となる資金を外部から調達することです。資金調達によって、会社の事業を存続・発展させることができます。特に、事業を発展させるためには、雇用や設備投資を増やすケースがほとんどです。
つまり、資金調達は、人や財産を増やすための手段とも言えます。仮に資金調達をせず事業を拡大した場合、手持ちの資金はなくなり、資金ショートに陥る可能性が高いです。会社が倒産する原因にもつながるため、会社側は資金ショートを起こさないように、常に資金調達について考えておく必要があります。
資金調達が必要になるケース
企業で資金調達が必要になるケースは、大きく分けて以下の2つあります。
- 起業する時や新規事業を始める時
- キャッシュフローが悪化した時
特に中小企業やベンチャー企業の場合、経営が安定していないことも多いです。起業後や新規事業拡大で、すぐに売上が上がる保証はないため、なるべく多く資金を調達しておくことをおすすめします。
起業する時や新規事業を始める時
起業する時や新規事業を始める時は、資金が必要になるケースがほとんどです。前述した通り、起業したり、新規事業を始めたりしても、すぐに売上が上がる保証はありません。
また、事業を拡大する場合、事業をさらに大きく成長させるためにも一定の資金が必要になります。人員を増強するなら採用コストや人件費、設備投資をするなら機械などの導入費が発生します。
キャッシュフローが悪化した時
キャッシュフローが悪化した時も、資金調達が必要になります。事業が黒字であったとしても、現金が不足すれば、取引先への支払いが滞り事業が止まってしまうかもしれません。最悪の場合、倒産の危険性も高いです。
取引先からの入金が遅れて、仕入れ先や経費の支払いが滞らないように、キャッシュフローにも常に意識しながら経営を進めていくことが大切です。
資金調達は3種類に分けられる
ベンチャー企業の資金調達は、大きく分けて以下の3種類があります。
- 負債を増やす
- 資本を増やす
- 資産を現金に変える
調達方法によってメリットとデメリットは異なります。そのため、それぞれの違いをしっかり理解したうえで最適な方法を選ぶことが大切です。
資金調達①負債を増やす
負債を増やす方法は、金融機関や公的機関からの融資、社債の発行が代表的です。他人資本で資金を調達するため、デットファイナンスとも呼ばれています。
負債を増やすメリット
負債を増やす方法によるメリットは、以下の3つです。
- 経営権に影響がない
- 資金調達先の種類が豊富
- 利息を損金として計上できる
融資を受けて資金を確保する場合、株式の引き渡しが必要ないため、経営権に影響がないことが最大のメリットです。自由な経営を望んでいる経営者の方におすすめの方法となります。
また、融資元の種類が豊富なため、資金を調達できるチャンスが複数あります。仮に、一つの融資元で審査が通らなくても、別の融資元で審査を通過し資金調達できる可能性があるということです。そのため、審査が通りづらい企業でも、比較的資金調達がしやすい傾向にあります。
借入金は利息が発生しますが、利息は損金として認められています。そのため、節税効果があることもメリットとして挙げられます。
負債を増やすデメリット
一方、負債を増やす方法によるデメリットには、以下の2つが挙げられます。
- 返済の義務がある
- 審査が必要
融資により借り入れたお金の返済義務があることが大きなデメリットです。融資を受けるということは、融資元からお金を借りているため、当然のように返済義務があります。さらに、返済には期間が設定されており、経営が赤字続きであったとしても期限内に返済が求められます。
また、負債を増やすと、将来のキャッシュフローの一部は返済に充てなければならず、返済が終わるまでは思うように資金を使えない点も理解しておきましょう。
融資を受けるには審査に通過しなければなりません。中小企業やベンチャー企業など、信頼度が低い企業の場合は、審査に通りづらい傾向にあります。
資金調達②資本を増やす
資本を増やす方法はエクイティファイナンスとも呼び、新たに株式を発行することや、出資を受けることで資金を調達します。
資本を増やすメリット
資本を増やす方法によるメリットには、以下の2つが挙げられます。
- 返済義務がない
- 自己資本率が上がる
資本を増やす大きなメリットとなるのが、原則として返済義務がないことです。金利もかからないことから、必要な資金を自由に運用できます。
また、資本を増やすことによって自己資本の増加を図ることができるため、財務面での安定性を示す自己資本率が上がります。自己資本率が上がることによって、銀行や他企業からの信用度を向上させることが可能です。それによって融資を受けやすくなるなど、資金調達の選択肢が広がります。
資本を増やすデメリット
一方で、資本を増やす方法によるデメリットは、以下の2つがあります。
- 経営に干渉される可能性がある
- 配当金の支払いが必要になる可能性がある
資本を増やす方法では、会社の経営に意見できる株主が増えるため経営に干渉される可能性があります。投資家やベンチャーキャピタルは、事業を成功させるためのアドバイスやサポートをしてくれますが、自由な経営をしたい経営者の方はストレスに感じることもあるでしょう。
また、出資を受ける場合、株式の一部を個人投資家やベンチャーキャピタルなど、出資元に引き渡す必要があります。そのため、業績によっては配当金の支払いが必要になる可能性があります。
資金調達③資金を現金化する
資金を現金化する方法はアセットファイナンスとも呼び、既存の保有している資産や既存事業を売却することで、資金を調達します。
資金を現金化するメリット
資金を現金化するメリットは、以下の通りです。
- 信用度や経営状況に関係なく利用できる
- スピーディに資金化できる
資金を現金化する方法では、資産価値が重視されるため、金融機関からの信用が低いベンチャー企業などでも利用できることが最大のメリットとなります。そのため、融資に審査になかなか通らない企業でも資産があれば資金確保が可能です。
また、ファクタリングや資産の売却は現金化までのスピードが早いことが特徴です。資金確保を急ぐ場合には、おすすめの方法の一つとなります。
資金を現金化するデメリット
資金を現金化するデメリットは、以下の通りです。
- 資産がなければ利用できない
- 手数料がかかる
資金を現金化する方法では、資産を売却して資金を調達するため売却可能な資産がなければ利用できません。そのため、個人事業主や創業して間もない企業には資金調達の方法として検討しにくい手段となる可能性があります。
さらに、対象資産を売却する際には手数料や諸費用がかかるケースも多いです。金額は事業者によって異なりますが、一般的には融資の手数料よりも高く設定されていることもあるので事前に発生するコストの確認が必要です。
具体的な資金調達方法9選
具体的におすすめの資金調達方法として、以下の9つが挙げられます。
- 公的融資を受ける
- 銀行融資を受ける
- 社債を発行する
- 株式を発行する(第三者割当増資)
- ベンチャーキャピタルから出資を受ける
- 個人投資家から出資を受ける
- クラウドファンディングを利用する
- 不動産を売却する
- ファクタリングを利用する
調達方法によって特徴が異なるため、しっかり比較した上で選択することが大切です。
公的融資を受ける
公的融資とは、国や地方公共団体などから事業資金を借りる調達方法です。政府系の金融機関として、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などが挙げられます。創業者に対する創業融資なども行っているのが特徴で、事業をこれから始める人でも借りることができます。
地方公共団体の融資は、各都道府県や各市町村によって異なるため注意が必要です。なお、公的融資には、信用保証協会の保証付き融資も該当します。この融資は、融資を信用保証協会が保証してくれる制度です。仮に返済できなかった時に、代位弁済してくれます。代位弁済で返してもらった分は、その後信用保証協会へ返済する流れです。
公的融資のメリットは、銀行融資よりも低金利であることです。しかし、審査項目や提出書類が多く、その分手続きに時間がかかることがデメリットとして挙げられます。
銀行融資を受ける
銀行融資とは、メガバンクや地方銀行、信用組合などのように民間の資本で運営される金融機関から融資を受けることをいいます。近年では、ベンチャー企業や中小企業など、成長性に期待し融資をする金融機関も増えています。
銀行融資のメリットは、金利が低いことです。また成長性のある企業と判断されたり信用を得られれば、多額の資金を融資してもらえる点が大きなメリットでしょう。ただし、前述した日本政策金融公庫や商工組合中央金庫と比較して、審査が厳しい傾向にあります。
銀行融資の審査に通らない可能性がある場合は「信用保証協会の保証付き融資」がおすすめです。信用保証協会に保証人になってもらうことで、金融機関から融資を受けやすくなります。
保証付き融資を利用する場合は、信用保証料がかかったり、信用保証協会と金融機関のそれぞれで審査が必要となるため手続きに時間がかかることがデメリットとして挙げられます。
信用保証協会は、全国の都道府県ごとに1ヶ所設置されているため、利用の際は該当の信用保証協会に問い合わせてみてください。ベンチャー企業や中小企業などが、受けられる融資制度について詳しく知りたい場合は、以下を参考にしてください。
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社債を発行する
社債とは企業が発行する債券のことを指し、その債券を投資家に購入してもらうことで資金を確保する方法です。
社債のメリットは、早急に多くの人から資金調達できることです。しかし、投資家などから資金を募るので、償還時期を迎えたら利息をつけて返済しなければならないことがデメリットといえます。そのため、社債を発行する方法は、緊急で資金が必要な会社におすすめです。
株式を発行する(第三者割当増資)
株式を発行し、第三者に売ることで資金を調達する方法です。
資金の返済が不要なことがメリットとして挙げられます。しかし、株主が増えて経営権そのものが奪われてしまうことがあります。また、株主に対して収益に応じて配当金を支払わなければならない点もデメリットの1つです。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業に出資し、出資額を回収しながら利益を得ている会社です。自社の事業内容に将来性を感じてもらうことができれば、ベンチャーキャピタルから出資を受けることが可能です。
ベンチャーキャピタルは多くのベンチャー企業の経営を支援した実績があるため、経営に関するアドバイスをもらえるのがメリットです。一方で、ベンチャーキャピタルにとって、自社の成長に伴い出資額を回収することも出資をする目的であるため、過剰に経営状況に干渉される可能性もあります。
ベンチャーキャピタルからの出資は、経営が初めての場合や、アドバイスをもらいながら事業を進めたい場合に向いているでしょう。ベンチャーキャピタルについて、仕組みや利用手順などを知りたい方は、以下を参考にしてください。
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個人投資家から出資を受ける
個人投資家とは、将来性のある起業家を支援したり、社会貢献をする事業に投資をする人を指します。個人投資家を探すには、専門のマッチングサイトを利用する、起業家のイベントや交流会、セミナーに参加するなどをして接点を作るなどの方法があります。
ベンチャーキャピタルからの出資同様、個人投資家からの出資も基本的に返済は不要です。また、個人で投資を行なっている点から資金が手元に入るのが早いことがメリットです。
一方で、出資を受ける個人投資家との相性が悪い場合は、意見が対立するなどのトラブルに発展してしまうケースもあるので気をつけましょう。また、積極的に助言をしてくれる個人投資家も一定数いる反面、過度に経営に干渉されるリスクもあるため注意が必要です。
クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングは、企業の事業に共感した人から資金を募る方法です。インターネットの専用サイトから、簡単に登録できるため手軽に始められる資金調達方法の一つです。クラウドファンディングの利用は、サイトを見た支援者の反応から自社の事業の将来性を図ることが可能です。
クラウドファンディングで得た資金は返済不要ですが、クラウドファンディングの種類によっては、支援者に対して商品やサービスを見返りとして提供が必要となる場合があります。
資産を売却する
事業継続に必要な資産以外を売却して、資金を調達する方法です。例として、保養所や社宅、有価証券などが挙げられます。
資産を売却するメリットは、比較的早く現金化できることです。それに対して、売却先が見つからなければ資金調達できないことや、そもそも資産を保有していないと利用できないことがデメリットとして挙げられます。
ファクタリングを利用する
ファクタリングとは、ファクタリング会社に手数料を支払うことで、企業が抱える売掛債権を現金化できるサービスのことをいいます。ファクタリングサービスによっては、最短10分で現金化できるものもあり、早期に資金を確保したい場合に適しています。
ただし、ファクタリングを利用するには審査が必要です。ファクタリングの利用はファクタリング会社が一時的に、売掛債権を負担するものであるため、取引先の経営状況によっては審査に落ちてしまう可能性があります。また、ファクタリングを利用しすぎると、適正に資金繰りが悪化していると認識される可能性もあるため注意が必要です。
近年、さまざまな企業がファクタリングサービスを展開しているため、手数料や現金化までの期間を比較しながら、自社に適したサービスを選定するようにしましょう。
資金調達をスムーズに行う方法
ベンチャー企業が資金調達をスムーズに行う方法として、以下の3つが挙げられます。
- 調達する金額や事前準備を明確化する
- 自社に最適な資金調達方法を選ぶ
- 資金調達できるまでの期間を確認する
- 資金調達にかかるコストを把握する
状況によっては、資金調達を早く済ませなければならないこともあります。そのため、事前にしっかりポイントを押さえておくことが大切です。
調達する金額や事前準備を明確化する
「何のために」「いくら」運転資金を用意する必要があるのかを明確にしておくことが大切です。
金融機関で融資を受ける場合、使用用途や金額が曖昧だと、借入できない可能性が高いことが理由として挙げられます。また、資金額を明確にするためにも、資金調達を始める前の段階でしっかり決めておきましょう。
自社に最適な資金調達方法を選ぶ
資金調達方法には、金額や資金化までの速さ、返済義務など違いはありますが、ポイントは企業規模に合った資金調達方法を選ぶことです。
この章では「ベンチャー・スタートアップ企業」と「個人事業主・スモールビジネス」に分けて、それぞれの適した資金調達方法を解説します。
ベンチャー・スタートアップ企業
ベンチャー・スタートアップ企業におすすめの資金調達方法は以下の通りです。
- ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資
- 公的融資を受ける
- 銀行融資を受ける
ベンチャーキャピタルや個人投資家から出資を受ける方法は、返済の義務がなく事業計画に共感してもらうことで資金を調達できます。そのため、融資の審査が通りづらいベンチャーやスタートアップ企業が資金を確保しやすい方法の一つです。
公的機関や金融機関の融資は、資金を確保するために審査が必要ですが利息が低く、資金調達コストを抑えられる方法です。公的機関や金融機関の中には、ベンチャーやスタートアップ企業を支援する目的で融資を行っており、比較的審査に通りやすい機関もあります。
個人事業主
個人事業主におすすめの資金調達方法は、以下の通りです。
- クラウドファンディング
- 補助金や助成金
- 公的融資や銀行融資を受ける
クラウドファンディングは、インターネットやSNSを活用してビジネスプランを公開し、事業に共感した人から資金を調達する方法です。厳しい審査もなく簡単に始められることが特徴です。
補助金や助成金は、地方自治体や国などが資金支援を行う制度のことです。補助金や助成金は返済不要であることが大きなメリットです。制度の要件に当てはまれば資金給付を受けることが可能です。ただし、申請できる期限が決まっているため、制度ごとに申請期間や募集要項を確認する必要があります。
個人事業主やの融資を行う金融機関も多くあるため、資金調達方法の一つとして検討しましょう。金融機関の審査に通らない場合は、利息は高くなりますが、比較的審査が通りやすいビジネスローンや信用保証協会の保証付融資で融資を受ける方法もおすすめです。
資金調達までに時間がかかる場合もある
早急に資金が必要な場合でも、調達方法によっては時間がかかることもあります。必要な時までに資金を確保するためには、申請期間を含めたスケジュールを立てたり、時間がかからない調達方法を選んだりすると良いです。
資金調達にかかるコストを把握する
返済の負担を抑えるためには、資金調達にかかるコストも把握しておくことが大切です。資金調達コストには、以下のものが挙げられます。
- 負債コスト
- 株式資本コスト
- 内部留保コスト
負債コストとは、金融機関などから融資を受けた借入金(負債)に発生するコストのことをいいます。具体的には、お金を借入れた際に発生する支払利息などを指します。株式資本コストは、株式を発行し株主から出資を受けた際に発生するコストです。出資元に支払う配当金が株式資本コストにあたります。
内部留保コストとは、企業の利益を事業投資に利用しようと企業内部に留めた際に発生するコストのことです。内部留保額によって発生する法人税や、内部留保することで収益性が高まった場合の配当金などがこれにあたります。
資金調達にはそれぞれ何らかのコストがかかるため、発生するコストを確認しておきましょう。資金調達にかかるコストの詳細や、コストを抑えられる資金調達方法については、以下を参考にしてください。
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資金調達コストとは?発生する種類や計算方法を抑える方法を解説
資金調達方法では組み合わせるのがおすすめ
企業が資金を調達する方法は3つに分類でき、分類ごとにさまざまな手段があります。手段を選ぶ際は、メリットだけに焦点をあてずにデメリットも確認する必要があります。
例えば、出資を受ける場合、返済不要であることは企業にとって大きなメリットとなるでしょう。しかし、株式を引き渡す必要があるため持株比率の注視を怠ると、自社が取り組みたい事業ができないなど、経営をスムーズに進められないというデメリットもあります。
資金調達の手段の特徴を理解し、メリットとデメリットを比較した上で、自社に合う方法を選びましょう。