株式会社ベター・プレイス 代表取締役社長 森本 新士

「ビジネスを通じて、子育て世代と子どもたちが希望を持てる社会をつくる。」を会社のミッションに掲げる、株式会社ベター・プレイス。中小企業で働く方の「お金の心配」をなくし「自分らしく働ける」社会をつくるため、「はぐくみ企業年金」を中心とした様々なサービスで、将来の資産形成をサポートしています。今回は代表取締役社長の森本新士氏に、起業したきっかけや仕事におけるこだわり、今後の展望などについてインタビューしました。

 

社会を支える人たちのお金の心配をなくしたい

事業の内容をお聞かせください。

「福祉はぐくみ企業年金基金(以下、はぐくみ企業年金)」を中心に、企業年金・退職金制度の導入・設計のサポートを行っています。「はぐくみ企業年金」は、主に福祉業界で働く方が、安心して将来の資産形成ができることを目指して、国の法律に基づき設立した企業年金制度です。スマホひとつで手軽に、税制優遇を受けながら将来の資産形成が行える点が評価され、福祉業界だけではなく全国の中小企業で導入が相次いでおり、基金設立5年半で、加入事業所数1,694、加入者数50,189人(2023年10月現在)と、加入事業社数および加入者数ともに急増しています。

 

もともと私は中小企業で働く方々に企業年金の恩恵を享受いただきたいと考え、「はぐくみ企業年金」を立ち上げました。ご存じない方のほうが多いと思うのですが、企業年金というのは金融商品のなかで最もパワフルな資産形成ツールなんですよ。

 

現在、日本には750基金ほど企業年金基金があるのですが、そのほとんどは大企業向けです。

 

なぜなら企業年金を運営するためには、莫大なコストがかかるからです。企業年金の為の専門会社をつくり、そこで事務手続きを行う人を何人も抱え、財務状況や資産の管理を、監査法人をはじめとした専門機関にチェックしてもらうのに多額のお金がかかるのです。みなさんの虎の子の退職金や年金を預かるのが企業年金基金なので、安心安全の運営ができるのは結果として大企業ばかりということです。

 

ですが本来、退職金とか企業年金が充実していない中小企業で働く方々こそ将来の資産形成が必要であり、そこで働く方々向けの福利厚生や資産形成支援を目的として、「はぐくみ企業年金」の導入推進をサポートしているのが当社の大きな特徴です。

 

実際に、お客様の法人約1,500社のうち9割以上が中小企業です。従業員数10名未満の中小零細企業も3分の1ぐらいあります。そのような中小・零細企業が相乗りで集まり、それらの会社単体では難しい年金運営や資産運用などを、「はぐくみ企業年金」が代わりに行っています。

 

また保育や介護など、福祉業界で働く方々を念頭において設立したので、企業年金で初めて、休職時や育児・介護休業時にも積立金を受け取れるようにしました。この点もユニークなつくりになっています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

保険代理店を経営している知人の影響で、保険会社に就職しました。給与の面では比較的恵まれていたと思います。その保険会社に勤めていた20代なかばの頃ですが、弟が自己破産しました。実家が酒屋をやっていたのですが、事業がうまくいかず、保証人になっていた弟がそのあおりを食らった為です。

 

いまとなってはもう、彼も普通の暮らしをしていますが、当時はとても苦労していました。その姿を目の当たりにした時、同じ兄弟なのに何もしてやれないという痛恨の想いを抱きました。

 

それがきっかけで、普通の暮らしをしている方々がお金の心配なく仕事ができる世界をつくるお手伝いをしたいというのが、起業のきっかけです。

 

世の中に役に立つことで、お金を稼ぐ

仕事におけるこだわりを教えてください。

会社の行動指針にも掲げている経済と道徳の両立です。「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である。」という二宮尊徳の名言がありますが、正しく稼ぎ続けるからこそ、世界をより良くしていける。を大事にしています。

 

仕事は世の中に必要とされればお金を得られる。でも、どうせ仕事をするなら世の中がよくなることをしたいと強く思っています。

 

例えば、当社が提供する企業年金を通じて、お金に余裕がない方でも、将来の安心を手に入れられる、その企業年金が大きくなれば、我々も堂々とお金を稼ぐことができる。この両立が大事だと思っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください。

これまでに二度起業しています。一度目は2007年です。1億5,000万円近い資本金を集め、資産運用会社を立ち上げました。普通、運用会社といえば大手の金融機関が作った運用会社しかありません。自分は、とある理由があって独立系の運用会社を立ち上げたのですが、そんな信頼も実績もない独立系の会社が国から認可を取るのは本当に大変で、認可取得までに1年以上を要しました。

 

でも結局、その会社では運用資金が全然集まらなくて、設立二年で会社を追い出されました。信用と実績がない運用会社にお金が集まるほど、世間って甘くない。代表辞任を当時のファンドマネージャーから持ちかけられたとき、つらくてつらくて、ぽっかりと胸に穴が開いた気がして1週間で5キロ以上痩せました。実際にそのとき胃潰瘍になって胃に穴が開いてたんですけどね(笑)

 

二度目が2011年に立ち上げた当社ベター・プレイスです。懲りもせず、国の認可が必要な「はぐくみ企業年金」をつくって、この時も準備と認可取得に一年近くかかりました。

 

企業年金基金の認可を得る条件として、あらかじめ300名以上のお客様がいる必要がありました。サービスの提供前に300名集めるというのは、とても大変なことです。「これから企業年金をはじめるので、みなさんのお金を我々の運営する基金に託してもらえませんか?」と言って勧誘をしたものの、もし認可がもらえなかったらただの詐欺師になってしまいます。

 

結果としては66事業所1,705名の加入者を集め、無事に認可が下りた時には心から安堵しました。会社のスタッフや協力をしてくれた基金の理事の方々と手を取り合って喜んだのをいまでも鮮やかに憶えています。いま振り返ると、サラリーマンを辞めていきなり運用会社を立ち上げた一回目の失敗があり、7年以上かけて地道にお客様づくりをしてきて、その信頼と実績があったからこそできたことだと思います。

 

自分の人生をかけた目標

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私の原体験でしょうか。親の離婚や弟の自己破産など、お金の苦労を自分事として経験してきました。そういう原体験があるから、世の中でお金の心配なく暮らせる人を増やしたい。モチベーションというより、ライフワークですね。なんとかしたいという自分の人生をかけた目標があることで、進み続けられています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください。

子どもの貧困や老後の貧困をなくしていきたいです。日本では子どもの7人に1人が相対的貧困状態に置かれています。お母さんと子どもの2人とか3人家庭で、世帯年収175万円以下という状況です。また、老後の貧困だと、70歳以上の高齢女性のうち4人に1人が貧困状態に置かれています。大変なことですよね。

 

これらの貧困をなくすために、「はぐくみ企業年金」の規模を現在の5万人から10倍、100倍に増やしていきたいです。加入者が増えれば規模の経済が働きます。それが私たちの国の経済的困窮者の割合を減らすことにつながります。加入者が100万人になるのは、10年ぐらいで達成できそうかなという感触は得ていて、500万人ならあと20年ぐらいかなと考え始めたところです。

 

直感を信じて、自分を信じて、好きを貫け

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。

梅田望夫さんというアメリカ在住の経営コンサルタントが若い人たちに向けて発したメッセージが大好きです。

 

「直感を信じろ、自分を信じろ、好きを貫け、人を褒めろ、人の粗探ししてる暇があったら自分で何かやれ。」という言葉で、いまも大事にしています。

 

この名言を目にしたとき、自分はちょうど一度目の起業をしたときで、そのとき経営は本当に大変だった。しかし、そういう困難な時に、何が軸になるかというと自分の好きなことです。自分を信じて、好きであれば貫くことができる。結局その時の自分は失敗しましたが、いま形を変えて、サバイブしている。これは本当に大事だと思いますね。起業するにしても、何をするにしても、好きを貫き決してあきらめないことが成功するコツではないでしょうか。

 

あと最初から起業ではなく、経験を積んでからの独立でいいと思います。まず会社に入って、自分の専門性を確立していく。自分は10年近くサラリーマンだったので、いろんな経験を積みました。それがいまとても役に立っています。一度就職して世間を知って、それから会社を立ち上げるのでも、全然遅くないと思っています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:森本新士 氏

アリコジャパン、スカンディア生命を経て2007年に独立系の運用会社を起業するも、経営者としての経験不足とリーマンショックが相まってお金が集まらず、自ら設立した会社を追われる。痛恨の想いを糧に、2011年ベター・プレイス創業。2018年「福祉はぐくみ企業年金基金」設立。同基金は設立5年半で加入者数5万人・資産残高200億円を突破。

公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員、1級DCプランナー。

 

企業情報

法人名

株式会社ベター・プレイス

HP

https://bpcom.jp/

設立

2011年10月17日

事業内容

・企業年金DXシステム「はぐONE」の提供

・「福祉はぐくみ企業年金基金」退職年金制度導入設計・サポート

・企業型確定拠出年金導入設計・サポート

・福祉業界向けITシステム開発

沿革

2011年 10月 「株式会社ベター・プレイス」設立

2015年  3月 「確定拠出年金運用管理機関」に登録

2018年  4月 「福祉はぐくみ企業年金基金」 設立

2020年  1月  福岡支社(天神オフィス)を開設

2021年  4月  資本金 (資本準備金を含む) を 85,344,000円に増資

      6月  大阪支社 (大阪オフィス)を開設

     11月  東大IPC等を引受先とする第三者割当増資実施

2023年 2月 プライバシーマークを取得

    6月 東大IPC等を引受先とする第三者割当増資実施                      

    10月 「福祉はぐくみ企業年金基金」ブランドリニューアル

    10月 「福祉はぐくみ企業年金基金」 加入事業所数 1,694事業所、

       加入者数 50,000名突破

 

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