株式会社ベストコ 代表取締役社長 井関 大介

小中高生向けの個別指導学習塾を地方に144教室展開する株式会社ベストコは、教育の成果を定量的に把握する独自のモデルで成績向上の再現性を高め、少子化が進む地方に持続可能な教育の場を残すことを使命としています。今回は代表取締役社長・井関大介氏に、独自の教育方針や逆境を乗り越えてきた経緯、そして全国500教室を目指す展望について伺いました。

1回転より2回転。進度管理と徹底したオペレーション化が生む、再現性の高い学習モデル

事業の内容をお聞かせください。

弊社は地方の小中高生を対象に、地域に根ざした個別指導の学習塾「ベスト個別」を運営しています。講師が対面で教えるという塾の原点を大切にしつつ、アプリケーションやオンライン学習といったエドテックを積極的に融合させたハイブリッド型の学習スタイルが大きな特徴です。

 

弊社が最も重視しているのは、徹底的な進度管理と学習量の定量管理です。1回のアクションで完璧に理解することよりも、定期テストまでにテスト範囲のテキストを何回転勉強できるかということに主眼を置いています。

 

1回で80点を目指すより、2回繰り返すことで長期的な定着率は大きく伸びます。1回の授業の7〜8割は生徒自身がアウトプットする時間で、講義の時間と相対的にアウトプットの時間の確保を重要視しています。

 

教室の立地にもこだわりがあります。駅前の一等地ではなく、子どもたちが自宅から徒歩や自転車で通える家のそばに、小規模な教室を多数展開しています。また、授業の進め方から講師の研修、ロールプレイングを経て指導デビューするまでの流れにいたるまで、すべての教務・運営プロセスをオペレーション化しパッケージに落とし込んでいます。

 

これにより、講師の負担を最小限に抑えながら、どの教室でも高い学習効果を安定して再現できる仕組みを整えています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

大学生のアルバイト時代から教育に関わり、目の前の生徒の成績を上げたいという思いからスタートしました。集団学習塾での経験を経て、2009年に事業をスピンオフする形で福島で創業しました。

 

転機となったのは2011年の東日本大震災です。当時34歳で、創業2年目、教室数は12〜13校ほどでした。放射能の影響で子どもたちが外で自由に遊べないなど、日常が失われた異常事態の中、こんな時だからこそ前を向こうとアドレナリンが出て、逆に10店舗を一気に出店しました。壊れたものを直して進む、ある意味で前向きなエネルギーがあったからこそできた判断でした。

 

震災の後、東京のビジネススクールで学ぶ機会があり、東京と地方の子どもたちの学習環境の差・情報量の差を体感しました。経済格差以上に教育格差は大きく、少子化で地方の塾がどんどん閉鎖に追い込まれていく現実を目の当たりにして、地方の教育インフラを残すことが自分のやるべきことだという思いが少しずつ育っていきました。

 

元々そんなに高い志を持って始めたわけではなく、目の前のことに向き合いながら視野が自然と広がっていった、というのが正直なところです。

 

行動を褒め、信頼関係を築く。卒業生が遊びに来る塾が体現する、「もうひとつの学校」

仕事におけるこだわりを教えてください。

勉強が苦手な状態でスタートするお子さんも多いので、弊社は問題に正解したかどうかという正誤よりも、その前の時点での行動を徹底的に褒めることを大切にしています。宿題をやってきたこと、そして今日も塾に来てくれたこと。そうした行動そのものを承認し、子どもたちの自己肯定感を高めていくことが弊社の教育方針の核心です。

 

80分の授業の中に、意図的に5分以上の雑談の時間を設けています。先生と生徒の間に信頼関係を築くことで、子どもたちが「ここが分からないと」素直に言える心理的な安全性を生み出すためです。分からないことを言いやすい環境があって初めて、質の高い学びが生まれます。

 

こうした積み重ねの結果として、卒業生がよく教室に遊びに来てくれます。「美容師になって髪が切れるようになったから先生の髪を切りにきた」「格闘家としてデビューしたから試合を観にきてほしいと」、そんな風に近況を報告しにきてくれることが、弊社が目指す姿を体現していると思っています。チェーン展開の中でもこうした温かい関係性が息づいていることが、弊社の誇りです。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください。

震災はアドレナリンと前向きなエネルギーで乗り越えられましたが、コロナ禍は全く異なる苦しみでした。教室数が約100店舗に拡大していた時期に、対面でのコミュニケーションや三密が完全に否定され、ディフェンスに徹せざるを得なくなりました。

 

復興とは違い、先が見えないまま守り続けるしかない状況で、弊社の強みであるコミュニケーションが活かせないことによって初めて多くの離職者を出してしまいました。正直、どうしていいか分からない2年間でした。

 

転機をもたらしてくれたのは、信頼できるマーケターの方のアドバイスでした。こういう時期だからこそ、自分たちが未来に何を成すべきか見つめ直すべきだという言葉に背中を押され、資金的に苦しいその時期にあえて社名変更を含む大規模なリブランディングを行い、全教室の看板を掛け替えました。

 

この挑戦を通じて、弊社のコアは子どもたちと深く関わりその人生を応援するという原点に立ち返ることができました。それまで経営理念しかなかったところに「B with you 君のベストをつくる」という企業理念を構築し、組織の絆が深まりました。

 

この危機を契機に再び力強い成長フェーズへと戻ることができたのです。逆境の中で見つめ直すことができたのが、今のベストコを作っていると思っています。

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

使命感に燃えてというよりは、目の前の課題に実直に対応し続けていたら今日に至ったという感覚が正直なところです。周りのスタッフ、社員のエンゲージメントがとにかく高くて、みんなが同じ方向に向かって熱量を持って動いているので、私自身もその中にいると自然と頑張れます。

 

最初は目の前の生徒を喜ばせたいという小さな一歩から始まりました。それが一緒に働く仲間のため、地方の子どもたちのため、地方の教育インフラを守るためへと、環境の変化や出会った方々に支えられながら、志が自然と大きく広がっていきました。

 

これからも、この地続きの物語の中で仲間たちとともに一歩一歩進んでいきたいと思っています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください。

「Growth 500」というビジョンを掲げており、日本全国の地方に500教室を作ることを目指しています。弊社が目指すのは、受験対策だけをする場所ではなく、子どもたちがいつでも帰ってこられる「もうひとつの学校」であり、地域社会や企業と子どもたちを繋ぐ温かいコミュニティです。

 

500教室を実現していく中で構想しているのが、現在親会社であるユナイテッド社とともに推進している完全自社開発の学習プラットフォームを、将来的に地域の魅力的な企業のストーリーを子どもたちに届けるキャリア教育メディアへと進化させることです。

 

例えば、建設業と言われてもピンとこなくても、宇宙エレベーターを作っている会社と言われたらワクワクしますよね。企業の物語を届けることで、地元で働く選択肢が見えてきます。

 

地方創生がなかなかうまくいかない最大の理由は、優秀な人材が残らないことだと言われています。弊社が自治体や地元のユニークな企業と深く繋がり、子どもたちと地域社会を結ぶハブになることで、地方における豊かな人材の循環を生み出していきたいと考えています。順調にいけば3年以内にサービスとして形にしていく予定です。

 

起業に特殊な能力はいらない。応援してくれる人が、世の中には必ずいる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。

特殊な能力がなくても起業できます。私自身、地方の国立大学で学校の先生を目指すくらいの感覚から起業しています。

 

一番お伝えしたいのは、素晴らしい人ほど教えてくれて、応援してくれるということです。やりたいことがあって動き始めると、想像以上に手を差し伸べてくれる人が世の中にいます。

 

弊社も直面したコロナという最大の壁の時も、マーケターの方の支援が会社を救いました。社会に出てから出会ってきた素晴らしい方々が、今の私の視野を作ってくれています。社会には応援してくれる人はいるから、やりたいことがあったらとりあえずやってみたら良いと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:井関 大介氏

1975年秋田県大仙市生まれ。大学卒業後、集団学習塾にて教育現場を経験。2009年株式会社Global assist(現・株式会社ベストコ)を創業。現在は山形・宮城・福島・栃木・群馬・埼玉・岡山・広島・香川で144教室を展開。

企業情報

法人名

株式会社ベストコ

HP

https://bestco.jp/

設立

2009年5月

事業内容

  • 学習塾事業
  • 学習アプリ事業
  • 調査・研究事業
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