豊洲社中株式会社 Co-Founder CEO 牧内 秀直
「日本の美味いものを共に世界へ」を大きなミッションに掲げる豊洲社中株式会社。国外で需要が高まりつつある日本酒を皮切りに、食で挑戦をする方々専用のプラットフォームを作り、日本の食文化を広めていきたいと語っています。今回は同社のCo-Founder CEOを務める牧内 秀直 氏に事業内容や今後の展望などを伺いました。
「日本の美味いものを共に世界へ」
事業の内容をお聞かせください
豊洲社中は今年一月に設立したばかりの会社ですが、「日本の美味いものを共に世界へ」というミッションを掲げ、食で世界に挑戦する人たちが出会い、一緒に世界に打って出るのを手伝うプラットフォームを作ることを構想しております。
このミッションはお飾りの言葉ではなく、日本の・美味いもの・共に・世界へという4つの言葉に、それぞれ強い想いを込めています。
まず「日本の」については、日本が元気になることをしていきたいという想いです。「美味いもの」に関しては、日本は世界一の美食の国であり、日本の食文化は非常に強いコンテンツであるため、これを広めていきたいです。
「共に」ですが、自分たちでやりたいというよりは、プラットフォームを作り、挑戦する人を応援したいという想いです。「世界に」は言うまでもなく「世界に挑戦する」という意味です。
具体的には3ステップで考えています。第1ステップが「インバウンド×酒の体験」、第2ステップが「アウトバウンド×酒の体験」、第3ステップが「アウトバウンド×食の体験」です。
まず将来的にどうなりたいかという視点で第3ステップの話からすると、日本の食の体験コンテンツの輸出、具体的には日本の飲食店の世界進出がテーマです。
私は最近までロンドンに住んでいましたが、最近の海外での日本食ブームもあり、日本食の店は増えてきています。
しかし、外国資本の「もどき」の店が多いです。日本の大手チェーン店さんは海外に店舗を拡大して頑張ってくれていますが、中小規模のお店は日本国内にとどまっているところが多いです。東京のような美食の街で本物の味を提供しているのは中小のお店が多いと思いますが、こういう店こそ海外に進出してほしい。そのためのプラットフォーム作りを将来一番やりたいこととして見据えています。
いきなりそこにはたどり着けないので、第1ステップとして、「インバウンド×酒の体験」で、インバウンド顧客に日本国内で酒の体験を提供する事業から始めて事業基盤を確立したいと考えています。ついで第2ステップとして「アウトバウンド×酒の体験」で、「酒の体験」をテーマに海外に進出し、海外の橋頭保を作っていきたいと考えています。そして最後に第3ステップの「アウトバウンド×食の体験」まで持っていけたらと考えています。
実は今年の夏、浅草に「日本酒×インバウンド×体験」として体験型施設をオープンさせる予定です。今、日本酒の海外での人気が急速に高まってきていますし、インバウンド需要も急速に伸びています。そのような中で、海外に打って出たいと思っている酒蔵さんにとって頼れるプラットフォームになりたいと思っています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私が事業を始めたきっかけは、近年海外で日本の食文化への関心が高まり、そのポテンシャルの大きさを感じたことです。そして、そのポテンシャルはまだまだ活かし切れていないと感じています。
そして、実際に起業のきっかけとなる2つの原体験があります。私は2019年からの3年間ロンドンにいて、その際に自分の両親をロンドンに招いたのですが、日本食が恋しくなった両親を現地では有名な日本食チェーン店に連れて行きました。ところがそこで出てきたカレーライスが信じられないぐらいおいしくなかった。しかし、その店は現地の人には人気で行列もできているのです。このようなものが日本の食文化だと勘違いされていると思うと、悔しい気持ちになりました。もっと「本物の味」を世界に広め、にせ物を駆逐したい、そう思いました。
もう一つの原体験としては、ロンドンにいる際に気候変動への取組みを通じて、自分の本当のモチベーションの源泉を感じたことがあります。私は、グローバル金融業界の気候変動の取組みを束ねるGFANZという団体の主要メンバー会議にアジアからの唯一の参加者として参加していました。その時の私のモチベーションは「日本のため」でした。そして自分の会社の利害を超えて様々な活動を行いました。それが非常にやりがいがあり、自身の成長を感じられ、そして何より楽しかった。この時「日本のため」に働くことの楽しさを知ってしまいました。
そして、実際に起業を決意するにあたっては、仲間の存在が大きかったです。以前同じ保険会社で海外展開を共に牽引した2人の仲間です。。1人はその後日本で飲食ベンチャーのCOOとして活躍し、もう一人は日系企業の社内ベンチャーをシンガポールで複数立ち上げ、社長として成功しました。この二人に自分のビジョンを語り、意気投合できたことで起業の道に進む決意ができました。
この三人のチームは非常に心強いです。彼らは、同じ保険会社の海外展開の初期から一緒に戦ってきた仲間です。戦うフィールドは保険から食文化へ変わりますが、海外展開という意味では3人の経験とノウハウが役に立つと確信しています。今後もこの頼りになる仲間と共に挑戦を続けていきたいと思っています。
「日本の食文化の輸出」を通じて、日本の自信と成長を取り戻したい
仕事におけるこだわりを教えてください。
私の仕事におけるこだわりは、一言でいうと「Why」を大事にしたいということです。というのも、一般的には若い世代が多いスタートアップにおいて、私の起業は比較的遅めだったということにも関係があるかもしれません。今まで自分を育ててくれた社会に感謝しながら、これまでの経験を生かして、世の中のため、日本のためになることを事業としてやっていきたいと思っています。
その「Why」を実現するフィールドとして「日本の食文化の輸出」を選び、これを通じて日本が「失われた30年」の間になくしてしまった自信と成長を取り戻す手助けができればという思いで事業を始めました。
会社設立にあたり、この「Why」を言語化するために設立趣意書を時間をかけて書きましたが、それを読んでくれた方々からの反応は大きく2つに分かれていました。1つは「Why」に共感してくれる方々。もう1つは「で、何をするの?どうやってもうけるの?」という風に「What」とか「How」を尋ねる方々でした。
もちろん個人の価値観は様々なのでどちらが良いとかどちらが悪いということではないですが、私としては、この「Why」に共感してくれて共に挑む仲間が集まる会社を目指していきたいと思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
まだ最初の事業の立ち上げ前なので「これから」というところですが、一つ挙げるとすると、日本酒の業界内での足場がまだ確立されておらず、関係者とのつながりを築くのに時間がかかっているという点です。
最初は日本酒のイベントに飛び込んでつながりを広げようとしましたが、正直あまりうまくいきませんでした。業界全体が信頼関係で成り立っているため、紹介がないと関係性を構築するのが難しい面がありました。今では徐々につながりが広がってきており、今後も少しづつ広げていければと思っています。
今後予想される壁については、正直なところあまり思い当たるところがなく、将来の事業拡大を想像するたびにワクワクしています。少々楽観的過ぎるのかもしれませんね(笑)。よく楽観的なことや新しいアイディアを私が言って、チームメンバーからたしなめられることがあります。
実際のところは、具体的な壁は「やってみないとわからない」ということかと思います。一応保険業界出身の3人ですので、リスク管理はしっかりしているのではないでしょうか(笑)。
日本の歴史・伝統・文化を世界に広めたい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
先ほどの「Why」の話と重なりますが、私のモチベーションは、日本の食文化を世界に広めたいという強い思いです。前例のない中での挑戦であるためストレスを感じることもありますが、ただ儲けるのではなく、世の中のため、日本のためになることをやっていきたい。日本酒や日本の食文化が世界に広まることで「日本の食文化の輸出」という新たな産業が育っていくという確信があります。もっと言えば、日本の歴史・伝統・文化が世界から憧れられる存在となることで日本が自信を取り戻す、そんな世界を目指して進んでいくことが大きなモチベーションになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
豊洲社中としては、先ほども言った通り海外展開をする飲食店のためのプラットフォームを作ることを目指しています。そのスケールは10店舗や100店舗ではなく、より大規模な1000店舗以上の展開をサポートし、世界中にネットワークができたらいいなと思っています。
個人としては、ビジネスとして成立するかどうかは別にして、日本の歴史・伝統・文化を世界に広めることが人生を通じてやりたいことの一つです。将来的には食文化だけでなく、新しい領域にも挑戦する可能性を考えていますが、まずは今の事業に集中して取り組んでいきたいと考えています。
▼プレスリリース
「日本酒×インバウンド×体験」をテーマにした日本酒体験施設「WASAKE Sake Experience」のお知らせ (2024/10/21)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000149342.html
40代、50代こそ勇気をもって新たな一歩を踏み出してみてほしい
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。
日本全体は現在厳しい状況にあり、特に、内需中心の業界で生産性の向上やイノベーションが難しい業界は今後も苦戦が続くと思います。私もそのような業界の大企業で長年働いてきましたが、そのような環境の中で会社に依存して生きていくことに疑問を感じ、起業を決意しました。
今後日本は大きな変化の時代を迎えると思います。というより、そうしなければいけません。その変化を起こす責任は我々の世代にあるのではないでしょうか。もちろんやり方は人それぞれだと思いますが、もし40代や50代で世の中を変えたい、起業したいと考える方がいるのであれば、勇気をもって新たな一歩を踏み出してみてほしいです。
私は坂本龍馬が好きで、豊洲社中という名前も坂本龍馬の亀山社中から来ているわけですが、彼の言葉として「世に生を得るは事を成すにあり」というものがあります。この言葉のように「何のために生まれてきたのか、何のために自分の人生を使うのか」という視点で考えると、自分の視野を広げる手助けになると思います。そして、結果として豊かな人生を歩むことができるのではないでしょうか。
少し偉そうに話してしまったかもしれませんが、組織勤めを否定したいわけではありません。経験を積んだ我々世代だからこそできることがあると思うのです。同じ世代の方々で、新しいことに挑戦し、世の中を変えたいという気持ちを持つ方が増えていってくれたら嬉しいです。
サーブコープについて
起業家の新たな拠点として注目を集めるシェアオフィス。その中でも、多くの起業家から支持を得ているサーブコープの魅力に迫ります。今回は、サーブコープを利用している起業家の方にお話を伺い、選んだ理由や使用感、そしてどんな人におすすめなのかを探ってみました。
新しい出会いと可能性を生み出すシェアオフィス
今回、サーブコープを選んだ理由、知ったきっかけを教えて頂けますか?
サーブコープ日比谷を選んだ理由はオフィスの雰囲気が新しく、日比谷という立地は電車の路線が便利なのと、以前働いていた会社のすぐ近くであり、よく知っている場所であったことも選んだ理由です。また、出会いの場が設けられており、同じような境遇の方々とお会いする機会が多く、様々な出会いが期待できそうだと感じました。
サーブコープを知ったきっかけは、会社登記のためにシェアオフィスを探していた時に見つけました。実際に3つほどのシェアオフィスを見学した中で、サーブコープの日比谷オフィスに一目惚れしました。さらに、リーズナブルなコストも決め手の一つでした。
起業家にとって、快適で刺激的な環境は創造性を高め、モチベーションを維持するうえで欠かせない要素をサーブコープ日比谷オフィスは持っていると感じました。
多拠点利用の便利さ
実際に利用してみて、気に入っている点やお勧めポイントを教えてください。
契約した拠点だけでなく、様々な拠点が同じ条件で使えるのが便利です。この多拠点利用のシステムは、起業家の働き方に柔軟性をもたらし、時間の有効活用やワークライフバランスの向上にも繋がっています。
さらに、サーブコープの魅力の一つに、異業種交流の機会があります。月に一度開催されるイベントでは、オフィスで知り合った方から「日本酒に関することならこの方と会うと良い」といった紹介を受け、実際に仕事に繋がる機会もありました。そのため、異業種の方と繋がれるのは本当に良い機会となっています。
サーブコープは、普通のオフィススペース以上の価値を提供してくれています。新しいビジネスの可能性を広げ、起業家同士の繋がりを生み出す場として、あなたも新しいオフィス探しの際は、サーブコープを選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:牧内 秀直 氏
- 東京大学工学部を卒業後第一生命へ入社。理系出身を生かし当初は資産運用に従事。
- 社内留学制度で選抜され米国でMBAを取得したことを機にキャリア転換し、保険事業の海外展開に立ち上げ期から16年にわたって従事し、多くの海外M&Aをコアメンバーとして推進。米国大型買収案件(約6千億円)でも全社のプロマネを務める。
- ’19年から第一生命英国法人に勤務し社長にも就任。気候変動分野の国際会議(GFANZ)においてアジア唯一のメンバーとして多くの活動を展開。
- ’22年に帰国後、同社の国内保障事業部門ヘッドとして保険事業全体の戦略策定に従事。併せて国内スタートアップへのCVC投資を推進し、スタートアップの社外取締役に就任。
- ’23年にPwCサステナビリティに入社。金融業界のサステナビリティに関するコンサル業務に従事。
- ’24年に共同創業者と共に豊洲社中株式会社を設立しCo-Founder CEOに就任。「日本の美味いものを共に世界へ」をミッションに活動開始。
企業情報
法人名 |
豊洲社中株式会社 |
HP |
|
設立 |
2024年1月22日 |
事業内容 |
|
沿革 |
2024年1月22日 設立 2024年9月 「日本酒×インバウンド×体験」をテーマにした最初の事業を開始予定 |
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