【#643】スーツで人生は変えられる。コンセプトからスタイリングまで一貫したオーダーメイドスーツ「VERO」|代表取締役 浅田倫央(株式会社稔里)

株式会社稔里 代表取締役 浅田 倫央
22歳でオーダースーツ「VERO」をスタートさせた浅田倫央氏。様々な苦労の日々を経て、今や出張採寸を軸に全国を飛び回る若き職人として注目を集めています。「スーツを仕立てて終わり」ではなく、その人の骨格から仕事スタイル、生き方までを丁寧にヒアリングし、コンセプトから一貫してスタイリングを提案するという独自のアプローチで、顧客の業績や所作までを変えてきた。今回は、浅田氏に事業の詳細や起業のきっかけ、そして今後の展望について詳しくお話を伺いました。
スーツは、その人の人生をデザインするもの
事業の内容をお聞かせください
当社は、オーダースーツ「VERO」を中心に、出張採寸による完全カスタムスーツの制作・販売を行っています。一般的なオーダースーツはお客様にご来店いただいて採寸する形が多いと思いますが、弊社の場合は基本的に出張して採寸を行っています。
活動エリアは関西がメインですが、月に1回は東京にも足を運んでいます。最近では個人のお客様に加え、企業への法人採寸も増えてきており、まとめてご注文いただくケースも多くなっています。
当社の最大の特徴は、スーツの「形のオーダー」にとどまらない点です。お客様の骨格、顔つき、髪型、普段されているスポーツ、さらにはお仕事の内容まで丁寧にヒアリングした上で、私がコンセプトからスタイリングまで一貫してご提案しています。
たとえば、人前で話すことが多い方の場合、カラフルすぎるとスーツの視覚的なインパクトが強すぎて逆効果になることがあります。そういった点まで含めて、色合いやシルエットをご提案するのが私のスタイルです。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?
事業のルーツをたどると、小学3年生の頃まで遡ります。友達のお父さんがとてもスタイリッシュで、いつかかっこいい大人になりたいという憧れを抱いたのがファッションへの関心の原点です。
その後も服には人一倍こだわり、中学・高校時代は少ない小遣いをやりくりしながら、自分なりにこだわった服を選んでいました。
学生時代野球に打ち込んでいたときも、野球チームのコーチ陣が経営者ばかりという環境に影響を受け、いつか自分で事業をやりたいという気持ちが芽生えていました。しかし、長い間きっかけをつかめずにいました。
転機は大学3年生の時です。自己分析を行い、現在から逆算して「自分が本当に好きなことは何か」を掘り下げていくと、自然と小学3年生の自分にたどり着きました。そこで、これまでずっとファッション、とりわけスーツに惹かれてきたという確信が生まれました。
加えて、20歳の成人式で初めてオーダースーツを仕立てたことが事業化への背中を押しました。野球で体が筋肉質になっていたこともあり、既製品のスーツがなかなか合わないという悩みもあったからこそ、オーダーの可能性を強く実感できました。
その後、大学4年の夏に22歳で株式会社稔里を設立し、オーダースーツ「VERO」をスタートさせました。社名の「稔里」には、父と母の名前を合わせた思いが込められています。また「VERO」はイタリア語で「芯」を意味し、自分の軸をぶらさないという信念の表れでもあります。
「目の前のお客様に全力で。」それが信念であり、壁を越える力
仕事におけるこだわりを教えてください。
私のこだわりは、「スーツを作って終わり」にしないことです。スーツはただの衣服ではなく、人の所作や立ち居振る舞いを変えるものだと信じています。
実際、私がオーダースーツをお届けしたお客様の中には、「スーツを着てから歩き方が変わった」「姿勢がよくなった」という声をいただくことがあります。
さらには「契約が取れるようになった」「業績が上がった」というご報告をいただいたこともあります。もちろん、それがスーツだけの成果かどうかはわかりません。それでも、丁寧にヒアリングを重ね、心を込めて仕立てた1着が、その方の自信やオーラを引き出すきっかけになっているとしたら、これ以上嬉しいことはありません。
そのために私が大切にしているのは、お客様のことを深く知るということです。骨格・顔つき・仕事内容・生き方など、その人の「内側」を理解して初めて、本当の意味でのオーダーが成立すると考えています。
採寸前には事前に電話でヒアリングを行い、当日も丁寧にお話を伺うようにしています。お客様の人生に長く寄り添う存在でありたいと、常に心がけています。高いお金をいただいてスーツをお作りする以上、そのご縁はとても大切なものだと思っていますし、二人三脚でお客様の成長に関わっていきたいという気持ちが根本にあります。

起業から今までの最大の壁を教えてください
一番大変だったのは、23歳の頃に経験した金銭トラブルです。独立当初は、別のスーツ屋に弟子入りするような形で代理店として活動していましたが、そのオーナーと売上金のトラブルが起こってしまいました。信頼していた相手だったので、精神的にも厳しかったです。
その後、スーツだけでは生計を立てられない時期が約2年続きました。昼間はウォーターサーバー配達の正社員として働きながら、退勤後は交流会やアポイントをこなし、土日は出張採寸に充てていました。体力的にも厳しかったですが、それでも「目の前のお客様に全力で」という信念を持ち続けていました。
集客の難しさは今も変わらない課題ですが、当時は目の前の1人のお客様に誠心誠意向き合うことが、やがて紹介という形で広がっていくことを信じて動き続けました。
北海道や福岡など全国各地に出向きながら、少しずつ確かな実績を積み重ねてきました。苦しかった時期があったからこそ、今のお客様との関係を大切に思えますし、どんな状況でも地に足をつけて動き続けることの大切さを、身をもって学べたと感じています。
先輩を超えたい憧れが、今日も背中を押す
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
モチベーションは、ずっと目標にし続けている6つ上の先輩の存在です。その方もオーダースーツの事業をされていますが、表に出ることはほとんどありません。しかし、紹介で着実に売り上げをあげ続けておられます。
時にはお客様が被ることもあり、その存在をリアルに感じることがあります。いつか絶対に先輩を超えたいという強い思いが、今の私を動かしています。オーダースーツの事以外に、人間性やビジネス面でのアドバイスも多くいただきます。今の私はまだ未熟者ですが、今の私があるのは先輩の存在がとても大きいと感じています。
また、定期的にジムでトレーニングをしたり走ったりすることで、体を動かしながら心の状態を整えています。仕事の実績だけでなく、私生活の整え方もモチベーションの維持に大きく繋がっていると実感しています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
オーダースーツは、一生続けていきたい仕事です。スーツが心から好きですし、これからも一人ひとりに向き合いながら丁寧に仕立て続けていきたいと思っています。また、ワニ革の財布や小物、バッグなどのオーダー小物も手掛けており、今後より伸ばしていきたいと考えています。
更に、今年5月からは京都で24時間フィットネスジムの運営もスタートします。もともとトレーニングは趣味として続けており、2年ほど前にはフィジークの大会にも出場した経験があります。
今回はご縁があって既存のジムを引き継ぐ形でのスタートとなります。会員制の24時間営業で、専属パーソナルトレーナーによるトレーニング指導も行います。
オーダースーツとジムは一見別の事業に見えますが、たとえば体型が変わってきたお客様へのパーソナルトレーニングをご提案したり、スーツを通じて体づくりへの意識が芽生えるといった相乗効果も期待しています。
どちらも「自分が好きなこと」を仕事にしているからこそ、全力で取り組めると感じています。チャンスが来た時に掴めなかった後悔だけはしたくないというスタンスは、これからも変わらないと思います。

素直さが、最大の武器になる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
「素直さ」を常に持ち続けてほしいです。
若い頃は特に、自分の尖った部分や意地を大切にしたい気持ちがあると思います。それ自体は決して悪いことではありません。しかし、年齢や立場に関係なく、いただいたアドバイスをまず素直に受け取れるかどうかが、成長のスピードを大きく左右すると実感しています。
私自身、オーダースーツの仕事を続ける中で、納期のトラブルやお客様への対応など、思い通りにいかない場面は数多くありました。そういった時に、プライドを保ちながらも柔軟に受け入れる姿勢があるかどうかで、その後の関係性や自分の伸び方が大きく変わってきます。
素直に学び続ける姿勢さえあれば、人はどんどん変わっていけると思います。まずは動いてみること、そしてどんな経験からも学ぼうとする素直さを忘れてはいけないと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:浅田 倫央 氏
滋賀県の琵琶湖成蹊スポーツ大学卒業後、22歳でオーダースーツ「VERO」をスタート。2025年株式会社稔里を設立。出張採寸を軸に、個人・法人問わず関西を中心に全国各地でオーダースーツの制作・スタイリング提案を行う。代理店時代の金銭トラブルや配達員との二足のわらじの時期を乗り越え、紹介ネットワークを着実に拡大。オーダー小物の展開に加え、2025年5月より京都にて24時間フィットネスジムの運営もスタート。現在26歳。
企業情報
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法人名 |
株式会社稔里 |
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HP |
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設立 |
2025年 |
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事業内容 |
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