株式会社フーバーブレイン 代表 輿水 英行
株式会社フーバーブレインはセキュリティ分野に特化した事業を手がけており、2018年以降の第二創業期を経て、さらなる成長を実現する体制確立を進めてきました。今回はそんな株式会社フーバーブレインの代表である輿水 英行氏に、具体的な事業内容や事業を始めた経緯、今後の展望について伺いました。
サイバーセキュリティ対策は、外部脅威対策から内部脅威対策までが不可欠
さっそくですが、事業内容をお聞かせください。
当社では、サイバーセキュリティソリューションを提供しています。そもそもの事業の中核は、端末をウイルスから守るセキュリティソフトウェアの開発にあります。それ以外にセキュリティソリューションとしては、ネットワークの出入り口を守ったり、セキュリティに関する教育を行ったり、サービスの請負をしたりなど、全方位でサイバーセキュリティのプラットフォームをワンストップで提供できるビジネスを行っています。
近年さまざまな製品がリリースされていますが、その中でも「FB SAT(エフビーサット)」についてアピールポイントはありますか?
当社はサイバーセキュリティのツール、いわゆる製品をつくって販売することを生業としています。しかし、どれだけ良い製品をお客様に買って導入していただいても、人による情報漏洩は必ずしも防げません。
当社はお客様の視点で、ただ製品をつくり販売するのではなく、どのようなことで情報漏洩するのだろうと考えました。そこで思い浮かぶのは、外部からのアタックは防げてもUSBに内部の情報を入れて、飲み会の帰りの電車の中でUSBを落としてしまうといったことはあると思いますし、届いたメールを開いたらスパムだったということもあり得ます。
結局はどのようにして人によるリスクを低減するかを同時に考えないと、本当の意味でお客様の視点に立ったソリューションにはなりません。そこから、人に注目したセキュリティ「ヒト・セキュリティ」を強化するサービスとして「FB SAT(エフビーサット)シリーズ」をスタートしました。
先ほどのUSBの話を挙げると、お客様企業のセキュリティポリシーにおいて、そもそもパソコンにUSBを挿していいのか、ポリシーをどのようにするのかを検討する必要があります。
次にポリシーが決まったとしても、働く従業員の方々が本当にそのポリシーを守って運用しているかどうかは別の話です。ポリシーを知らなかったり、知っていても情報漏洩につながるミスやポリシー違反をしてしまうケースもあります。
万が一に備えて、USB使用を制御するか、あるいは制御が不要な場合でも、アラートがマネジメント側にあがるようになっているかなど、多層的な運用が必要です。このように、セキュリティの中でも人に関わる部分を多層的に強化していくサービスが「FB SATシリーズ」になります。
第二創業という形でリスクをとって会社を大きくしていく
現在の事業を始めた経緯を教えてください。
当社は2001年に創業しており、私は2018年から経営者となったことを機に関わっています。というのも、もともと私は公認会計士の仕事をしており、その後は外資系の投資会社で働いていました。
私の担当分野は事業再生であり、「すべてのモノには価値と価格があるけれど、それが見合っていない企業がある」と感じました。そこで、そのような企業に投資を行い、価値を見える化する、あるいは価値を引き上げるといった投資スタイルを長く続けていました。
会社から独立しコンサルタントとして活動していたときに、この会社(フーバーブレイン)の経営を退いた1人の株主の方と話す機会がありました。その当時の経営スタイルを貫いていくと企業としての成長があまり見込めないのではないかと危惧しており、第二創業という形でリスクをとって会社を大きくしていってくれないかと話がありました。
私にITやサイバーセキュリティなどのバックグラウンドはありませんでしたが、事業再生をしていたこともあり、挑戦してみようと思いました。このタイミングで社名を株式会社アークンから現在の株式会社フーバーブレインへと変更しています。
経営者として誰よりも熱量をもって、その熱量を1人ひとりに伝え続ける
仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。
経営者として誰よりも熱量をもって、その熱量を1人ひとりに伝え続けることを諦めないことがこだわりです。
外資系の投資会社にいたときに、開発が途中で止まったゴルフ場を買いました。ゴルフ場の完成からオペレーションを始めることを目的にしていました。しかし当時は、リーマンショックによる不況のため、その外資系投資会社が日本を撤退しました。
そのため、ゴルフ場再建事業は香港の投資家に譲渡されましたが、私はゴルフ場再建のオペレーションに引き続き携わることにしました。ゼロからゴルフ場を始めるという状況で、また、関わる人全員が最初から熱量を持っていたわけでもなかったので、苦戦し、さまざまなことが起こりました。そのゴルフ場(千葉県)は、GORA(ゴルフ場のポータルサイト)のゴルフ場評価を見たときに、当時のスコアは県内の下位10%でした。。私たちは千葉県トップのゴルフ場にすることを目標にし、地道な努力を重ね、今では上位10%以内に入っています。
このような経験を通して、そんな簡単に変わるわけではないけど地道にやっていると共感してくれる人が増えて、そうではない人は離れていく、そういう循環の中で共感できる人の比率が上がっていくことを実感しました。
私が1週間のうち何日間も現場に顔を出さないといけなかったのが、中堅が育ってくると行く必要はなくなっていきました。上こそが熱量をもたないと下の人はくじけてしまうことから、そのスタンスをもつようになった経緯があります。
第二創業から今までの最大の壁を教えてください。
当社に入ったときには戦略的なところでどういう領域を攻略すべきか想像していたのですが、結局はどのようにして企業文化を変えるかが壁でした。
創業者の1人が危惧していたように、働く従業員ひとりひとりが愛着を持って会社を大きくしていくことを目標にしているようには見受けられなかったので、そこをどのようにして変化させていくのかが、戦略以前の部分で大変でした。
私1人ではなにもできないですし、私のできることにも限りや偏りがあるので、そこでいかに私と想いをともにして不足している部分をカバーしてくれるかが最も大切なことだと思っていて、何をするのかは二の次なのだと感じています。
進み続けるモチベーションはありますか?
幸せの感じ方はさまざまだと思うのですが、私自身どのような人生にしたいか考えたときに、外資系の投資会社で働いているときはバリバリ働いてお金を稼ぐことが幸せでした。しかしそのような中で、どれだけお金を持っていても幸せじゃない人を見てきました。
常に「もっとお金持ちになりたい」、「あの人はいくら持っている」と話す人を見てきたので、それを反面教師にして、独立後は精神的な幸せを追求したいと思うようになりました。
そこから2年くらいしたときに「私はもっと成長できるはず」という向上心のようなものがフツフツと湧いてきて、新しいことに挑戦しようと思ったのが転換期のように感じています。
そういう意味で今の私自身の状況について、「まだまだこんなものじゃない」と感じているので、もっと高めていきたいと思っています。
バックグラウンドが違うからこそ学ぶ必要がありますし、人との関わり方もこれまでのネットワークとは別のものをつくっていかなければさらなる成長は見込めないので、「色々なことにチャレンジして自分自身に証明したい」という気持ちがモチベーションになっています。
会社の成長は社員のモチベーション維持にもつながる
今後の展望をお聞かせください。
現在は、フーバーブレインの株価を高めていきたいと思っています。スケールが変われば機会は多くなりますし出会える人も変わってくるので、まずは会社の規模を大きくするために、常に考えて経営しています。
今後スケールが大きくなっていく中で社員さんも増えていくと思いますが、モチベーション維持の秘訣はありますか?
社員への個々のケアなどはもちろん用意していますが、私自身が社員に対してモチベーションを維持させる方法は、やはり会社を成長させることだと思っています。会社が成長していれば多くの社員はハッピーでいられます。
反対に、会社が縮小していれば社員は幸せを感じにくくなっていくでしょう。社員への個々のケアはもちろん大切ですが、それは経営者でなくてもできるので、私としては成長を進めていくことに重きを置いています。
今後サービスを利用するかもしれない起業家に向けてメッセージをお願いします。
私は、セキュリティ対策が非常に重要だと考えています。なぜなら、上場する際も審査でチェックされますし、上場後に情報漏洩が起きてしまうのも危険だからです。
ただし、こういうセキュリティソフトを入れるべきですよという視点から単に取り入れるのではなく、経営者目線に立って何が原因で情報漏洩が起こるのかを考えてもらったほうがいいと思います。
例えば、自宅にきちんとした鍵をつけていても日中鍵を開けていれば空き巣に入られる可能性があります。全方位的に外部からのアタックに弱いのか、内部にセキュリティポリシーがないのか、あるけれど運用を守っていないのかなど、網羅的に診断を行い、弱点を見つけることで、結果的に情報漏洩しにくい会社になっていくと思います。
読者の方へのメッセージはありますか?
ぜひ、当社の株を買っていただきたいですね。当社は積極的にM&Aを行ったり、方向の違う会社と事業提携をしたりしています。今後を期待していただいて、当社の株もチェックしてもらえると嬉しいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:輿水 英行 氏
セゾングループディベロッパー・西洋環境開発、アーサーアンダーセン会計事務所(現あずさ監査法人)、米国穀物メジャー・カーギルの代替投資部門(現CarVal Investors) を経て独立。
ハンズオン型の経営コンサルティング、海外投資家の日本における経営管理受託業務、事業再生ビジネスに携わる。
当社取締役副社長を経て、2018年10月、当社代表取締役社長就任。
【企業情報】
法人名 |
株式会社フーバーブレイン |
HP |
|
設立 |
2001年5月8日 |
事業内容 |
サイバーセキュリティソリューションの提供 テレワーク環境の構築 生産性およびクオリティオブライフの向上支援 受託開発・SES(子会社:GHインテグレーション株式会社) 採用支援・人材紹介(子会社:株式会社アド・トップ) 投資事業・投資助言(子会社:フーバー・インベストメント株式会社) |
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