起業するためには、初期費用をやランニングコストを理解した上で、正しく資金調達する必要があります。何にいくらかかるのかを理解していないと、起業後に資金繰りを安定させられません。
また、状況によって適切な資金調達方法も異なるため、自社にとって何が最適なのかを正しく判断することが大切です。
今回は、起業するのに必要な費用やおすすめの資金調達方法について解説します。起業するのに必要な費用を理解し、正しく資金調達をした上で安定した経営を進めましょう。
起業するのに必要な費用
起業するのに必要な費用としては、下記2つが挙げられます。
- 初期費用
- ランニングコスト
起業時に必要な費用は、初期費用とランニングコストに分類されます。起業する場合には、初期費用とランニングコスト両方に関する正確な知識と、それらをカバーするための相当な額の資本を持つことが必要大切です。
初期費用
起業する際には、登記費用や定款にかかる費用など、様々な初期費用が必要です。初期費用の内訳と概要は、下記表を参考にしてください。
種類 |
費用 |
概要 |
登記費用 |
株式会社は15万円未満、合同会社は6万円未満 |
会社を作る際に必要な手続き |
定款と定款認証にかかる費用 |
4万円(電子定款なら不要)+3〜5万円(資本金額によって異なる) |
会社の事業内容や規則などの概要を記したもの |
事務所賃貸にかかる費用 |
場合による |
事務所を借りる場合に必要 |
設備費用 |
場合による |
仕事に必要な設備費用 |
会社を設立する場合、登記費用や定款費用は必ず必要です。また、事務所を借りる場合には、事務所賃貸にかかる家賃や仕事に必要な設備費用もかかります。
ランニングコスト
起業時には、初期費用だけでなくランニングコストもかかります。ランニングコストとして挙げられる代表的な費用は、下記の4つです。
- 家賃
- 光熱費
- 人件費
- 税金
仕事場として事務所を借りている場合には、月々の家賃や光熱費も必要です。また、人を雇用するなら、人件費も毎月かかるためある程度の資本を確保しておきましょう。
個人か法人かによって初期費用が大きく異なる
起業時の初期費用は、下記の2つです。
- 個人で起業する場合の初期費用
- 法人で起業する場合の初期費用
起業時にかかる初期費用は、個人か法人のどちらなのかによって大きく異なります。法人の方が初期費用は高くなることがほとんどですが、法人の種類によっても異なるため理解しておくことが大切です。
個人で起業する場合の初期費用
個人で起業する場合には、法人の場合よりも初期費用を抑えられるのがメリットです。個人での起業には、登記費用や定款作成費用などがかかりません。また、自宅で仕事するなら、家賃光熱費もかからないため最低限の費用で起業できます。
個人の起業で費用を削減するなら、開業届のみを提出しましょう。開業届には、費用が発生しないため、基本的には全員が提出することをおすすめします。
法人で起業する場合の初期費用
法人の種類としては、下記5つが挙げられます。
- 株式会社
- 合同会社
- 一般社団法人
- 一般財団法人
- NPO法人
法人で起業すると言っても、様々な種類があり、特徴も異なります。「一番名前を聞いたことがあるから」という理由だけで株式会社を設立すると、後悔する恐れもあるため、それぞれのと特徴を理解した上で、目的に合った会社を設立することが大切です。
株式会社の場合
最も一般的な会社である「株式会社」の設立には、資本金のほかに約25万円の予算が必要です。法定費用としては、下記のようなものが挙げられます。
- 登記・免許費用:15万円または資本金の0.7%のいずれか高い方
- 謄写料として1通あたり2,000円程度
- 公証料として5万円程度
- 印紙代として4万円(※電子証明の場合は省略)
また、堅実な事業運営を担保し、社会的な信用を得るためには、相応の資本金が必要となります。一般的には、銀行の可視資金として、少なくとも100万円は必要だと言われています。
さらに、会社設立を専門家に依頼する場合は、別途費用がかかります。依頼先によって費用は異なるため、サービス内容や費用を比較した上で検討することが大切です。
合同会社の場合
合同会社は、株主数が少ないため自主運営に最適な事業形態です。合同会社は、10万円近い設立費用と資本金で設立できます。
株式会社よりも、登録免許税が安く抑えられるだけでなく、定款の認証も必要ありません。費用に関して合同会社と株式会社を比較すると、許認可や登記の準備費用はかなり低くなるため、コストを抑えて会社設立したい人におすすめです。
株式会社と合同会社の大きな違いとしては、株式の発行が可能か不可能かが挙げられます。投資家に株を渡したい人は株式会社を設立する必要があり、そうでない人は合同会社を選びましょう。
一般社団法人の場合
一般社団法人とは、個人の集まりである非営利法人のことです。一般社団法人を設立するには、下記のような必要がかかります。
- 登録免許税:6万円
- 定款作成の認証料:5万円
- 転記料:2,000円
合計で約11万円の費用が必要です。また、普通法人と非営利法人は設立費用がほぼ同じですが、非営利型は設立後の費用が非課税となり、税制面で著しく優遇されています。
一般社団法人は公共的なイメージがあり、会員制や資格取得を目的とした事業と相性が良いため、事業内容によっては一般社団法人を選ぶのがおすすめです。
一般財団法人の場合
一般財団法人とは、企業や個人の財産を維持・運営することで得られる利益によって、事業を行う法人のことです。一般財団法人を設立するには、理事に対して300万円以上の財産が必要となります。
登記にかかる費用は、下記の通りです。
- 基本財産:300万円以上
- 登録免許税6万円
- 謄本代:2,000円
- 公証人への定款認証料5万円
合計で、約311万円が必要となります。ただ、印紙税は非課税であり、電子定款でも紙定款でも別途印紙代を支払う必要はないのが特徴です。
NPO法人の場合
NPO法人は「特定非営利活動法人」と呼ばれ、社会的な目的のために活動を行い、利益を仲間で共有することを目的としない法人のことです。他の法人と異なり、資本金や入会金、認可金などの税金や費用が免除されるのが特徴です。
NPO法人の設立にかかる費用は、認証の準備と取得だけとなるため、他の法人と比較しても費用がほとんどかかりません。ただ、申請から認証、登記まで2〜3ヶ月かかるのが一般的であるため、準備期間を長く見積もる必要があります。
起業時におすすめの資金調達方法
起業時におすすめの資金調達方法は、下記の3つです。
- 融資を利用する
- 助成金や補助金を活用する
- クラウドファンディングを利用する
資金調達方法によって、メリットやデメリットが異なるだけでなく、どんな人におすすめなのかが異なります。起業時の資金調達を考えている方は、資金調達方法ごとの特徴を理解しておくことが大切です。
融資を利用する
起業時の資金調達方法としては、融資がおすすめです。中でも、日本政策金融公庫からの融資がおすすめです。日本政策金融公庫は、民間の資金調達手段を補完するために設立された、当局が全額出資する金融機関です。
新創業融資制度は、創業間もない企業や創業から7年以上経過していない企業を対象に、過去の信用度がなくても融資を受けられるようにするために開発されました。
新創業融資制度について詳しく知りたい人は、下記表を参考にしてください。
助成金や補助金を活用する
資金調達方法としては、助成金や補助金もおすすめです。助成金や補助金には、返済不要なものが多いため、起業後にも資金繰りを安定させやすくなります。
起業時に利用できる補助金としては「地域創造型創業補助金」という国の補助金が挙げられます。例えば、東京都中小企業振興公社の300万円(補助率2/3)の補助金は、創業前でも創業後でも申請できることや達成確率が高いこと、要件を満たせば返済の必要がないことなど、起業家にとってメリットが多いです。
ただ、申請期間やその後の支払いに制限があり、すべての経費が補助金の対象になるとは限りません。また、会社の収益が上がったタイミングで、配分された金額を返済しなければならないこともあるため注意が必要です。
クラウドファンディングを利用する
資金調達方法としては、クラウドファンディングもおすすめです。起業を希望する人が、ネット上などで様々な人から少額の資金を調達する仕組みのことです。
クラウドファンディングは、テレビで定期的に広告が放映されるほど一般的になったことによって、プロジェクトの数も増えています。
クラウドファンディングによる資金調達を成功させるためには、特徴的な商品・サービスや強い共感を呼ぶストーリーを作れるかどうかが重要です。
資金調達について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
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起業する際の費用を抑える方法
起業時すぐに仕事したとしても、支払いが翌月や翌々月になることがほとんどです。長期のプロジェクトになると、請求書の発行が完了するまで請求できないこともあり、支払いがさらに遅くなってしまうかもしれません。
しかし、収入がなければ生活もできないため自己資金を確保しておく必要があります。具体的には、3〜6ヶ月の生活資金は確保しておくことが大切です。
同時に、固定費も可能な限り抑えましょう。オフィススペースや車両費、交通費、人件費などを可能な限り削減することをおすすめします。また、オフィスや会議室の費用を払う代わりに、シェアオフィスやコワーキングスペースを利用することで初期費用や固定費の節約が可能です。
個人事業主として起業すれば初期費用を抑えやすい
起業する際には、法人設立にかかる費用だけでなく、事務所の初期費用や設備費用もかかります。事業によっては、数百万円から数千万円かかってしまうこともあるため、まとまった資金を準備しなければいけません。
「資金がなくても起業したい」と考えているなら、個人事業主として起業しましょう。個人事業主としての起業なら、費用を最小限に抑えられます。初期費用を抑えれば、事業拡大のために費用を使用可能です。
資金や目的によって、法人なのか個人事業主なのかを検討することで、起業後の経営も安定して進められます。
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個人事業主から法人化する際にかかる費用|法人化するメリットやおすすめのタイミング
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