株式会社NAVICUS 代表取締役 武内 一矢氏

株式会社NAVICUSは、企業や自治体のSNS運用とコミュニティづくりを支援しています。

SNSの戦略設計を軸に、大手企業特有の承認プロセスや運用体制にも対応し、支援先の累計フォロワー数は1億620万人を超える(2025年5月時点)実績が強みです。今回は、代表である武内一矢氏に、東日本大震災で実感したつながりの価値や、人材育成と事業成長の両立について伺いました。

ファンを超えた「当事者」をつくる、SNSとコミュニティの戦略設計

事業の内容をお聞かせください

当社は「明日が楽しみになる居場所をつくる」をミッションに、SNSを中心としたコミュニティマネジメントやマーケティングプロモーションを手がけています。

 

ここでいう「居場所」とは、物理的な場所ではなく、人と人とのつながりや集まりのことです。そうしたつながりを生み出し、育てていくことが事業の軸です。

 

具体的には、企業や自治体に対して、SNSを活用した情報発信やコミュニティづくりを支援しています。

 

一方的に情報を届けるだけではなく、生活者から企業へ声を届けてもらう場をつくったり、サービスの利用者同士がつながれる環境を設計したりすることも私たちの役割です。必要に応じて、周年イベントなどリアルの場も組み合わせています。

 

支援先は、大手メーカーや小売企業などの一般企業、私自身のキャリアにも関わりの深いゲーム企業、地方創生に取り組む自治体が中心です。私たちが大切にしている考え方の一つが、「当事者意識を持ったファンづくり」です。

 

商品やサービスは、機能や価格だけで選ばれるとは限りません。「好きだから」「応援したいから」といった気持ちによって選ばれることもあります。さらに、その企業や地域を自分に関わりのある存在として捉えてもらえれば、関係性はより深くなります。

 

出身地に対して「地元のファン」と言われると少し違和感があるように、自分自身が関わる当事者だからこそ生まれる気持ちがあります。企業や地域に対しても、そうした当事者意識を持つ人を増やしていきたいと考えています。

 

そのため、個々の施策よりも前段階の戦略設計を重視しています。コミュニティは、一つの施策を実施すれば完成するものではありません。最終的にどのような関係をつくりたいのかを決め、そこから逆算して段階を設計する必要があります。

 

ご相談をいただいた際には、まず目指すゴールやKPI、これまで実施してきた施策と課題を整理します。そのうえで、最終的なゴールまでの段階を分け、それぞれで何をするべきかを一緒に考えていきます。

 

SNSが中心になることが多いですが、広告やリアルイベントなどを組み合わせることもあります。

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

原点にあるのは、社会課題を事業の力で解決したいという思いです。学生時代から起業を考えていたわけではありませんが、2001年の同時多発テロと、その後のアフガニスタンやイラクでの戦争には大きな衝撃を受けました。

 

幼少期をアメリカで過ごしたこともあり、第二の母国ともいえる場所で起きた出来事に対して、自分に何ができるのかを考えるようになりました。当初はジャーナリストを志して早稲田大学へ進学しましたが、ジャーナリズムを通じて自分が目指す社会を実現する道筋を描き切れませんでした。

 

NPOも選択肢として考えましたが、社会的に意義のある活動であっても、継続的に規模を広げていく難しさがあると感じました。そこで、収益を生みながら社会課題の解決に取り組む方法を学びたいと考え、ファーストキャリアではベンチャー企業を選びました。

 

現在の事業に対する考え方が大きく形づくられたのは、東日本大震災です。当時すでにSNSマーケターとして働いており、被災地のために自分の経験を生かせないかと考えました。

 

そこで震災翌日の3月12日に、被災された方々がSNSのIDを使って情報交換できる掲示板を立ち上げました。結果として約10万人の方に利用していただき、道路や給油所、炊き出しなど、現地で必要とされる情報が共有されていきました。

 

特に印象に残っているのが、震災から10日ほど経った頃の出来事です。宮城県の方から「明日は子どもの誕生日なので、どうにかケーキを手に入れたい」と投稿がありました。すると別の方が販売している場所を見つけて教えてくださり、無事にケーキを手に入れられたそうです。

 

極限の状況でも、誰かの願いに共感し、自分にできることをする人がいる。その姿を見て、困っている人と助けたい人がつながれる仕組みをつくることに、大きな価値があると実感し、株式会社NAVICUSを創業しました。

 

 

誰のためになっているかを考え抜く利他性

仕事におけるこだわりを教えてください

根底にあるのは、やはりEnd User First(エンドユーザーファースト)の考え方です。これは自分自身に課していることでもあり、仲間にも求めていることでもあります。

 

言い換えれば、利他性を大事にしたいということです。社員一人ひとりの人生が良くなってほしいと思っていますが、そのためにこそ利他性が必要だと考えています。

 

人の役に立てれば、結果として自分の人生も良くなっていくものでしょう。だからこそ、誰のためになっているのかを考えながら仕事をすることを大切にしています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、人材育成と事業成長を両立させることです。人の成長には時間がかかりますし、力をかけたからといって、必ずしも期待したペースでスキルが伸びるとは限りません。

 

一方で、会社としては事業を成長させ続ける必要があります。この二つをどう両立させるかは、起業してから今までずっと向き合ってきた課題です。

 

ただ、その壁を越える力もまた、人にあると感じています。組織の中で一歩先に成長したメンバーが周囲を支え、次の人を引き上げてくれる場面が増えてきたからです。誰か一人の力だけで事業を伸ばすのではなく、成長した人が次の成長を生み出す状態をつくることが重要だと考えています。

 

これは、生え抜きのメンバーを育てることだけを意味しているわけではありません。経験を持って入社したメンバーにも、さらに成長してもらう必要があります。

 

立場や経験にかかわらず、それぞれが次の成長を目指し、その成長が組織全体に広がっていく状態をつくることが、経営者としての役割だと考えています。

 

 

「ある日ギアが変わった」、人が変化する瞬間が原動力

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

原動力になっているのは、人が変化した瞬間に立ち会えることです。先日も入社2年目のメンバーと食事に行ってきました。その中に、最近ゲーム領域で目覚ましい活躍をしているメンバーがいます。

 

以前は上司から「あの子はどうしたらもっと力を発揮できるか」と相談が寄せられることの多かった人物でしたが、今では「あの子がすごい」と評価する声がたくさん上がるようになりました。

 

本人に聞くと、「ある日起きたら、パチンとギアが変わったんです」と言うのです。きっとそれまでに重ねてきた勉強や、逃げずに向き合った経験が、どこかで噛み合った瞬間だったのでしょう。

 

その変化によって本人の人生が良くなったことが何より嬉しいですし、そう思える人を増やしたい気持ちが、私が進み続ける理由になっています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください

まず土台として、企業向けとゲーム業界向けの既存事業を堅調に伸ばしていきたいと考えています。ここは売上規模でも体制規模でも、業界ナンバーワンを目指したい領域です。

 

一番になってこそ、最も優秀な人が最も高い報酬で入ってきて、最も良い成果を出すサイクルに入れると考えているからです。そのうえで力を入れたいのが海外展開の支援です。日本の地域企業も含め、日本企業が成長市場へ出ていける環境をつくりたいと思っています。

 

国内市場が縮んでいく中でも、これから20年、30年と戦っていける道筋を用意したいのです。個人的な願いとしては、人が育った瞬間がとにかく好きなため、自分がどこまで現場に立ち続けるかはともかく、当社を経て育った人たちの活躍を見届けたいと思っています。

 

 

自分の人生を自分で動かせる人と働きたい 

どのような方と一緒に働きたいと考えていますか?

当社では原則としてほぼ全員を正社員で採用しています。

 

雇用形態による違いをできるだけつくらず、フラットな組織にしたいと考えているからです。現在は中途入社が7〜8割、新卒入社が2〜3割ほどです。中途では、コミュニティ運営やSNSマーケティング、セールス、デザインなどの経験を持つメンバーが多くいます。

 

一方、新卒は社長直轄で一緒に勉強していくスタイルを取っており、成長したいという思いを持って環境に飛び込める方を採用しています。共通して重視しているのは、ホスピタリティです。人が喜ぶことを自分の喜びとして感じられる方は、当社の仕事に向いていると思います。

 

もう一つ大切なのが、自分の人生の選択を自分でしていこうと思えることです。特にベンチャーでは、必要な環境がすべて用意されているわけではありません。自分から必要なものを取りに行く姿勢が求められます。

 

当社で活躍している人も、社長や先輩社員に対して自分から必要なものを求め、そのうえで受け取ったものを周囲に返していく動きができています。「自分の人生は自分で動かす」と思える方と、ぜひ一緒に働きたいです。

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

よくお伝えしているのは、タイプの違うさまざまな人からアドバイスをもらった方がいい、ということです。そのうえで「アドバイスで決めるな」とも申し上げています。いろいろな意見を聞いても譲れずに残る部分こそが、自分のコアだからです。これも恋愛に近いと思います。

 

「別れた方がいいか迷っている」と相談して、10人中9人が「別れた方がいい」と言っても納得できず、1人が「続けたら」と言った途端に「やっぱり続ける」となる人がいるでしょう。本当の答えは、すでに自分の中にあるのです。

 

起業も同じです。「そんなにうまくいかない」「やめた方がいい」「もう少し先に延ばしたら」と言われても、それでも火が消えないなら、やった方がいいと思います。

 

受け入れがたいアドバイスに出会ったときにこそ、自分が見えてくる。だからこそアドバイスはたくさんもらったうえで、何をもってしてもブレないものこそが自分なのだと、そこに目を向けてほしいと思っています。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:武内 一矢 氏

早稲田大学卒業後、コミュニティサービス運営のITベンチャーを経て、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。SNSマーケティングチームの立ち上げを担う。その後、ふるさと納税ポータルサイト大手「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクでマーケティング責任者などを務め、2018年に株式会社NAVICUSを設立。2022年10月、九州を中心にWebマーケティング支援を行う株式会社NAVICUS九州のCMOに就任。

企業情報

法人名

株式会社NAVICUS

HP

https://www.navicus.jp/

設立

2018年7月

事業内容

  • SNSを中心としたコミュニティマネジメントやマーケティングプロモーション
送る 送る

関連記事

関連記事