
株式会社クウゼンは、企業と顧客のコミュニケーションを最適化し、顧客体験の向上を支援するプラットフォーム「クウゼン(KUZEN)」を開発・提供しています。マーケティングのノウハウと開発力を併せ持ち、顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズ配信までを伴走支援できる点が強みです。今回は、代表取締役CEOである太田匠吾氏に、世界で注目される対話自動化領域へ先行参入した意思決定や、10年間事業を続けてこられたモチベーションについて伺いました。
当社は2016年に創業し、企業と顧客のコミュニケーションを最適化し、顧客体験の向上を支援するプラットフォーム「クウゼン(KUZEN)」を提供しています。
事業は大きく分けて、LINEマーケティング支援、LINEミニアプリ、AIエージェント、AIチャットボットの4つを展開しています。
主力事業であるLINEマーケティング支援は、主にBtoC企業向けのサービスです。人材紹介会社や不動産会社、ヘルスケア・化粧品などのD2C事業者、クリニック、中古品の買取・販売など、幅広い業界でご利用いただいています。
例えば人材紹介会社では、企業と転職希望者とのコミュニケーションをLINE上で自動化することで、転職意欲が高まったタイミングを逃さずアプローチし、最適な求人をスピーディーに紹介できるようになります。
こうしたサービスが求められる背景には、消費者とのコミュニケーション手段の変化があります。スマートフォンが普及し、知らない番号の電話に出る、Eメールを見るといった行動が減ってきました。一方で、日本ではLINEが生活インフラとして定着しており、企業にとっても顧客との重要な接点になっています。だからこそ、LINEを活用したコミュニケーションの価値が高まっていると考えています。
当社では、AIを活用したパーソナライズ配信にも力を入れています。一人ひとりの興味・関心や状況に合わせて最適なメッセージを配信し、返信内容に応じてコミュニケーションを変えていく仕組みです。
そのためには、ユーザーを深く理解することが欠かせません。お客様企業が同意のもとで取得されたWebサイトでの行動履歴やマイページの登録情報、チャットでのやり取りなど、複数のデータを組み合わせて活用しています。
必要となる情報は業界によって異なります。人材紹介であれば転職履歴や希望条件、不動産であれば住んでいるエリアや希望する物件条件などです。そのため、各業界に精通した専任コンサルタントが入り、取得すべきデータやコミュニケーション設計まで支援しています。
成果報酬型の案件では、成果につながる仕組みづくりまで伴走します。例えば化粧品会社であれば、商品の特徴やブランドイメージ、ターゲット層を丁寧にヒアリングし、それをもとにユーザージャーニーを設計します。一度で正解を導き出すのではなく、仮説検証を繰り返しながら成果を高めていくことが当社の強みです。
印象的な事例の一つが、長年ご利用いただいている学習塾です。公開テストへの申し込みをゴールに設定し、ホームページや広告から流入した見込み顧客へ最適なタイミングでLINE配信を行うことで、公開テストへの参加率を高め、その後の入塾につなげる仕組みを構築しています。
学習塾業界は、口コミやチラシといった従来の集客手法が長く主流だったこともあり、デジタルマーケティングに課題を抱える企業も少なくありません。当社は、「誰に、どのタイミングで、どのような情報を届けるべきか」というコミュニケーション設計まで含めて支援しています。
もう一つの柱が、LINEミニアプリです。
ネイティブアプリはダウンロードや継続利用のハードルがありますが、LINEミニアプリであれば、多くのユーザーが日常的に利用するLINE上で、アプリに近い体験を提供できます。
さらに、会員情報や購買履歴などの情報を蓄積できる点も大きな特徴です。LINEのトークは情報が流れていく「フロー型」ですが、ミニアプリは情報を蓄積する「ストック型」です。この2つを組み合わせることで、企業はより精度の高いマーケティングを実現でき、ユーザーも必要な情報へアクセスしやすくなります。
ミニアプリ市場では、開発のみを請け負う会社が多い一方で、当社はLINEマーケティングも手がけています。そのため、ストックした情報をマーケティングにどう活用するかまで設計できる点が大きな違いです。「アプリを作ったものの使われない」といった課題が起こりにくいのも、この強みがあるからです。
AIチャットボットは、当社が創業当初から提供してきたサービスです。当初はWebサイト上で問い合わせに自動回答する用途が中心でしたが、その後、問い合わせ対応だけでなく顧客一人ひとりに最適な体験を提供することに価値があると考え、マーケティングや顧客エンゲージメントの領域へと事業を発展させてきました。
その延長線上にあるのが、現在注力しているAIエージェントです。
AIエージェントは、単に質問へ回答するだけではありません。生成AIを活用し、ユーザーの意図まで理解した上で、その先の業務まで自動化します。
例えば、稟議書のテンプレートが欲しいという問い合わせがあった場合でも、稟議を申請したいという目的を理解し、必要事項を確認した上で実際の申請フローまで自動で進めることができます。
問い合わせへの回答だけで終わるのではなく、その先にある業務そのものを自動化することが、AIエージェントの大きな価値だと考えています。

起業を志したのは、大学時代までさかのぼります。2005年頃にアントレプレナーシップ道場へ参加したことが、一つの大きなきっかけでした。その経験を通じて、いつか自分で事業を立ち上げたいという思いを持つようになり、約10年後の2016年に起業しました。
当社は、私とCTOの2人で創業しました。ただ、最初から現在の事業を手がけていたわけではなく、当初は特許調査をクラウドソーシングで行うという、非常にニッチなサービスを展開していました。しかし、思うように事業が伸びず、ピボットを決断した結果、現在の事業へとたどり着きました。
新たな領域へ挑戦できた背景には、2016年という時代の追い風もありました。当時は「チャットボット元年」と呼ばれ、生成AIこそ存在していなかったものの、ディープラーニングを活用したAI技術が急速に注目を集め始めていました。
そんな中、大きな転機になったのがMessengerです。2016年に、世界で10億人以上が利用するMessenger上でチャットボットを動かせる仕組みが発表されました。それを見たとき、「これなら、まだ誰も実現していない新しい顧客体験をつくれるのではないか」と感じたことが、現在の事業の原点になっています。
もっとも、起業した理由を突き詰めると、私の中で最も大きなキーワードは成長です。
私は、人は誰しも人生をより良くしたいと考えていると思っています。そして私にとって、人生がより良くなるとは、自分自身が成長し続けている状態を指します。これまでできなかったことができるようになること、経験したことのない挑戦を重ねること、そして自分の成長を通じて周囲の人にも良い影響を与えられること。そうした積み重ねこそが、自分にとって最も価値のある人生だと考えています。
だからこそ、自ら事業を立ち上げ、挑戦を続けられる起業という道を選びました。事業そのものが目的というよりも、挑戦を通じて成長し続けることが、私にとっての原動力になっています。
私が起業を決めた最終的なきっかけが成長であったのと同じく、この会社も成長すべきだと考えています。そして何より、この会社で働く一人ひとりが成長を実感できることが、私にとって一番の喜びです。
私は、会社の成長と社員一人ひとりの成長は切り離せないものだと考えています。メンバーが成長し続ける組織であれば、自然とより良い仕事が生まれ、会社も成長していく。そして、成長を実感できることは、仕事だけでなく人生の充実にもつながるはずです。
そのため、社員一人ひとりが同じ方向を向いて挑戦できるよう、会社のビジョンやバリューを明確に定めています。単に経営理念として掲げるだけではなく、日々の意思決定や行動の指針として浸透させることで、メンバーが成長を実感できる組織づくりを目指しています。

最大の壁は、最初の事業からピボットしたときでした。ピボットするということは、創業者の火が消えかけている状態であり、やることが定まっていない状態が続くのは、今振り返ってもきつい経験でした。目標があればそこへ向かって努力できますが、目指す先そのものが見えない状態は精神的にも非常に厳しいものでした。
もともと最初は特許調査の事業を行なっていました。その際は、CTOがプロダクトをつくり、それが売れることでスタートアップとしてスケールするモデルを思い描いていました。ところが足元でやっていたのは、特許調査のクラウドソーシングのために2人で特許調査を続けることで、プロダクトづくりは一切できていませんでした。
そのとき、「自分たちが本当にやりたかったことはこれなのか」と強く感じました。スタートアップとして目指していた姿と、現実にやっていることが大きく乖離していると思ったのが、ピボットを決断したきっかけです。
ただ、事業を変えると決めたものの、次に何をやるかはまったく決まっていませんでした。そこで約1か月間、2人で徹底的に議論を重ねました。「自分たちが本当に得意なことは何か」「何にワクワクするのか」「長く続けられる事業なのか」「ビジネスとして成立するのか」「将来的に世界中で使われる可能性があるのか」といった軸で、ああでもないこうでもないと検討を重ね、ようやく今の事業を決めました。
ピボットを決断し、新しい事業をゼロから考え、実際に動き出すまでの期間は、創業以来もっとも苦しい時間でした。一方で、その経験があったからこそ、自分たちが本当に目指したいものを見つめ直し、今の事業へたどり着くことができたと感じています。
ピボット後の約10年間、ぶれずに事業を続けてこられた原動力は、常に高い目標を持ち続けてきたことだと思っています。
目指す場所がなければ、どこかで現状に満足してしまいます。起業家としては、それが小さくまとまることにつながりかねません。だからこそ、現状に満足せず、その先の景色を目指し続けることが、自分自身のモチベーションになっています。
もっとも、創業当初から大きなビジョンを強く掲げていたわけではありません。少人数の組織であれば、お互いの考えや目指す方向性は日々のコミュニケーションの中で自然と共有できていたからです。
しかし、組織が成長してメンバーが増えると、会社に入るタイミングやバックグラウンドもさまざまになります。さらに、営業や開発、マーケティングなど、それぞれの組織が異なる役割を担うようになると、なぜこの会社を始めたのか、何を大切にしているのかといった価値観は、放っておくと少しずつずれていきます。
だからこそ、組織が大きくなったタイミングで改めてビジョンを掲げることに意味があると考えています。実際、昨年の冬には会社のビジョンを改めて整理し直しました。組織の成長に合わせて、目指す方向性を言語化し、全員で共有する必要があると感じたからです。
一方で、大きなビジョンだけでは組織は動きません。遠い目標は日々の仕事とのつながりが見えづらく、何を目指しているのか分からないと感じてしまうこともあります。
そのため、私は大きな目標と同じくらい、小さなマイルストーンを積み重ねることを大切にしています。「今期はこの目標を達成しよう」「今年はここまで成長しよう」といった身近な目標を一つひとつ着実に達成していく。その積み重ねが、最終的に会社の大きなビジョンの実現につながると考えています。
今後やりたいことは、UNIQLOが世界中で着られている洋服屋であるように、世界中で使われているプロダクトを提供することです。
その実現に向けて、海外展開も視野に入れています。日本ではLINEが主流ですが、海外では国や地域によって利用されるコミュニケーションツールが異なります。そのため、LINEだけでなく、KakaoTalkやWhatsAppなど、各国で広く利用されているプラットフォームにも対応していきたいと考えています。
もちろん、その道のりは簡単ではありません。プラットフォームごとに提供されるAPIや機能が異なるため、それぞれに合わせた開発が必要になります。また、各国には独自の商習慣や文化があり、コミュニケーションのあり方も異なります。だからこそ、現地の文化やユーザー特性を理解したうえで、サービスをローカライズしていくことが重要だと考えています。
組織づくりの面では、現在採用を積極的に進めています。当社は創業以来、開発力を強みとして成長してきました。一方で、今後さらに事業を拡大していくためには、ビジネスサイドの体制強化が欠かせないと考えています。
特に求めているのは、顧客の課題を深く理解し、最適な提案を行いながら伴走できるフィールドセールスや事業開発のメンバーです。お客様ごとの課題を理解し、最先端の技術を活用しながら価値を生み出していける仲間と、一緒に事業を成長させていきたいと考えています。
働き方は、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッド型を取り入れており、割合としてはおおよそ週の半分が出社です。会議もオンラインを積極的に活用し、AIを使った業務効率化にも取り組むなど、生産性を重視した柔軟な働き方を実現しています。
ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご連絡お待ちしております。
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起業は、皆がした方がいいものだとは思っていません。したい人は何も言われなくても勝手にやりますし、したくない人は言われてもやらないものです。
そのうえで、私自身の個人的な経験から言えるのは、起業するなら早い方がいい ということです。
定年間際になっても20代の若者のように尖っていて、人の目を気にせず突き進める人は多くないと思います。若い頃特有の勢いや、社会を知らないからこそのモチベーションや社会への怒りは、年齢を重ねると持ちにくくなります。結婚や子育てなどさまざまな経験を積むことには良い面もありますが、一方でライフスタイルを大きく変えようとするときの障壁にもなり得ます。
だからこそ、もし起業したいという気持ちがあるのであれば、その挑戦は早い方がいいと考えています。若さゆえの勢いや行動力は、起業において大きなアドバンテージになると思います。
JPモルガン証券株式会社の投資銀行本部にてM&Aアドバイザリー業務に従事した後、株式会社産業革新機構(INCJ)にてスタートアップ企業への投資業務を経験。「対話の自動化が人の体験を劇的に変える未来」を信じ、2016年に株式会社クウゼンを創業し代表取締役CEOに就任。累計調達額は約28.8億円。日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社【2026年版】」に選出。創業11周年を機にコーポレートビジョンを「世界水準の企業を創る」に刷新。
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法人名 |
株式会社クウゼン |
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HP |
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創業 |
2016年 |
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事業内容 |
顧客エンゲージメントプラットフォームクウゼン(KUZEN)の開発、販売、運用 |
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