
「今年より来年が良くなると思っている人の割合が世界で一番多い国、インドネシア。その熱気の中で、ローンに通らないライドシェアドライバーたちに車を届け、移動のインフラを一から築いているのがmovus technologies株式会社です。代表取締役の酒井丈虎氏は、新卒で東南アジアの自動車ファイナンス事業に携わったことをきっかけに、2021年にインドネシアで創業。AIを活用した独自の与信審査で金融サービスの届かない層にアプローチし、現地ドライバーの間で最も知られるサービスへと成長を遂げました。今回は、新興国の課題解決に挑む酒井氏の事業と想いについて伺いました。
(酒井氏はインドネシアの民族衣装/正装であるバティックを着用)
弊社はインドネシアにおいて、ライドシェアのドライバー向けに自動車のサブスクリプションサービスを提供しています。インドネシアにはグラブやゴジェックといった、いわゆるインドネシア版Uberのようなライドシェアサービスがあり、グラブは時価総額2兆円規模のメガベンチャーとして、現地の生活インフラになっています。
首都ジャカルタは人口約4,000万人を抱え、東京を上回る世界最大級の都市です。しかし、東京では鉄道やバスなどの公共交通が約60%を担っているのに対して、ジャカルタではその分担率は約25%にとどまっており、自動車の保有率も10%未満と低い水準にあります。
この間の膨大な移動需要を支えているのがまさにライドシェアアプリであり、公共交通機能そのものを担っています。このように交通インフラが十分に整っていない状況のため、ライドシェアの需要は大きく伸び続けている一方で、ドライバーの供給が追いついていないという課題があります。
大きな理由は、車を手に入れるためのローンに通らない人が多いことです。インドネシアでは、銀行口座を持たない、あるいは十分な金融サービスを受けられない「アンバンクド層」「アンダーバンクド層」が一定数存在します。そのため、車の購入に必要な融資を受けられない人が多く、ドライバーになりたくてもなれない状況です。
インドネシアの平均月収が約2万円であるのに対し、ライドシェアのドライバーになれば月収10万〜20万円を稼げる可能性があるため、ドライバーを志望する人自体は非常に多いですが、車を用意できないという壁によって供給が不足しているのが現状です。
そこで弊社では独自の与信審査を行い、過去の実績ではなく未来の可能性を見ながら、従来の金融機関では対応できなかった方々に車を提供しています。決まった期間、お支払いいただければ車の所有権がご自身のものになる仕組みで、払い続けても自分のものにならないレンタカーとは構造的に異なります。

新卒で入社したGMSという会社が東南アジアで自動車ファイナンス事業を手掛けており、そこでインドネシアで働く機会をいただきました。現地で目の当たりにしたのは、まだまだソリューションが浸透していないという課題でした。
インドネシアで事業を始める事を決定づけた理由は大きく2つあります。1つ目は、経済成長から来る熱気と、人の優しさやポジティブさです。実はインドネシアは“今年より来年が良くなる”と思っている人の割合が世界で一番多く、日本はこのランキングの最下位です。この超ポジティブなインドネシアの方々と技術力のある日本人が融合すれば、いい事業が作れるのではないかと感じました。
2つ目はマクロ環境です。インドネシアは人口規模がありながら経済成長を続けており、さらに親日の度合いが極めて高いという特徴があります。日本車のシェアは90%で、「日本人です」と言うと「トヨタさんですか?ホンダさんですか?」と聞かれるほどです。
Netflixの影響で日本のコンテンツもタイムリーに届いており、現地メンバーから「今週のワンピース見た?」と話題になることもあります。人口が大きく、経済が伸び、親日であるという3つが揃った土壌は、弊社にとって非常に事業のしやすい環境だと考えました。
とにかく大きなことを成し遂げたいという思いは、譲れない軸としてあります。インドネシアのGDPは現在約1兆ドルで、これは1980年の日本と同じ規模感です。当時の日本から生まれたソフトバンクが今や世界を代表する企業になったように、2050年には日本を超えて世界第4位の経済大国になると言われています。
そんな成長スケールの大きいインドネシアという地で、弊社は長い時間軸をかけて、東南アジアにおけるソフトバンクのような会社を作りたいと考えています。それが私のこだわりであり、大志です。
大きなことを成し遂げたいというこの思いの原体験は、小さい頃に読んだエジソンやライト兄弟の伝記、司馬遼太郎の『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』といった歴史小説からグローバルに大志を遂げる姿に憧れたことです。
そして中学時代に学校で税金の勉強に取り組み、仕組みを変えることでより多くの人を支援したいと思ったことです。当時は内閣総理大臣になりたいと考えていましたが、その根底にある“大きな仕組みで社会を変えたい”というモチベーションは今も変わっていません。

やはり異文化の壁を越えて、現地のメンバーと一つのチームを作ることが最大のチャレンジでした。日本の当たり前が現地では当たり前ではない場面が多々あります。
例えばインドネシアでは1〜2年でジョブを変えるのが一般的で、日本のような終身雇用の感覚はありません。そうした前提の中で、どう組織を設計し、どうすればメンバーにより長く活躍してもらえるかを試行錯誤してきました。
効果的だったのは、頑張ってくれた人をしっかりとリワードし、エンゲージメントを高めていく施策です。リーダークラスには四半期から半年に一度のオフサイトミーティングを実施し、会社の方向性を共有しています。
また、インドネシアではまだAIの活用が進んでいない中、弊社ではメンバーにAIの使い方を積極的にフィードバックしており、自らAIを活用して事業をアップデートしてくれるようになりました。入社から育成、評価まで一貫したHR施策を通じて、会社全体のエンゲージメントを高めています。
これからのインドネシアというエマージングマーケットにおいて、新しい産業や国のグランドデザインを自分たちで作っていけるという醍醐味を感じながらやらせてもらっています。
日本は離れてみると本当にいい国だと改めて思いますが、起業家という観点では成熟した産業が多いことも事実です。一方でインドネシアにはまだまだ未整備なシステムやインフラがあり、それを1から作っていける面白さがあります。
インドネシアが日本を超えて世界4位の経済大国になると言われる2050年まであと約25年です。そのタイミングまでしっかりと会社を成長させ続け、自分もインドネシアにいたら、どんな未来になっているのかと想像します。それを見届けるだけでなく、自分たちでそこを作っていくという楽しさがあります。長い時間軸をかけて事業運営をしていきたいと考えています。

1つでも多くの課題をエマージングマーケットで解決し、より多くの人が不安を感じることなく幸せに過ごせる社会を作っていきたいと思っています。車やモビリティ、ファイナンスの領域にもまだまだ課題は山積みですし、現地に行くと「これも解決してあげたい」「こうすればもっと良くなるのに」と感じることが多くあります。
弊社では現在、エンジニア、ビズデブ、プロダクトマネージャーを中心に採用を行っています。理想の人物像は、「会社のメンバーで無人島に漂流しても、一緒に生き残れる人」です。ポジティブに明日を信じるマインドセット、頭を使って最善の方法を考える力、そして実行力です。
新興国での生活や事業に耐え得る心身のタフネスと、新しい環境で知的好奇心を持って学び続けられる方をお待ちしています。エンジニアは日本勤務ですが、それ以外は基本的にインドネシア駐在となります。もちろん、海外勤務いただくエンジニアの方は歓迎しますし、基本的に皆さん出張でインドネシアに来ていただく機会があります。
課題を解決し、それをより多くの方に届けていくことは非常に意義のあることです。どこの国であろうと課題がある中で、それを解決していくのがアントレプレナーシップだと思っています。私自身もまだまだ現役の起業家として、一緒に課題を1つでも多く解決し、より良い世界や社会を作っていきたいと思っています。
また海外で起業する場合は、共同創業者の存在が非常に大きいです。私は慶應の体育会硬式野球部で同期だった北口と共同で創業しました。インドネシアに来るまでの1年半はルームシェアどころかベッドシェアの生活を送りながら、朝から晩まで事業に向き合いました。海外では無条件に背中を預けられる相手がいることが、何よりも心強いと感じました。共同創業者は海外起業における必須条件だと感じています。

大学在学中に、GoodfindやFastGrowを運営するスローガン株式会社で長期インターンシップ事業の立ち上げを経験。大学卒業後は、GMSに入社し、金融機関や、自動車メーカー・ディーラー、モビリティプラットフォームとの提携を実現。2020年からはソフトバンク株式会社の事業戦略統括部にて、PL予実管理及び経営層向け戦略の立案に従事。2021年にmovus technologiesを創業。
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法人名 |
movus technologies株式会社 |
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HP |
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設立 |
2021年2月15日 |
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事業内容 |
自動車のサブスクリプションサービス |
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