
株式会社UPFは、プライバシーマークやISMS、TISAXといった情報セキュリティ認証の取得を、規定づくりから運用の定着まで支援する完全伴走型のコンサルティング会社です。単に審査通過に必要な書類を作って終わりにせず、実務で回る状態まで無料サポートも交えて伴走する点が強みです。今回は、代表取締役である仲手川啓氏に、運用定着へのこだわりや、次の10年を見据えたAIガバナンスへの展望について伺いました。
プライバシーマーク(Pマーク)やISMS(ISO/IEC 27001)といった、情報セキュリティ・個人情報保護に関する認証の取得支援と、取得後の運用支援を行っています。創業以来の累計支援社数は5,500社を超えました(2026年8月現在)。近年はISO/IEC 27017、TISAX、PCI DSS、さらにAIマネジメントシステム(ISO/IEC 42001)、SCS評価制度へと領域を広げています。
ただ、私たちは単に「認証を取得するためだけの代行会社」とは一線を画したいと考えています。
経営者の方はご経験がある方も多いと思いますが、いま行政や大手企業と取引しようとすると、必ずと言っていいほどセキュリティチェックシートの提出を求められます。何十項目もある質問に答えられなければ、商談はそこで止まってしまいます。サービスの質を見ていただく前の、いわば「入場券」になっているのです。認証はゴールではなく、取引を広げるための手段です。
だからこそ私たちは、取得して終わりにしません。年に一度の更新、日々の記録、社員教育、内部監査、事故が起きたときの対応まで、社内の情報管理業務そのものを丸ごとお引き受けします。いわば「情報管理部門のアウトソーシング先」です。認証を取ることよりも、取った後もきちんと守れている状態をつくることに、価値の重心を置いています。

もともと実家が内装工事業を営んでいたこともあり、社会に出た最初の仕事は現場で身体を使って働いていました。
20代前半に地元の友人の紹介でフルコミッションのセールスの世界に入り、そこで初めて「成果がそのまま自分に返ってくる」という経験をしました。今の仕事観の原型は、あの数年で形づくられたと思います。
2005年、現在のUPFの前身となる「上野企画」として独立し、通販会社向けにデータベースマーケティングの支援とDM発送代行を行っていました。通販会社から何万件もの顧客データをお預かりし、分析やマーケティング、DM発送に活用する仕事です。つまり創業当初から、他人様の大切な個人情報を扱っていたことになります。
ちょうど同じ2005年に個人情報保護法が全面施行され、お客様から「うちは大丈夫なのか」というご相談が持ち込まれるようになりました。そこで私たち自身もPマークを取得したこともあり、その知見を活かしてお客様のPマーク取得や更新もお手伝いするようになりました。当時の私たちは、いわば「個人情報の管理まで面倒を見てくれるDM会社」でした。
当時そんなことまでやってくれる会社は私が知る限りはなかったため、そのサービスの強みが評判となり、業績もしだいに伸びていきました。そうやって日々、お客様の課題に向き合い、サービスを磨いていました。
やがて、お客様が本当に関心があるのはDMの発送代行そのものではないと認識するようになっていったのです。お客様の課題は「DM発送やデータ活用をするにあたり、情報をどう安全に扱うか」にあり、ご相談の内容も次第に情報管理やセキュリティへと移っていったのです。
そこで2011年、売上を生んでいたDM発送事業を手放し、事業の軸足を情報セキュリティコンサルティングへ完全に移しました。まったく違う世界に飛び移ったのではなく、同じ川のより深いところへ潜っていった感覚です。創業から20年あまり、私たちがやってきたことは一貫して「データ・情報を、どう安全に扱うか」でした。
学生の方にお伝えしたいのは、私は特別なスタートを切ったわけではないということです。学歴も資格もなく現場作業をしていた人間が、目の前のお客様の困りごとに真面目に応え続けた結果、いまの会社になりました。始まりは、それくらいで十分だと思っています。
最もこだわっているのは、「実務に落ちているか」ということです。
この業界には、ついつい審査通過のみに目が行き、立派な規程集をつくって納品して終わり、という仕事の仕方も存在します。しかし、書類が整っていることと、現場が実際に守れていることは、まったく別の話なのです。誰も読まない規程は、いざ事故が起きたときに何の役にも立ちません。私たちが見ているのは、お客様の現場で本当に運用が回るかどうかです。
もう一つのこだわりは、属人化させないことです。担当者の力量で品質が変わるサービスは、お客様にとってリスクでしかありません。担当者が入れ替わった瞬間に品質が変わる・落ちる会社は、信頼していただけないのです。
今まで累計5,500社(2026年8月時点)を支援し、常時数百社の新規取得や更新プロジェクトが進行しており、毎日どこかのお客様は現地審査を迎え、指摘事項を改善してます。その当社の知見と経験が蓄積し毎日のように最新版にアップデートされた「型」を標準化し、全員が使える状態にしています。
これは働く側にとっても意味があります。新卒や未経験で入った社員が、先輩の勘や根性に頼らず、型に沿って進めれば一定の水準に到達できる。個人の能力に頑張りに依存しすぎる組織は、実は一番人が育ちにくいんです。
実は、過去私たち自身も社員の離職やエース社員への依存で大変苦労した痛い経験から得た学びでもあります。
私の座右の銘は「期待はすれど、当てにはせず」です。冷たく聞こえるかもしれませんが、人を信じないという意味ではありません。人の善意や頑張りに頼りきった設計にしない、ということです。仕組みで支えるからこそ、安心して人に任せられると考えています。

最大の壁は、事業そのものではなく組織づくりでした。
数字が伸びていく一方で、任せていたはずの組織がうまく機能しなくなった時期がありました。いたるところにしわ寄せが発生し、幹部や重要ポジションを担う社員の急な離職も発生、新入社員の引き抜きや挙句の果てには横領紛いのことも起きる始末。
もう次から次に問題が発覚し、「今日は何が起きるのか」「今日は誰から離職の申し出があるか」、お客様へのご連絡が遅れるなど「今日はどんなクレームを受けるか」、、、と、眠れないほど苦しい毎日でした。
喜んでいただくはずのお客様を裏切っている感覚というのでしょうか。また、なにより残ってくれている社員に苦労や心配をかけてしまったことは今でも忘れられないことです。本当につらかったです。今でも彼らには一生をかけ償っていきたいと思っております。
振り返れば、原因は私が人に期待をかけすぎていたことだったと思います。優秀な人に任せれば組織は回る、想いを共有できていれば大丈夫だと、どこか安易に考えていたのです。
しかし、それは経営者として甘い考えでした。人は変わりますし、環境も変わります。個人の熱量に頼った組織は、その人がいなくなった瞬間に止まり、引継ぎ作業、リカバリー作業に追われる。当時は本当に自分の力不足を痛感しました。
そこから、組織のつくり方を抜本的に変えていきました。誰が担当しても同じ品質を保てる手順を整え、メンバーが抜けても業務に支障がでない体制をつくり、必要な情報やノウハウ、やり取り履歴を「前任の温度感までわかるレベル」で記録として残す仕組みも整えました。
地道な作業の積み重ねですが、現在正社員40数名、業務委託社員30数名の組織が安定して動いているのは、あの時期の反省を一つひとつ仕組みに変えてきたからだと思っています。
近い規模で成長に悩む経営者の方と話すと、多くが同じ壁に直面していると感じます。私自身にとっても、あの数年間は「組織を強く大きくするための経営の型」を学んだ時期でした。
大きく二つあります。
一つは、お客様の会社が変わる瞬間に立ち会えることです。「認証を取ったことで大手との取引が決まった」「入札に参加できるようになった」「損害が最小限で済んだ」というご報告を毎日のようにいただくことがあります。私たちがやっているのは裏方業務という一見地味な仕事ですが、その先でお客様の未来が変わる瞬間があるからこそ続けられています。
もう一つは、社員の成長です。入社時はまったくの未経験だったメンバーが、数年後にはお客様の役員会で堂々と説明している。20代の社員が、自分の親より年上の経営者から相談を受けている。そんな場面に立ち会うと、素直に嬉しいですね。会社をやっていて一番面白いのは、ここだと思っています。
この仕事は、若くても知識と型を身につければ、上場会社の経営層とも対等に話せるようになります。他の職種ではなかなかない環境だと思います。しかも、この領域には誰もが認める「基準」がまだできていません。それを自分たちの手でつくる余地が残っているというのは、やっていて相当楽しいです。

これから10年の最大のテーマは、AIガバナンスだと考えています。
いま多くの企業が、生成AIをどう業務に組み込むかで悩んでいます。ただ、それ以前に「どこまで使っていいのか」という判断基準を持てていません。20年ほど前、個人情報保護法ができたときに企業が直面した状況と、構図はほとんど同じです。
ITバブル後、ISMSが普及してきたときともそっくりです。あのとき私たちは、すでに個人情報管理を取り扱う立場にいたからこそ、早く動くことができました。AIについても、同じ位置に立てているという感覚があります。
すでにAIマネジメントシステム(ISO/IEC 42001)の認証取得支援と、社内AIガイドラインの策定支援を開始しました。サプライチェーン全体のセキュリティ評価(SCS評価制度)についてのご相談も増えており、扱う領域は着実に広がっています。
これは、今の時期に社会に出る若い世代にとってはまたとない運のいい状況だと思います。PマークやISMSなどのマネジメントシステムの世界には20年の蓄積があります。AIガバナンスは、まさに私たちが長年追求し続けてきたマネジメントシステム構築がいきる領域そのものです。
会社としては規模の拡大そのものを追っているわけではありません。情報の扱い方に迷ったとき「まずUPFに聞こう」と思っていただける存在になる。いわば”信頼の基準”になることです。そのために、実務の質を上げ続けていきます。規模やステージは“その結果として”自然と後からついてくるものだと考えております。
偉そうなことは言えませんが、経験シェアとして三つお伝えします。
一つ目は、勝てる場所を選ぶことです。事業の成否は、能力よりも「どこで戦うか」で決まる部分が大きいと思っています。私自身、売上を生んでいたDM発送事業を手放し、ご相談が集まっていた情報セキュリティー認証支援にすべてを寄せました。お客様が本当にお金を払いたいのはどちらか、ニーズの本質向き合うことができていたと思います。
しかも、当時すでに大手企業を中心に認証取得支援は飽和状態でした。しかし、中小企業や予算がとれない会社、担当者の手間を増やしたくない等の言わば「何となくストレスだけど我慢している」企業のニーズに応えることができているサービスがなかったと思います。
つまり、レッドオーシャンの中にブルーオーシャンを見つけた形です。そのターゲット層にのみ一点集中したので、広告もがら空きでしたし営業もしやすい。
いつの時代もベンチャーはまずはニッチトップを目指すべきと思っております。市場があって自分が一番になれる場所を探したほうがいいと思います。
二つ目は、小さな約束を守り続けることです。鬼のようなレスの速さ、期限を伝えそれを守る。依頼内容には忠実に応える。
信用は、大きな成果ではなく、こうした積み重ねでしか生まれません。そしてこれは意志の力ではなく、仕組みで守るものだと思っています。忘れない仕組み、遅れない仕組みをつくる。地味ですが、最後はここが効きます。
三つ目は、学生の方へお伝えしたいことです。いきなり起業しなくてもいいと思っています。私も5年間、人の会社で働いてから独立しました。経営者になりたいなら、まず誰かが本気でやっている現場に入って、そこで徹底的に集中し絶大な成果を出す。
できれば社内でも色々な部門を経験させてもらう。数字がどう生まれてどう消えるかを自分の目で見たほうがいいと思います。その経験があるかないかで独立後の轍を踏む回数はまったく違います。
起業は、華やかに見える瞬間より、地味な時間のほうが圧倒的に長いです。その時間を淡々と積める人が、結局は残ると思います。
神奈川県出身。実家が内装工事を営む家庭に育ち、20歳のとき友人の紹介でフルコミッション制の通信機器営業会社にアルバイトスタッフとして入社。
2005年に通販会社向けのデータベースマーケティング支援およびDM発送代行を行う「上野企画」を個人事業主として創業。その後、個人情報保護法制定をきっかけに普及が見込まれたマネジメントシステム認証の取得更新支援へと軸足を移し、株式会社UPFとして法人化。
2011年に事業を情報セキュリティコンサルティングへ抜本的にピボット。以来、Pマーク・ISMS(ISO/IEC 27001)を中心に全国5拠点で累計5,500社超(2026年8月現在)の認証取得支援を実現し、業界トップシェアを確立。著書に『Pマーク・ISMSを取ろうと思ったら読む本』(幻冬舎)。趣味は旧車バイク。
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法人名 |
株式会社UPF |
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HP |
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設立 |
2005年5月 |
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事業内容 |
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