
株式会社INDUSTRIAL-Xは、製造業や建設・不動産などアナログな現場を持つ企業のデジタル変革を、コンサルティングから仕組みの導入・運用まで一貫して支援する会社です。物事の境目に着目して、短期間で事業内における課題をあらい出せる「境目課題フレームワーク」や、1つの企業のデジタル変革の成功モデルを共同利用型にするプラットフォーム構想をベースにしたアプローチが特徴です。今回は、代表取締役である八子知礼氏に、紙からAIへと現場を一気に引き上げる支援の進め方や、宇宙まで見据えたバックキャスト経営(未来逆算型経営 )の考え方について伺いました。
当社は、「産業構造を変革するプラットフォームカンパニーになる」とのコンセプトを掲げ、企業業務のデジタル化・AI化を支援しています。
特に、製造業、建設、不動産、物流など、モノや土地、建物といった物理的な制約があり、これまでデジタル化の恩恵を受けにくかったアナログな現場を対象に、課題の特定からシステムやAIの導入、効果検証までを一貫して支援しています。
背景にあるのは、日本社会が平成の間に国際競争力を大きく落としてきたことへの危機感です。日本の現場ではIT化やデジタル化が遅れ、個々人が優秀であるがゆえに、人手で業務を回せてしまう状態が続いてきました。
だからこそ、生産性を高めるためには、アナログな現場にデジタルを持ち込み、両者を融合させていく必要があると考えています。
また、すべての企業がデジタル化に潤沢な投資をできるわけではありません。そのため、ある企業が作り上げた成功モデルや仕組みを複数の企業で共同利用し、地域や産業全体で次世代型のモデルへ移行していくことも目指しています。
一方で、現在の日本社会は、AIを活用するための準備が十分に整わないまま「AI、AI」と言っている状態だと感じています。これまでIT化やデジタル化に十分取り組んでこなかったことで、企業内に「IT負債」が残り、AIを活用したくても必要なデータや環境が整っていない企業も少なくありません。
そこで当社では、この段階を「紙、デジタル(IT/IoT)、AI」と整理し、「紙からAIへのジャンプを半年ほどでやりませんか」とのコンセプトで支援しています。
支援は6ヶ月を一つの単位とすることが多く、特徴の一つが「境目課題フレームワーク」です。物事の境目には必ず課題があるとの経験則に基づき、細かな現状分析から始めるのではなく、仮説ベースで課題を洗い出します。
そのため、1ヶ月目から「どこに、どの優先順位で手を入れるか」を議論でき、2ヶ月ほどで効果の見込みを整理できます。その後、当社の共同利用型ソリューションカタログである「Resource Cloud」や過去事例から解決策を選び、5〜6ヶ月目には現場で実証実験(PoC)を行って効果を検証します。
最近では、AIを活用して課題を提示するだけでなく、「このアプリケーションで解決できます」という仮のデモまで作成しています。物理的なセンサー設置などを伴わないホワイトカラー業務であれば、従来6ヶ月ほどかかっていた支援を3ヶ月程度まで短縮することも可能です。
実際に、ある証券会社では一つの業務にAIエージェントを導入したところ、工数を50%程度削減できることが分かり、約3ヶ月で他業務・他部門への横展開と内製化に進んでいます。
お客様からは、課題について全体感を持って俯瞰できることや、どこから取り組むべきかが明確になること、解決策を現場へ導入するまでのスピードが速いことを評価いただいています。実際に効果が見えることで、その後も継続してご支援するケースが多くあります。

実は、当初から起業を考えていたわけではありません。
前段でお話ししたように、国の施策や民間投資がなかなか成果につながっていないことに課題を感じ、Facebookなどで「もっとこういうアプローチがある」「複数企業でプラットフォーム化していくべきだ」と発信を続けていました。2008年頃からはメディアにも取り上げていただく機会が増え、一定の知名度も得ていました。
そうした中、現在取締役を務める吉川と出会いました。彼は当時コーチング会社に所属し、ビジネスコーチとしても活動していて、自分が実現したい姿や信念があるのであれば、それを自ら会社をつくって実現すればよいと、繰り返し起業を勧めてくれました。
一方で私は顧客獲得や経理処理、メンバーのマネジメントなど、会社経営に伴うさまざまな負担を理由に、なかなか踏み出せずにいました。しかし、半年ほど経つと、起業しない理由も次第に見つからなくなっていきました。
その後、現在もお付き合いのある建設機械メーカーの幹部の方から、依頼したい仕事があるから会社をつくってほしいと声をかけていただきました。そのことを吉川に伝えたところ、これも一つの流れなのではないかと言われ、これをきっかけに起業を決意しました。
ただ、起業するからには、もともと抱いていた国に対する問題意識を事業として形にしたいと考えました。私は若手にもよく「運動場を2周走るな」と言っています。一度経験したことを同じやり方でもう一度やることに意味はないと考えているからです。
そのため、人を大量に雇用してお客様先に常駐させるような、従来型のコンサルティング会社をつくるつもりはありませんでした。
目指したのは、人が動くだけではなく、仕組みそのものも動く共同利用型のプラットフォームです。さまざまな産業の中から、プラットフォーマーとなり得る企業を見極め、そこを起点としてデジタル化を推進していくようなビジネスモデルを具体的に設計していきました。
さらに、吉川のコーチングを受ける中で、自分自身が起業をためらっていた際に、できない理由を並べていた経験も事業のコンセプトに取り入れました。
できない理由を一つひとつ取り除き、実現するためには何が必要なのかを考えることで、できないことをできる状態へ転換していく。その考え方を事業の仕組みに組み込み、すべての経営資源をサービスとして提供する「Resource as a Service」という形にまとめました。
こうして、4ヶ月間にわたって事業モデルを徹底的に検討しました。もともと起業を考えていたわけではなかったからこそ、会社をつくるのであれば、これまでと同じことを繰り返すのではなく、自分が抱いてきた問題意識を新しい仕組みとして実現したいと考えました。
その結果として生まれたのが、人と仕組みの両面から企業の変革を支援する、現在のビジネスモデルです。

経営者として最も大事にしているのは、将来何が起こるのかを予測し、バックキャストで今何をすべきなのかを考えることです。
技術やマーケットのトレンドがこの先どのように進んでいくのかを見極め、その先で必要になる打ち手を先読みしたうえで、現在の事業に落とし込んでいくことを常に意識しています。
例えば、現在のAIをめぐる大きな流れも、以前から予測されていたものです。レイ・カーツワイル氏は2045年にシンギュラリティ(AIが人類の知性を超えるタイミング)が到来すると提唱し、その後、OpenAIのサム・アルトマン氏らはより早い到来の可能性に言及しており、当初の想定より前倒しになってきている感覚があります。
半導体の進化がムーアの法則の限界に近づき、計算資源の主役がAI向けへとシフトし始めたのが2018年から2022年頃でした。そこから技術のティッピングポイント(急変点)が次々と動いています。
どこが次の変化点になるのかをテクノロジートレンドとして捉え、それを事業モデルに組み込んでいくことは、経営において特に意識していることの一つです。
もう一つ大事にしていることは、どれだけ技術が進化しても本質はそれほど変わらないという視点です。AIが普及したとしても、すべてが完全に自動化されるわけではありません。最終的な意思決定に対してAIが責任を負うことはできず、必ず人が担わなければならない領域が残ります。
また、汎用的な処理であればあるほど、いずれMicrosoftやApple、GoogleなどがOSレベルに組み込んでいくと考えています。
便利な機能は次第にOSのレイヤーに吸収され、人間はよりアナログな領域に密接に関わりながら、責任を負う部分や、AIをコントロールし、プランニングする役割を担うようになるでしょう。そう考えると、技術が大きく変化しても、人間が担う本質的な役割はそれほど変わりません。
つまり、将来を見極めるということは、これから凄まじい変化が起こることを前提に考えることです。一方、本質を見極めるということは、どれだけ環境が変化しても変わらないものを捉えることです。この二律背反する二つの視点のバランスを取りながら経営の舵を取ることが、私が最も重視していることです。
また、当社には「コミットメント」から始まる10個の行動指針があります。私はコンサルティング業界で25年仕事をしてきましたが、最初に在籍したコンサルティングファームであるArthur Andersenの頃から、「コミットメント」や「エクシード」といった考え方には馴染みがありました。
お客様の期待を超えること、結果にコミットすること、生産性を高めること、常に前向きに進むこと。いずれも長年仕事を続ける中で培ってきた、極めて基本的な行動原則です。それらをキーワードとして整理していくと、自然と10個ほどの行動指針にまとまりました。
特別に新しく掲げたものではなく、私自身が日常的に大切にしている価値観や行動原則が、そのまま会社の行動指針として形になっています。

壁と挫折の連続です。現在も会社自体に大きな壁があり、それを乗り越えるためにチャレンジしている最中です。
1年目は社員を雇わなかったこともあり、ありがたいことに大きな苦労はありませんでした。しかし、その後、人を雇い始めると、組織をマネジメントすることがこれほど難しいのかと痛感しました。
特にオーナー経営者には、どこまでを任せ、どこからを自分が引き取るのかという葛藤が常につきまといます。
自分でやったほうが早いからと手を出してしまえば、組織としては回らなくなります。当社では比較的早い段階から階層型のマネジメントへ移行し、体制を整えてきましたが、それでも日々悩みは尽きません。
だからこそ、そうした悩みや、どこまでを任せるのかといった経営上の葛藤も含めて、できる限りオープンにメンバーへ共有しています。私自身もまだ会社をつくっている途中にあり、完成された組織を経営しているわけではないということを常々メンバーに伝えています。
例えば、ルールがないことに対して、単にできないとするのではなく、それならば自分たちでルールをつくることも役割の一つだと伝えています。
組織が大きくなるほど新たな課題も生まれますし、今もなお試行錯誤の連続です。そうした苦悩も含めて、会社をつくり続けているというのが、現在の実感です。
折れずに進み続けられる理由の一つは、バックキャストで考えているため、見ている視点が今年や来年だけではない点にあります。3〜5年後、2030年や2040年に世の中がどう変わっているかを見据えれば、今この1年で凹んだり課題があったりしても、くよくよしすぎても仕方がないと思えます。
もちろん目の前のことには必死で取り組みますが、目線が足元だけに落ちるのではなく、将来を見据えながら足元も見ることを意識しています。日々の課題解決に追われながらも、これを仕組み化するなら将来どうあるべきかを考えられること自体が、事業をドライブするモチベーションになっています。
もう一つは仲間の存在です。1年目は1人でやり、3年目あたりからメンバーが一気に増えていきました。雇用すれば社長が倒れるわけにはいきませんから、病気で寝込んでいる場合じゃないなとの思いもあります。それ以上に、一緒に船を漕ぐ仲間ができたことが強烈なモチベーションであり、活力の源になっています。
今後は、宇宙を新たな産業領域として見据えています。当社は2025年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業に採択され、人工衛星の開発期間を短縮するフィジビリティスタディを担当しました。(「衛星メーカー間における衛星アーキテクチャ共有及び開発プロセスの標準化・効率化に係るFS」)
私が目指しているのは、地球上に蓄積された産業の知見をデジタル化し、AIによるシミュレーションを通じて、宇宙空間でも活用できるようにすることです。
構想を掲げたのは2020年ですが、JAXAとの具体的な取り組みへと進みました。今後は2030〜2035年頃の人工衛星打ち上げを目指し、最終的には人工衛星をオフィスとして活用するような未来まで実現したいと考えています。
これまでも新しい産業の形を構想し、実際の事業として形にしてきたように、宇宙についても構想だけで終わらせるつもりはありません。これからの産業が宇宙へ広がっていくことを見据え、そのための仕組みを今からつくっていきます。
※編集部注:インタビュー実施後の2026年8月15日に、新会社となる株式会社SPACETWIN-Xが設立されました。 詳細はこちらからご覧ください。
やりたいことがあり、社会をこう変えたい、自分はこうなりたいという明確な思いがあるのであれば、起業は素晴らしい選択肢の一つだと思います。大企業や中小企業に所属しているだけでは、実現できないこともたくさんあるからです。
何を実現したいのか、社会をどう変えたいのか、どのようなチームで、どのような顧客に、これまでにない価値を届けるのか。そうした考えがあれば、たとえまだ抽象的な段階でも、起業して挑戦する価値は十分にあります。何より、そこに情熱や思い、大義があり、その思いを持ち続けられることが重要です。
一方で、単にお金持ちになりたい、起業してみたいといった理由だけであれば、起業は勧めません。名誉が欲しい、自由な時間が欲しいといった動機だけでは、困難に直面したときに踏ん張ることができず、事業を長く続けることは難しいと思います。
起業は決して楽な道ではありません。自分が実現したいことに挑戦するのであれば、それだけの大変さを引き受ける覚悟は持っておいたほうがいいと思います。
一緒に働きたい人は、「3つのC」で捉えています。チャンスを確実に掴み、積極的にチャレンジし、その結果として大きくチェンジ(成長)してくれる人です。
特に、中長期で産業構造を変え、宇宙ビジネスにも挑む私たちの会社では、未来から逆算して「今何をすべきか」を考えられる未来思考の人、「できない理由」ではなく「できること」を考えられる人が活躍しています。
スキルや経験以上に大事にしているのは向上心です。向上心のある人は前向きで、常に学び、挑戦し、他者にも貢献しようとする。勉強意欲のある人ほど行動量も多いものです。大きな仕事を任せる基準も、前述の10個の行動指針を体現し、情熱的に取り組んでくれる、信頼できる人かどうかです。そんな方を心からお待ちしています。
採用サイトはこちら
1997年松下電工(現パナソニック)入社、
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法人名 |
株式会社INDUSTRIAL-X |
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HP |
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設立 |
2019年4月15日 |
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事業内容 |
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