会社の移転を検討している方の中には、会社移転に伴い何をすればよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。

 

会社の移転に伴う業務は多岐にわたり、抜けや漏れがあった場合、トラブルにつながったり自社に損益を与えたりする可能性があります。そのため、会社を移転する際は、事前に対応が必要な業務や手続きの把握が重要です。

 

本記事では、会社移転で対応すべきことや、規模に応じた移転スケジュール例を解説します。また、移転をスムーズに完了させるためのコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

会社の移転でやることとは?

 会社の移転でやるべきこととして、主に以下の3つが挙げられます。

 

  • 現オフィス関連業務
  • 新オフィス関連業務
  • 連絡・届出に関する業務

 

現オフィスに関するものや、新オフィスに関するものなど、カテゴリ別にさまざまな業務が発生します。この章では、それぞれのカテゴリで発生する業務を詳しく解説します。

 

現オフィス関連業務

現オフィスの解約に発生する主な業務は、以下の2点です。

 

  • 貸主に解約を予告する
  • 原状回復工事の手配

 

貸主に解約を予告する

会社を移転する場合は、現オフィスの貸主に前もって解約を予告する必要があります。

 

解約予告期間は賃貸契約書に記載されていますが、一般的には解約日の3~6ヶ月前までです。予告が遅れると、新しいオフィスとの重複期間が大きくなり、その分賃料を多く支払うことになりかねません。とはいえ移転先の工事が間に合わず予告時期を過ぎてしまうことも問題なになるため、計画的に進めることが必要です。

 

また、本来の契約期間の満了前にオフィスを解約する場合、違約金が課せられることもあります。会社を移転する際には、解約予告期間や契約期間など、現オフィスの契約内容を事前に確認しておくことをおすすめします。

 

原状回復工事の手配

原状回復工事とは、現オフィスを借りた時の状態に戻す工事のことをいいます。工事の手配や業者の選定は自社で行う場合と、貸主が行う場合があります。

 

賃貸オフィスの場合は通常の賃貸物件とは異なり、経年劣化や通常損耗などに関わらず、原状回復工事の費用を100%借主が負担するのが実態となっています。

 

ただし、契約時に原状回復の範囲や費用の負担などを定めている場合もあります。会社の移転が決まった場合は、まずは原状回復に関する契約内容を確認することが重要です。

 

新オフィス関連業務

新オフィスの解約に発生する主な業務は、以下の5つがあります。

 

  • 移転方針決定
  • 新オフィス選定・手続き
  • 引っ越し業者の選定・手配
  • 内装工事計画・手配
  • 通信機器工事計画・手配

 

移転方針決定

新しいオフィスを選定する前に、まずは「会社移転で達成したい目標」を設定する必要があります。目標を設定にするためには、現オフィスの課題の洗い出しをしましょう。課題を洗い出すことによって、移転の目的や目標が明確になり、新しいオフィスの選定に活かすことが可能です。

 

例えば、人手不足が課題で社員の追加を目標としている場合は、採用した社員のスペースを確保する必要があるため、現オフィスよりも広いオフィスの選定が必要となります。

 

以上のように、自社に適したオフィスを選定するためには、移転の目的や目標を定めましょう。

 

新オフィス選定・手続き

自社にどのようなオフィスが必要なのか把握できたら、実際に新オフィスの選定をしましょう。立地や広さ、予算はもちろん、希望するレイアウトに出来るかなどの視点から、物件を比較することが重要です。

 

物件は、仲介業者や不動産会社のウェブサイトで下調べできるため、目ぼしい物件をピックアップしておくことをおすすめします。目ぼしい物件を仲介業者や不動産会社に提示することで、自社がどのような物件を希望しているのかが伝わりやすくなります。希望に近い物件の提案を受けられるようになるため、双方向のコミュニケーションミスなどを抑えられます。

 

入居したい物件が絞り込めたら、内覧や条件交渉などをした上で、正式に契約を交わします。

 

引っ越し業者の選定・手配

入居するオフィスが決まったら、設備や家具などを搬出・搬入する引っ越し業者の選定をします。引っ越し業者を選定する際は、複数社に見積もりを取って金額を比較するのがおすすめです。

 

ただし、単純に価格だけを比較するのではなく、サービス内容も確認することが大切です。引っ越し業者の中には、不用品の回収や、社内向けの引っ越し準備資料の作成などがサービスに含まれている場合もあり、自社で対応するよりも安く済む可能性があります。

 

金額とサービス内容を比較し、妥当な金額かどうかを判断した上で、業者を先生しましょう。

 

内装工事計画・手配

内装工事に伴い、執務室や会議室、応接室など新オフィスのレイアウトを設計する必要があります。レイアウトは動きやすい導線と十分なスペースの確保がポイントです。設計したレイアウトによって、工事内容や設置する設備・家具などが決まるため、会社移転において重要な業務となります。

 

新オフィスのレイアウトが決まったら、業者を選定し、工事スケジュールを決めた上で、正式に工事の発注をします。

 

通信機器工事計画・手配

通信機器工事とは、電話・OA 機器などネットワーク関連の移設工事のことを指します。

通信機器工事の移設は、現在契約している電話回線業者やインターネット会社に連絡し、打ち合わせをした上で、電話やLANの配線図を作成し、移設工事を実施します。

 

ネットワークなどのインフラ周りの工事は、専門知識が必要になるため、自社のIT部門や専門業者に依頼するのが望ましいです。

 

連絡・届出に関する業務

会社の移転に伴う業務には、連絡や届出などの事務手続きも必要となります。主な業務は以下の3点です。

 

  • 引っ越し計画・周知
  • 関係官庁への手続き
  • 印刷物の作成

 

引っ越し計画・周知

引っ越しの日程が決まったら、引っ越しを周知する必要があります。

 

まずは自社の社員に、引っ越しのスケジュールや新オフィスのレイアウト、備品の移動方法、廃棄物の処理方法などを周知しましょう。周知する際は、社員が内容を見返せるように、マニュアルを作成して渡すことをおすすめします。

 

引っ越しを周知する先は、社員だけではなく、OA機器や複合機など契約しているリース会社、取引先などもあります。

 

リース会社には移転日を連絡し、住所変更に伴いどのような手続きが必要になるのかの確認が必要です。

 

取引先に対する引っ越しの連絡は、一般的にははがきやメールで行われます。移転する1ヶ月〜2週間前に取引先にお知らせできていることがマナーであるため、早めに準備する必要があります。

 

関係官庁への手続き

オフィス移転に伴い、法務局、税務署、社会保険事務所等への届出が必要となります。届出する書類は以下の通りです。

 

【移転前に届出が必要なもの】

  • 郵便物届出変更届
  • 防火・防災管理者選任届出書
  • 防火対象物工事等計画届出書
  • 消防計画作成(変更)届出書
  • 対象物使用開始届出書

 

【移転後に届出が必要なもの】

  • 本店移転登記
  • 異動事項に関する届出
  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更届
  • 労働保険名称、所在地変更届
  • 労働保険関係成立届
  • 労働保険保険料申告書
  • 雇用保険事業所各種変更届

 

移転前に届出が必要なものと、移転後に届出が必要なものがあるため、提出期限はよく確認しておく必要があります。

 

印刷物の作成・発注

社員の名刺や封筒、パンフレットなど、新オフィスの住所に変更したものを作成します。移転後、すぐに差し替えられるように早めに準備しておくことをおすすめします。

 

印刷物は、業者に発注することも可能なため、量が多い場合は業者の利用を検討しましょう。

 

会社の移転でやることチェックリスト

会社の移転で発生するタスクを管理するためには、チェックリストの作成がおすすめです。カテゴリーごとにチェックリストを作成し、抜け漏れがないように運用していきましょう。

 

以下では、チェックリストの一例を紹介します。チェックリスト作成の際は、以下の内容以外に自社でどのようなタスクが発生するのか整理しながら作成してください。

 

現オフィスに関するチェックリスト

◻️契約内容の確認

◻️解約予告の日程確認し、解約を通知

◻️原状回復の条件・費用を確認
◻️預託金(保証金)の返還時期と金額を確認

 

新オフィスに関するチェックリスト

◻️オフィス選定条件の設定

 ∟立地

 ∟周辺環境

 ∟予算 など

◻️ 候補先の内覧・比較検討 

◻️ 契約内容の確認

◻️ 契約・預託金の支払い

◻️ レイアウトの予算決定

◻️ レイアウト設計作成・確認

◻️ 内装工事業者選定

◻️ 内装工事業者手配

◻️ 通信工事計画・設計図作成

◻️ 通信工事業者選定

◻️ 通信工事業者手配

 

社内業務に関するチェックリスト

◻️周知用マニュアル作成

◻️説明会開催

◻️印刷物手配

 ∟名刺

 ∟パンフレット 

 ∟挨拶状 など

 

社外業務に関するチェックリスト

◻️取引先への連絡

 ∟得意先

 ∟金融機関

 ∟会計事務所(業務委託先)

 ∟弁護士事務所(業務委託先)

 ∟リース会社

 ∟備品の購入先 など

◻️関係官庁への届出

 

【規模別】会社移転でやることのスケジュール例

 会社移転のスケジュールは、移転の規模によって大きく異なります。移転規模が大きくなればなるほど、移転に必要な日数は長くなります。この章では移転規模30坪の場合と、500坪の場合のスケジュール例を紹介します。

 

会社の移転を検討している場合は、発生する業務をどのようなスケジュールで対応すべきかの参考にしてください。

 

移転規模30坪の場合

移転規模30坪の場合の、移転スケジュールは以下の通りです。以下のスケジュールは、 解約予告が6ヶ月前の場合を想定しています。

※引用:オフィス移転スケジュール|at OFFICE

 

30坪の場合、オフィス移転に関わる期間は約8か月程度です。 こちらのスケジュールはあくまでも目安であるため 、会社の設備や工事内容によっては前後する可能性もあります。

 

移転規模500坪の場合

移転規模500坪の場合の、移転スケジュールは以下の通りです。以下のスケジュールは、 解約予告が6ヶ月前の場合を想定しています。

※引用:オフィス移転スケジュール|at OFFICE

 

500坪の場合、一つ一つの業務の負荷が大きいためオフィス移転完了までは1年以上かかるケースが多いです。 会社の設備や内装工事によっては、2年近くかかるケースもあります。

 

会社によって期間は大きく異なりますが、いつ何をするべきかスケジュールを立てるための参考としてお役立てください。

 

会社の移転をスムーズにするコツ

 会社の移転をスムーズにするコツには、以下の3つがあります。

 

  • 必要な手続きを把握しておく
  • 現オフィスの契約内容を確認しておく
  • 会社移転業務を委託する

 

会社の移転は、会社にとって大きなプロジェクトの一つですが、 長期間移転のために工数を割かれていると、本業に影響を与える可能性もあります。 そのため、コツを知りスムーズな移転ができるようにしましょう。

 

必要な手続きを把握しておく

会社の移転の場合、関係官庁への手続きが必要となるため、事前に提出期限などを確認しておくことをおすすめします。

 

届け出る書類によっては、移転後ではなく、移転前に提出が必要なものもあります。また、移転後何日後までなど細かく期限が設定されているものもあるため、書類ごとの管理が必要です。

 

前述したチェックリストの作成もおすすめです。 チェックリストは、クラウドで保存するなど保存漏れが無いように一元管理がよいでしょう。

 

現オフィスの契約内容を確認しておく

現オフィスの退去に関わる要件を確認しておかなければ、トラブルに発展する可能性があります。想定されるトラブルには、以下のようなものがあります。

 

  • 解約にあたって予定外の違約金が発生する
  • 原状回復工事の負担の所在が曖昧になる

 

上記のトラブルは、いずれにしても自社にとって負担となるものです。現オフィスの契約内容を確認は、会社移転の際には必ずやっておきたいタスクの一つです。

 

会社移転業務を委託する

オフィスの移転が初めての場合や、会社移転に伴う工数が取れない場合は、会社移転の委託業者への依頼でスムーズに進めることが可能です。会社移転に関わる実績やノウハウがある業者に依頼することで、プロの目線で移転に関するアドバイスがもらえます。

 

委託業者によって、対応範囲やサービス内容が異なるため、自社に合った業者の選定が重要です。複数社に見積もりを取り、業者を比較しながら絞り込むことをおすすめします。

 

会社移転でやることを整理するためにチェックリストを作成しよう

 会社の移転でやるべき業務は、多岐にわたります。また、会社の規模や業界・業種によってもやるべきことや移転に関わるスケジュールは大きく異なります。

 

トラブルを避けスムーズに移転を完了させるためには、現オフィスの退去要件を確認したり、発生する業務をリストアップし、抜け漏れを防ぐ必要があります。一つ一つの細かいタスクを管理するためにはチェックリストの作成しましょう。

 

会社の移転を検討されている方は、本記事を参考に、スムーズな移転を実現させてください。

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