
株式会社LinkTripは、雨が降ると旅行やレジャーの料金が最大全額キャッシュバックされる天気保証アプリ「LinkTrip」の開発・運営をしています。1km四方ごとの第三者の天気データで雨を判定し、最長でも翌日には利用者の銀行口座へキャッシュバックできる仕組みが特長です。今回は、代表取締役社長である橋本 啓佑氏に、事業を始めた経緯や、事業者向けに広げるなかで直面した壁について伺いました。
当社は、雨が降った際に施設の利用料金を最大で全額キャッシュバックするサービスを提供しています。現在は主に、グランピング施設やゴルフ場などのレジャー事業者向けに展開しており、今後はリゾートホテルなどへの導入も広げていきたいと考えています。
仕組みとしては、施設側に通常のプランとは別に、雨が降るとキャッシュバックを受けられるプランを用意していただきます。利用者は予約後に当社のアプリと予約情報を連携させ、当日、所定の降雨条件を満たすと、キャッシュバック金額がアプリ内のウォレットに反映されます。その後、銀行口座へ出金できる仕組みです。
キャッシュバックの対象となる降雨条件は、施設やプランによって異なります。例えば、指定された時間帯に一定以上の雨が3時間続いた場合など、複数の条件を設けています。また、サービスの料金は過去約20年分の気象データを機械学習で分析し、時期や天候による降雨確率に応じて設定しています。
このサービスの特徴は、雨の判定精度とキャッシュバックの速さです。雨の日にキャッシュバックする仕組みは、以前から旅行会社が保険会社と組んで提供していた例がありますが、、実際の降雨状況と判定結果にずれが生じたり、施設側の確認作業に手間がかかったりする課題がありました。さらに、キャッシュバックを受け取るまでに最大2カ月ほどかかるケースもあり、利用者にとって使いやすい仕組みとは言えませんでした。
そこで当社では、第三者が提供する1kmメッシュの気象データを活用し、より細かな地域単位で降雨を判定しています。判定から支払いまでの処理も自動化し、キャッシュバックは当日中にアプリへ反映され、翌日には銀行口座で受け取れる仕組みを整えました。
また、事業者向けサービスとは別に、テーマパークなどの利用者が直接申し込める個人向けアプリも展開しています。海外にも類似サービスはありますが、当社はアプリを通じた体験づくりに力を入れています。利用者が当日の雨の状況を確認しながら、キャッシュバックの条件を満たすかどうかを楽しめるようにすることで、雨の日にも新たな価値を生み出したいと考えています。
実際に個人向けサービスでは、利用者の約4人に1人がリピートしているという結果も出ています。特に遠方から旅行する方は、雨が降っても簡単に日程を変更できないため、万が一に備えたいというニーズがあるのだと思います。こうした需要を捉えながら、今後もサービスを広げていきたいと考えています。

私は大学時代に仲間と学生起業を経験しており、改めて自分で起業しようと考えた際にさまざまな事業アイデアを探していました。
その中で着目したのが、身内が経営している旅館です。宿泊業界にはどのような課題があるのか話を聞いていたところ、九州で台風の影響によるキャンセルが相次ぎ、大きな負担になっていることを知りました。宿泊業や観光業は、天候や新型コロナウイルスの流行など、自分たちではコントロールできない外的要因に大きく左右される業界なのだと実感したのです。
そうした中で、天候に関する課題を解決する方法を調べていたところ、雨が降るとキャッシュバックを受けられるサービスを展開する海外のスタートアップを見つけました。投資家からの資金調達にも成功して事業を成長させていることを知り、この仕組みに興味を持ちました。
そこで天候によるリスクを軽減するサービスは、日本でも需要があるのではないかと考えたことが現在の事業を始めたきっかけです。
仕事で一番大切にしているのは、利用者にとってシンプルで使いやすいサービスをつくることです。世の中には、同じ情報を何度も入力しなければならなかったり、ログインに手間がかかったりするサービスも少なくありません。当社では、そうした負担をできる限り減らし、誰もが簡単に利用できる体験を目指しています。
私はもともとエンジニアで、当社のシステムもすべて自社で開発しています。現在はAIを活用できるようになりましたが、創業当初はほとんどのコードを自分で書いていました。だからこそ、機能だけでなく、実際に使う人の立場に立った設計を大切にしています。
こうした姿勢の背景には、学生起業の頃からto C サービスに魅力を感じていたことがあります。友人や身近な人にも使ってもらいやすく、利用者の反応を直接感じられるところが好きでした。
一方で、to C サービスには難しさもあります。例えば、飲食店でも満足した人がわざわざ高評価の口コミを書くとは限りませんが、不満を感じた人は声を上げやすいものです。サービスも同じで、良い評価より悪い評価が目立つことがあります。それでも、利用者の声を真摯に受け止め、より使いやすいサービスへと改善を重ねていきたいと考えています。

起業してから最大の壁となったのは、事業者向けのサービスを始めてから直面した営業の難しさです。
当初は、海外で展開されていたサービスを参考に、個人向けのアプリとしてリリースしました。アプリを運営するなかで、雨への備えは、別々に申し込むのではなく、施設を予約するその時に選べるのが一番だと考えるようになりました。
そこで、施設が提供するプランにキャッシュバックを組み込む形で、事業者向けのサービスを始めました。施設に、雨の日のキャッシュバックが付いたプランを販売していただき、雨の判定からお客様へのお支払いまでを、施設に代わって当社がアプリで行う仕組みです。
ところが、事業者向けに広げてみると、営業面で壁に直面しました。当初は集客やサービスの成長が課題になると考えていましたが、実際には商談の機会を得ること自体が難しかったのです。
営業を通じて、相手への伝え方の重要性も学びました。例えば、星空や富士山の眺望を売りにしている施設に対して、「雨が降ると見えませんよね」と伝えても、良い反応は得られません。施設側は雨の日でもお客様に満足してもらえるよう努力しているため、天候による弱点を直接指摘されることに抵抗があるのです。
最初に契約してくださったのは、天候による課題を感じながらも、新しい取り組みに前向きな会社でした。この経験から、サービスの価値を伝えるだけでなく、相手の立場や考え方を理解することが大切だと実感しました。
こうした壁にぶつかって落ち込むこともありますが、一晩寝れば大抵は気持ちが切り替わります。特別に意識して立ち直ろうとしているわけではなく、良くも悪くも楽観的な性格なのだと思います。
事業を続ける一番の原動力は、自分がつくったサービスを誰かが使い、喜んでくれることです。
学生時代から長く事業に取り組んできましたが、まだ大きな成功を収めたわけではありません。それでも続けてこられたのは、友人だけでなく、会ったこともない人たちが自分のサービスを使ってくれることに、大きな喜びを感じるからです。
SNSで「このサービス、すごく良かった」と言ってもらえるだけでも、本当にうれしくなります。以前、キャッシュバックを受けたお客様が、導入先の施設に「本当にお金が返ってきました」と喜びの電話をくださったこともありました。
個人のお客様から直接喜びの声をいただける機会は、決して多くありません。だからこそ、こうした反応に触れられることが何よりもうれしく、事業を続ける励みになっています。

今後は、雨の日のキャッシュバックを特別なサービスではなく、旅行やレジャーで当たり前に利用される仕組みにしていきたいと考えています。現在はまだ珍しいサービスですが、将来的には「旅行に行くならLinkTripを使うのが普通だよね」と言われるような存在を目指しています。
そのための短期目標は、使える施設を増やすことです。ゴルフ場であれば、どこでも使えるような状態が理想です。さらに、リゾートホテルや富士山を望む絶景宿など、天候によって体験の満足度が左右されやすい施設にも導入を広げたいと考えています。
また、雨だけでなく、暑さや風などにも対応していきたいと考えています。例えば、ゴルフ場では暑さの厳しい8月に利用者が減る傾向があるため、一定の気温を超えた場合にキャッシュバックする仕組みも検討しています。
さらに、宿泊やレジャー以外の分野にも可能性を感じています。例えば、沖縄でのウエディングフォトでは、遠方から飛行機で訪れても、当日雨が降れば楽しみにしていた青空の下で撮影することはできません。こうした、自分ではどうにもできない天候の影響を受ける場面にも、サービスを広げていきたいと考えています。
始める前に想定していた課題と、実際に始めてから直面する課題は違うものです。だからこそ、考えすぎるよりも、まずは行動に移すことが大切だと思います。サービスであれば実際にリリースし、起業したいのであれば、まず挑戦してみることをおすすめします。
私自身、リリース前は保険業法に関する問題をまったく想定していませんでした。もし最初から知っていたら、この事業を始めていなかったかもしれません。そう考えると、知らなかったからこそ挑戦できた面もあると思います。
実際に動いてみなければ分からないことは多くあります。問題に直面したら、そのときに別の方法を考えればいいと思います。最初からすべての課題を解決しようとするのではなく、まず一歩を踏み出すことが大切です。
大学在学中に学生起業を経験。エンジニアとしての経歴を持つ。2024年9月、株式会社LinkTripを設立。雨が降ると最大全額がキャッシュバックされる天気保証アプリ「LinkTrip」を自ら開発し、グランピング施設やゴルフ場などへの導入を進めている。
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法人名 |
株式会社LinkTrip |
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HP |
https://linktrip.co.jp |
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設立 |
2024年9月 |
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事業内容 |
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