
この記事の答え
起業にかかる費用は、会社を作る手続きの費用と、事業を始めるための費用に分かれます。
手続きの法定費用は、株式会社で約17万〜24万円、合同会社で約10万円(紙の定款の場合)で、資本金は別に必要です。
個人事業主なら、税務署に開業届を出すだけで始められます。事業を始める費用まで含めると、日本公庫総研の2025年度の調査では中央値600万円でした(2026年10月時点)。
起業するためには、初期費用やランニングコストを理解した上で、正しく資金を集める必要があります。何にいくらかかるのかを理解していないと、起業後に資金繰りを安定させられません。
この記事では、起業に必要な費用の内訳と一覧、個人と法人の違い、資金調達の方法を解説します。ベンチャー.jpが取材した起業家の実例も紹介します。
起業するのに必要な費用は、初期費用とランニングコストの2つに分かれます。
会社を作る場合は、登記の費用(登録免許税)と定款の費用が必ずかかります。
事務所を借りる場合は、家賃や仕事に必要な設備の費用もかかります。起業にかかる費用の一覧は、下の表のとおりです(2026年10月時点)。
起業にかかる費用の一覧(株式会社・合同会社・個人事業主)
|
費用 |
株式会社 |
合同会社 |
個人事業主 |
|---|---|---|---|
|
登記の費用(登録免許税) |
15万円(資本金×0.7%が15万円を超えるときはその額) |
6万円(資本金×0.7%が6万円を超えるときはその額) |
なし(登記は不要) |
|
定款の認証手数料 |
資本金100万円未満3万円、100万〜300万円未満4万円、その他5万円(条件を満たせば1万5,000円) |
不要 |
なし |
|
定款の収入印紙 |
4万円(電子定款なら不要) |
4万円(紙の定款の場合) |
なし |
|
定款の謄本代 |
1枚250円(おおむね2,000円) |
— |
なし |
|
事務所・設備の費用 |
事業による |
事業による |
事業による |
|
法定費用の合計の目安 |
約17万〜24万円+資本金 |
約10万円(紙の定款の場合)+資本金 |
開業届の提出で始められる |
出典:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表、国税庁 No.7141 印紙税額の一覧表、日本公証人連合会、同(2024年12月の改定)、法務省 合同会社の設立手続、国税庁 開業届(2026年10月時点)
株式会社の定款の認証手数料は、2024年12月から一部が安くなりました。発起人が個人3人以下・発起設立・取締役会を置かない、のすべてを満たすと1万5,000円です。
起業時には、初期費用だけでなくランニングコストもかかります。代表的な費用は、下記の4つです。
仕事場として事務所を借りている場合は、毎月の家賃や光熱費がかかります。人を雇うなら、人件費も毎月かかります。
中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、起業に必要なお金を「開業資金」「運転資金」「当面の生活費」の3つに分けています。売上が入るまでの運転資金と、自分の生活費も別に用意しておきましょう。
起業時の初期費用は、個人で始めるか、法人を作るかによって大きく変わります。法人のほうが高くなることがほとんどですが、法人の種類によっても異なります。
個人で起業する場合は、法人よりも初期費用を抑えられます。登記や定款は必要なく、税務署に開業届を出せば事業を始められます。
自宅で仕事をするなら、家賃や光熱費もかからず、最低限の費用で起業できます。
法人の種類としては、下記5つが挙げられます。
「よく聞く名前だから」という理由だけで株式会社を選ぶと、後悔するおそれもあります。種類ごとの特徴を理解し、目的に合った形を選ぶことが大切です。
最も一般的な「株式会社」の設立には、資本金のほかに、法定費用として約17万〜24万円がかかります(内訳は上の表)。資本金の額は、取引先からの信用や融資の審査にも関わります。
(資本金の考え方は関連記事「株式会社設立時の資本金はいくら必要?」)会社設立を司法書士などの専門家に頼む場合は、別に費用がかかります。
合同会社は、株式会社よりも登録免許税が安く(6万円から)、定款の認証も必要ありません。
(出典:法務省)費用を抑えて会社を作りたい人に向いています。
株式会社と合同会社の大きな違いは、株式を発行できるかどうかです。投資家に株を渡して出資を受けたい人は株式会社を選びましょう。
一般社団法人とは、人の集まりである非営利法人のことです。設立には、登録免許税6万円と定款の認証手数料5万円に、謄本代など数千円がかかり、合計で約11万円です。
(出典:日本公証人連合会)
会員制や資格の認定を目的とした事業と相性が良いため、事業内容によっては一般社団法人を選ぶのもおすすめです。
一般財団法人とは、拠出された財産を運用して事業を行う法人のことです。設立には、設立者が300万円以上の財産を拠出する必要があります。
登録免許税6万円、定款の認証手数料5万円などを合わせ、約311万円が目安です。 (出典:法務省、日本公証人連合会)
NPO法人は「特定非営利活動法人」と呼ばれ、社会的な目的のために活動し、利益を分配しない法人です。
所轄庁に申請すると、2週間の縦覧期間のあと、2か月以内に認証か不認証が決まり、その後に登記をします。
(出典:内閣府NPOホームページ)準備期間を長めに見積もりましょう。
ベンチャーでも、会社設立の初期は実績が少ないため、自己資金と借り入れが資金の中心になります。
日本公庫総研の調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円でした。
内訳は、金融機関などからの借り入れが67.9%、自己資金が22.9%です(公庫の融資を受けて開業した企業が対象)。
(出典:日本公庫総研「2025年度新規開業実態調査」)主な方法は、下記の3つです。
起業時の資金調達には、日本政策金融公庫の融資があります。「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める人や、事業開始後おおむね7年以内の人が対象です。
融資限度額は7,200万円です。創業期の人は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます(2026年10月時点)。
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」、同 Q&A
助成金や補助金には返済不要なものが多いため、起業後の資金繰りを安定させやすくなります。
国の制度では、創業後1年以内の小規模事業者などの販路開拓を支援する「小規模事業者持続化補助金<創業型>」があります。
東京都では、東京都中小企業振興公社の「創業助成事業」があります。助成限度額は400万円(下限100万円)、助成率は3分の2以内です(2026年度)。
都内で創業予定か創業5年未満で、指定の創業支援事業を利用していることなどが条件です。
ただ、申請期間や対象経費には決まりがあり、すべての経費が対象になるとは限りません。
出典:中小企業庁「小規模事業者持続化補助金(創業型)」、TOKYO創業ステーション「創業助成事業」
インターネット上で、多くの人から少額ずつ資金を集める方法です。成功させるには、特徴のある商品・サービスや、強い共感を呼ぶストーリーを作れるかどうかが重要です。
資金調達について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
ベンチャー企業の資金調達方法とは?具体的なやり方やメリットとデメリットを解説
起業してすぐに仕事をしても、入金は翌月や翌々月になることがほとんどです。収入がなくても生活できるよう、自己資金を確保しておく必要があります。
日本公庫総研の調査では、開業時の自己資金は平均279万円でした。 (出典:日本公庫総研「2025年度新規開業実態調査」)
同時に、固定費もできるだけ抑えましょう。オフィスの代わりにシェアオフィスやコワーキングスペースを使えば、初期費用や家賃を節約できます。
株式会社ピーカブー 松成紀公子さん
2002年、布を仕入れるために友人と合資会社を設立しました。始めたときの資金は自己資金の20万円。それから20年間、1円も借り入れをせずに事業を続けてきたそうです(本人談)。
株式会社イチドキリ 徳永崇志さん
500万円の融資と100万円の自己資金、合計600万円で事業を始めました(本人談)。自己資金に融資を組み合わせて、開業時の資金をそろえた例です。
Rice Platformer株式会社 川原田美雪さん
おにぎり店を開くにあたり、約20坪の居抜き店舗の内装や設備を含めた初期費用は約1,500万円でした。将来の大型施設への出店に備えた、創業時としてはかなり大きな投資だったそうです(本人談)。
オープン直後の売上は予算の半分以下で、自分の資金では足りず、両親や親戚にも協力を頼みました。その後、2週間でエンジェル投資家から資金を調達し、銀行融資も受けて、借りた資金を返済しています。
3人が起業時に用意した金額は、20万円、600万円、約1,500万円と大きく違います。
小さく始めて借り入れなしで続ける道もあれば、融資や投資家からの資金で大きく始める道もあります。どちらを選ぶにしても、何にいくらかかるかを把握しておくことが出発点になります。
起業する際には、法人設立の費用だけでなく、事務所や設備の費用もかかります。日本公庫総研の調査では、開業費用の中央値は600万円で、250万円未満の人も20.1%いました。
「資金が少なくても起業したい」と考えているなら、個人事業主として始めれば費用を最小限に抑えられます。資金や目的に合わせて、法人か個人事業主かを選ぶことで、起業後の経営も安定して進められます。
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執筆:ベンチャー.jp編集部
この記事の情報は2026年10月7日時点のものです。
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