
夜空に無数のドローンが舞い上がり、文字やキャラクター、ときには企業のロゴまでもが光で描き出される。そんな「ドローンショー」を企画から制作・運営まで一気通貫で手がけ、国内最大規模のドローンショー事業を行うのが、株式会社レッドクリフです。自社で6500台以上の機体を保有し、2025年の大阪・関西万博では連日のショーを担当しました。代表の佐々木孔明氏は、大学を休学してドローンとともに世界一周をした経験を契機に同社を創業。今回は、事業の全体像から創業の経緯、譲れない軸、そして「空の総合エンタメ」という野望まで伺いました。
私たちは、数百台から数千台のドローンを夜空に飛ばし、文字や立体的なキャラクター、ロゴなどを光で描き出すドローンショーを、企画から制作・運営まで手がけている会社です。事業は大きく二つの柱に分かれます。
一つは空を使った広告代理店事業、もう一つはドローン飛行をショーとして楽しんでいただくエンターテインメント事業です。ご相談いただく案件のうち、半数以上は広告コンテンツとなっていて、誰もが思わず見上げる夜空を新しい広告メディアとして捉え、ショーを展開しています。
機体は用途に応じて大きく4種類を使い分けています。屋外でのドローンショーに特化した大型LED搭載機、花火やレーザー、スモークなどLED以外のアタッチメントに交換できるカスタマイズ機、屋内でのショーに対応したインドア用機体、そして教育・プログラミング体験向けの機体です。これらのドローンを空中に敷き詰め、巨大なスクリーンを作ることで、文字や立体的なキャラクター、さらにはQRコードまで空に描くことができます。
実際に夜空へQRコードを表示すると、多くの観客が思わずスマートフォンを向けて読み取ってくださることがあります。以前、食品メーカーの広告として3Dのソーセージを夜空に描いた際には、Xのトレンドで1位を獲得するほど大きな反響を呼びました。一般的な広告は、時には煩わしく感じられたり敬遠されたりしがちな側面もあります。
一方、ドローンショーを活用した広告は、観客が自ら撮影し、SNSで共有したくなるような魅力があるのではないでしょうか。広告でありながら、体験として楽しんでもらえる点が大きな特徴です。私は、これまでの常識を覆す、まったく新しい広告のかたちだと考えています。
大阪・関西万博では、会期中連夜行われたドローンショーを担当し、万博のなかでも最も多くの方にご覧いただいたコンテンツの一つになりました。ドローンショーは予約も行列も不要で、決まった時間に空を見上げれば誰もが楽しめます。ショーが始まると、会場中の人々がいっせいに夜空を見上げ、その場にいる全員が同じ体験を共有する――そんな光景は、私たちにとっても忘れられない思い出です。
広告のご依頼は、企業の周年記念や商業施設の開業セレモニー、新製品の発表など「話題を生み出したい」という節目に多くいただきます。夜空を舞台にした演出は人々の記憶に残りやすく、SNSでも自然と拡散されやすいため、企業やブランドのメッセージを広く届ける手法として高い効果を発揮します。
弊社では、大規模かつ複雑な案件や高度なデザインが求められるプロジェクトに対応するため、プロデューサー、アニメーター、オペレーションの3チーム体制を構築しています。プロデューサーチームには制作会社や広告代理店出身者が在籍し、大規模案件の企画・進行を担当します。ゲーム業界や建設業界出身者で構成されるアニメーターチームは、3DCGソフトを用いて夜空を彩る演出をデザインします。
そしてオペレーションチームが、安全な飛行や機体のメンテナンス、演出技術の開発を担っています。これら3チームを、バックオフィスが全面的に支える体制です。また、日本最多となる6500台以上の自社機体を倉庫で一括管理し、案件ごとに全国へトラックで輸送しています。さらに、人目につかない場所にあるテストフィールドで本番前にクライアントの皆様に演出をご確認いただける点も、大きな強みとなっています。
このほか、花火大会やお祭り、スポーツイベントなど人が集まる場を「空のメディア枠」と捉え、イベント主催者側から費用をいただかずに広告を展開する協賛事業も行っています。すでに集客も音響も警備体制が整っている場で実施できるため、大規模な告知を行わなくても数十万人にご覧いただける人気の高いメニューです。
さらに、ドローンショーは夜間の開催が中心となるため、日中は教育事業にも取り組んでいます。親子向けのドローン体験やブロックを組み立てるような感覚で簡単にプログラミングを学べる体験を提供しているほか、小中学校・高校・高専への出張授業では、ドローンの仕組みや産業活用の解説から実飛行までをひとつのパッケージとしてお届けしています。
近年、ドローンショーへのお問い合わせが急増しており、弊社だけでは対応しきれないほど需要が拡大しています。一方で、ドローンショーは地方創生に非常に有効なコンテンツであるものの、高単価な商材でもあります。特に、機体の輸送費やスタッフの宿泊費などがかさむことで、地方で開催する場合はコストが高くなってしまうという課題も発生しています。
そこで弊社では全国各地の企業と連携するパートナー制度を導入し、北海道や静岡をはじめとする地域のパートナー企業に100〜300台の機体を保有していただいています。案件の相互紹介や機体の貸し借りを行うことで、輸送コストや運営コストを大幅に抑えています。この仕組みによって、地方でもドローンショーを開催しやすくなり、持続可能な形で地域活性化に貢献できていると感じています。


もともと新しいガジェットが好きだった私は、約10年前にアクションカメラや360度カメラが登場したのをきっかけに、カメラドローンに出会い、個人でも手軽に空撮ができる点に強く惹かれました。これがちょうど大学を2年間休学し世界一周を計画していた時期と重なり、バックパックとドローンバッグを携え世界一周の旅へと出発しました。
旅を終えて休学期間も終盤に差し掛かる頃には、それまで目指していた建築士ではなく、ドローンを仕事にしたいと考えるようになっていました。建築士は将来でも目指せる一方で、ドローン業界はこれから大きく成長していくタイミングでした。「挑戦するなら今しかない」と感じ、まずはドローンの世界に飛び込むことを決意したのです。
そんな折、世界最大手のドローンメーカーであるDJIが日本1号店をオープンすることを知り、オープニングスタッフに応募しました。そこで働く中で、ドローンが農薬散布や物流、人命救助、測量など、さまざまな産業へ広がっていく可能性を目の当たりにしました。その将来性に大きな確信を抱き、復学を予定していた大学を退学し、正社員としてインストラクター業務や空撮、企業への導入支援に約2年間没頭しました。
その後、最もやりがいを感じていた空撮で独立を決意し、テレビや映画、MV、ゴルフ場などの撮影を2年ほど手がけました。
転機となったのは2019年です。海外チームが手がける国内の大規模ドローンショーの空撮を担当した際、それまで「撮る側」だったドローンが、「見られる側」にもなり得ることを知りました。空に描かれる演出に大きな可能性を感じたものの、当時は10分程度のショーに数千万円もの費用がかかる時代でした。巨大イベントでしか成立しないビジネスだと判断し、その時点では参入を見送りました。
本当の意味での転機が訪れたのはコロナ禍です。観光で訪れたドバイで、日常的に開催されているドローンショーを目の当たりにしました。観光コンテンツの一部として企業ロゴやメッセージが夜空に描かれ、その映像がSNSで次々と拡散されていく光景に大きな衝撃を受けました。
その瞬間、「これは空の広告媒体として成立する」と確信しました。ロゴや文字などを空に描くためには、最低でも300台規模のドローンが必要です。私はすぐに資金調達へ動き、300台によるドローンショー事業をスタートさせました。
その取り組みは予想以上の反響をいただき、事業は順調に拡大していきました。現在では保有機体数は6,500台にまで増え、大阪・関西万博では会期中連夜開催されたドローンショーを担当するなど、多くのプロジェクトを手掛けるまでになりました。

挑戦し続けることです。同じことを繰り返さず、私たちにしかできない演出をつくり続けること。それこそが、私たちのミッションである「夜空に、驚きと感動を。」につながっていると考えています。
レッドクリフには、「他社ができることはやらない。むしろ、他社ができないことに挑戦する」という文化があります。これまでに多くのチャレンジをしてきました。たとえばドローンに花火を搭載する演出では、機体の設計から安全管理、関係法規への対応など、数え切れないほどの課題が立ちはだかります。それでもあえて挑むのは、誰にでもできることをやるだけでは、私たちが存在する意味はないと考えているからです。
むしろ課題が多いことこそが、私たちにとっての強みだと捉えています。独自の演出は難しさの先にしか生まれません。花火やスモーク、レーザーといった新しい仕掛けも、国内では誰も手をつけていないからこそ、実現できたときに「レッドクリフにしかできない」と言ってもらえるのです。驚きと感動を届け続けるために、これからも他社が二の足を踏む領域へ自ら挑み続けていきたいと思っています。
正直に言えば、ずっと壁です。最初の資金調達も、初めてのショーも本当に大変でしたし、あまりに新しい事業だったので、参考にできる情報が国内にはほとんどありませんでした。そのため、海外のショーを視察し、現地で見聞きしたことを一つひとつ持ち帰りながら、手探りで事業を形にしてきました。
そしていまも、花火やスモークなど、国内ではまだ誰もやったことのない演出への挑戦を続けています。言い換えれば、壁は誰かに与えられるものではなく、自分たちで作り続けるものです。一つ乗り越えればまた次の目標を掲げる。その繰り返しのなかで会社は前に進んできました。今後は海外展開という、これまでで最も大きな挑戦にも果敢に挑んでいこうと考えています。

観客のみなさんに驚きと感動を届けること。それこそが、レッドクリフのいちばんの原動力です。おもしろいことに、ショーをつくっている私たち自身も、本番のたびに心を動かされています。何度もリハーサルを重ねた演出であっても、いざ本番で夜空にあの光景が広がると、やはり胸が高鳴ります。その感動があるからこそ、「次はもっと良いものを届けたい」という気持ちが湧いてくるのです。
そして、ショーが終わるとSNSには空を見上げた方々の感想や写真、動画が次々と投稿されます。本番を成功させた日の夜、それらを眺めている時間は、私にとっては何よりの楽しみです。観客のみなさんの笑顔や喜びがダイレクトに伝わってくるたびに、この仕事を選んでよかったと心から思います。そして、その一つひとつの声が、また次の挑戦へ踏み出す力になっています。
短期的な展望は海外への挑戦です。今年はすでにタイでショーを実施しました。そして中長期で描いているのは、ドローンショー専用の常設劇場、いわば屋外シアターをつくることです。これまでドローンショーは特別なイベントや記念日に開催されることが一般的でした。
しかし、将来的にはいつ訪れても最高のショーに出会える場所をつくり、空を舞台にした総合エンターテインメントを実現したいと考えています。チームラボやシルク・ドゥ・ソレイユのように、「ここに行けば最高のエンターテインメントが体験できる」と、多くの方に認識していただける存在を目指しています。
さらに、その常設劇場を日本を代表する観光コンテンツへ育て、日本が誇るアニメやゲーム、キャラクターなどのIPコンテンツと組み合わせることで、世界へ発信していきたいと考えています。花火、ドローン、スクリーン、レーザー、特殊効果を自在に融合させ、これまでのBtoB中心の事業に加え、入場料をいただくBtoCの領域へも挑戦していくつもりです。
こうした構想を描けるのは、これまで積み重ねてきた運営実績があるからです。大阪・関西万博では会期中連夜1,000機規模のドローンショーを担当し、約半年間で14万機を超えるドローンを飛行させました。この経験を礎に、日本発のドローンエンターテインメントを世界へ広げていきたいと考えています。
大切なのは、他人がやらないことに挑戦することです。それがそのまま差別化になります。そのうえで意識してほしいのは、時代の流れとを自分の強みと掛け合わせるという視点です。今であればAI、少し前であればSaaSが、その代表例でした。流れに乗ること自体は誰にでもできますが、それだけでは埋もれてしまいます。
たとえば、単にAIを活用する会社は数多く存在します。しかし、AIを使って自分たちならではの価値をさらに高めることができれば、他社とは異なるポジションを築くことができます。重要なのは、流行そのものではなく、自分の強みとの組み合わせです。
私たち自身も、ドローンは軍事分野への活用が注目されるなか、あえてエンターテインメントの道を選びました。自分にしかない強みと時代の追い風を掛け合わせれば、まだ誰も立っていない場所を切り拓くことができるはずです。
1994年12月、秋田県秋田市生まれ。関東学院大学 建築・環境学部在学中に、ドローンを携えて世界一周の旅に出る。帰国後、世界最大手ドローンメーカーDJIの日本一号店オープニングスタッフとして、販売・講習・空撮を担当。2019年5月、株式会社レッドクリフを設立。海外企業のドローンショー空撮をきっかけに世界各地のドローンショーを視察し、2021年より国内最大規模のドローンショーの企画・運営を開始。大規模ドローンショーに強みを持ち、国内業界を牽引する。2024年8月、Forbes JAPAN「30 UNDER 30 2024」に選出。日本テレビ「シューイチ」、TBS「ワイドナショー」など、メディアへの出演も多数。
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法人名 |
株式会社レッドクリフ(REDCLIFF, Inc.) |
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HP |
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設立 |
2019年5月15日 |
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事業内容 |
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