MASO株式会社 代表取締役 荒井 貴光

カメラ映像と生成AIを掛け合わせ、現場の業務改善や人手不足の解消を支援するMASO株式会社。同社の特徴は、エンドユーザーへの直接販売ではなく、SaaS企業やプラットフォーマーを通じた間接展開モデルにある。カメラ導入の知見から全国施工・保守まで一気通貫で担うことで、1万台超の大規模運用実績を積み上げてきた経験を持つメンバーを有する。今回は代表取締役の荒井貴光氏にノーコード画像解析プラットフォーム「MitteFlow(ミッテフロー)」を軸とした事業の内容や、起業に至った経緯、そして「AIと共に産業を発展させる」という想いについて伺いました。

 

カメラを「現場の目」に変え、人手不足を解消する

事業の内容をお聞かせください

私たちは、カメラを活用して現場業務を改善し、人手不足の解消につなげる事業を展開しています。

 

たとえば飲食店では、カメラでテーブルの状態を把握し、「食事中」「片付け済み」「準備完了」といった状況を自動で検出します。レジ後にテーブルがきちんと片付いたかを確認することで、行列ができる店舗では回転率の向上につなげることができます。チェーン店であれば、本部が全国の店舗状況を一括で管理できるため、業務改善だけでなく売上向上にも貢献できるのです。

 

現在、SaaS企業やプラットフォーマー、大手企業などがさまざまな業界にサービスを提供していますが、必ずしもカメラ活用の専門知識を持っているわけではありません。そのため、現場へのカメラ導入や運用において多くの課題が生まれています。私たちは、そうした企業に対してカメラ活用の知見を提供し、全国展開をスムーズに進めるための支援を行っています。

 

特徴は、飲食店や建設現場などのエンドユーザーに直接サービスを提供するのではなく、現場向けのサービスを展開するSaaS企業やプラットフォーマーを支援している点です。たとえば建設業界では、工程管理やモノの管理を行うサービスにカメラを組み合わせることで、現場の状況をより正確に把握できるようにしています。

 

提供している「MitteFlow(ミッテフロー)」の強みは、大きく三つあります。一つ目はカメラと簡単につなげられること、二つ目は施工まで含めてトータルでサポートできること、そして三つ目はリモートでの保守対応ができることです。

 

導入までの流れもシンプルです。まず、実現したい内容をヒアリングし、その目的に合わせて設定済みのカメラセットを発送します。現場では取り付けて接続するだけで利用を開始できるため、最短1週間ほどで導入が可能です。導入後は、パートナー企業が現場のお客様を支援し、私たちはその運用結果をもとにより早く成果を出すためのアドバイスを行っています。

 

画像解析を行う会社は数多くありますが、企業のサービスに組み込む形で、全国展開から保守・運用支援まで一気通貫で対応できる会社は多くありません。私たちは、1万台を超える規模のシステムを複数運用してきた実績を持つメンバーを有しており、大規模なカメラ導入を支援してきたノウハウを強みとしています。

 

 

事業を始めた経緯をお聞かせいただけますか。

もともとは防犯カメラを扱っていましたが、その中でカメラは業務改善にも活用できるのではないかと考えるようになったことが起業のきっかけです。

 

防犯カメラは、問題が起きたときに記録を確認するために使われることが一般的ですが、それだけではなく、日々の業務をより良くするためにも活用できるのではないかと感じていました。そうした思いを持ちながらお客様と接する中で、多くの企業が共通する課題を抱えていることに気づきました。

 

たとえば、どの機種を選べばよいのか、どこに設置すべきなのか、ネットワークにどのようにつなげればよいのか、全国で対応できる施工会社をどう探せばよいのか、導入後の運用管理をどう行えばよいのか。こうした悩みを持つ企業が非常に多くありました。そこで、カメラ導入に関する課題を支援できれば全国の現場で業務改善を広げていけるのではないかと考え、起業に至りました。

 

前職では、パナソニックでエンジニアとして勤務し、110番・信号制御・高速道路管理という社会インフラの業務改善システム開発のプロジェクトリーダーや、ネットワークAIカメラの中で動作するAIアプリケーションの開発責任者を務めてきました。営業段階から納品まで一貫して関わり、全国へ展開していく経験は、現在の事業にも大きく活きています。

 

AIと共に、産業を発展させる

仕事において譲れないこだわりは何でしょうか。 

大切にしているのは、きちんと役に立つ良いものを作ることです。プロジェクトを進めるうえでは、「自分が生きて、周りを生かす」という順番を大切にしています。まずは自分自身が前に進み、その延長線上で周囲の人を生かし、支えていくという考え方を大切にしながら、事業に向き合っています。

 

社員や業務委託のメンバーとも共有している理念は、生成AIを活用し、産業の発展に貢献していくことです。AIは変化の大きい分野だからこそ、それをどのように生活や産業の発展に活かしていくのかを、みんなで考え続けていきたいと伝えています。

 

AIが人の仕事を奪うのではないかと語られることもありますが、私はそうは考えていません。かつて車が普及したことで馬車は減りましたが、その一方でガソリンスタンドや倉庫、工場など、新しい仕事が生まれ、社会はより豊かになっていきました。

 

AIも同じように、仕事そのものがなくなるというより、産業の流れが変わっていくものだと考えています。たとえば、カメラによって人の目で確認していた作業が自動化されても、カメラを設置する人、保守する人、清掃する人といった役割は残ります。そして人は、より難易度の高い領域で価値を発揮できるようになります。実際に私たちの導入先でも、カメラが自動化した業務の分だけ、現場で早期に問題を発見できるため、余った時間を付加価値づくりに集中できるようになったと声をいただいています。

 

新しい技術によって新しい仕事が生まれ、産業がさらに大きくなっていく変化を前向きに捉え、社会に役立つ形で実装していくことが、私たちのあるべき姿だと考えています。

 

 

起業してから、最大の壁はありましたか。

常に感じているのは不安です。

 

自分が掲げたビジョンが本当に世の中に受け入れられるのか、コロナや地震のような予期せぬ出来事によって事業が止まってしまうのではないかという心配があります。

 

しかし幸いなことに、人とのつながりに恵まれ、「なんとかしたい」「一緒にやろう」と声をかけてくださる方が少しずつ増えていきました。そのおかげで、大きな問題に直面することなく、ここまで進めることができています。

 

資金面での取り組みを伝えれば「自分が出すよ」と言ってくださる方がいたり、こういう仕事に挑戦したいと話せば「それなら仕事を紹介するよ」と手を差し伸べてくださる方がいたりしました。多くの方に支えていただいていることを、本当にありがたく感じています。

 

また、妻の存在も大きな支えでした。妻の父が起業家だったこともあり、事業に挑戦することへの理解がありました。「やりたいことをやったら」と背中を押してくれたことは、前に進む大きな力になっています。

 

進み続けるモチベーションはどこにあるのでしょうか。

これまで出会ってきた方々への感謝の気持ちです。

 

この事業は、お客様や仲間が困っていたことに対する、私なりの一つの回答でもあります。これまでお世話になってきた方々に、事業を通じて恩返しをしたい。その想いが、今も大きな原動力になっています。

 

実際に現場で導入いただいた際に、「管理しやすくなった」「使いやすくなった」「ありがとう」と声をかけていただくことがありました。そうした言葉をいただけたときは、本当に嬉しく感じます。

 

まずは知ってほしい。10年後にカメラ30万台がつなぐ社会へ

今後の展望をお聞かせください。

いま私たちが最も力を入れたいのは、この取り組みを多くの方に知っていただくことです。

 

私たちが提供しているカメラ活用のスキームは、まだ世の中に広く知られているものではありません。だからこそ、こうした仕組みがあるという事実そのものを、一人でも多くの方に届けていきたいと考えています。

 

この技術は、特定の業界だけでなく、さまざまな現場で活用できます。飲食店はもちろん、介護施設、コンビニ、スポーツジム、銀行など、人手不足や業務効率化に課題を抱えるあらゆる業界に展開できる可能性があります。

 

10年後には、30万台のカメラがつながり、30万人分の人手不足を解消できる社会を目指しています。日本では10年後に300万人以上の労働者が不足すると言われており、カメラ1台で1人分の業務を代替できる場面が多いことから、その10%を補う存在として30万台という目標を設定しました。どの業界も人手不足という共通の課題を抱えているからこそ、私たちの仕組みを知っていただくことが、その解決に向けた第一歩になると信じています。

 

直近の資金調達を通じて、プラットフォームのさらなる拡充にも取り組んでいます。簡単に設置できる仕組みを整えることに加え、導入後にお客様が困ったとき、サポートセンターですぐに対応できる体制を強化しています。

 

例えば店舗では、導入後にレイアウトが変わることで、カメラの死角が生まれたり、検知の精度が変わったりすることがあります。そうした変化にも対応できるよう、リモートで状況を確認し、必要に応じて地域の施工パートナーと連携しながら最適な状態に調整していくといった運用体制づくりにも力を入れています。

 

 

迷わず、まず一歩を踏み出してほしい

起業を考えている方へメッセージをお願いします。

迷わず、まず踏み出してほしいと思います。最初からすべてが見えている必要はありません。一歩踏み出してみることで、次に何をすべきか、誰に相談すべきか、どの方向に進むべきかが少しずつ見えてきます。

 

私自身も、最初から完璧な計画があったわけではなく、まず会社を作ることから始めました。そこから1年の間に人とのつながりが増え、事業への理解も深まり、自分たちが進むべき道が少しずつ明確になっていきました。

 

だからこそ、挑戦したい気持ちがあるなら、まず動いてみることが大切だと思います。

 

採用を強化されているそうですね。どのような人材が理想でしょうか?

一緒に働く方には、AIを活用して産業の発展に貢献したいという想いを持っていてほしいと考えています。

 

今は、開発そのものもAIが担うようになってきている時代です。だからこそ、過去にどのような経験をしてきたか、何のスキルを持っているかだけではなく、「社会にとって正しいものを提供したい」という信念や、最後までやりきる力がより重要になると感じています。

 

前職でカメラやAIに関わっていた経験がなくても問題ありません。たとえば会計の知識や飲食店での経験など、一人ひとりが持つ異なる知見の組み合わせが、お客様への深い理解につながると考えています。

 

カメラやAIを活用し、現場の課題解決や産業の発展に貢献したいという興味や想いを持っている方とは、ぜひ一度お話しできればと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:荒井 貴光 氏

大学卒業後、パナソニックにエンジニアとして入社。交通インフラなどの大規模プロジェクトでプロジェクトリーダーを務め、防犯・セキュリティカメラ事業に携わる。営業から納品、全国展開までを一貫して経験。カメラ活用による業務改善・人手不足解消の可能性に着目し、2024年6月にMASO株式会社を創業。代表取締役として、カメラ映像と生成AIを掛け合わせたプラットフォーム事業を率いる。

 

企業情報

法人名

MASO株式会社

HP

https://www.makeaisociety.com/

設立

2024年6月10日

事業内容

  • ノーコード画像解析プラットフォーム「MitteFlow(ミッテフロー)」の開発・提供(カメラ映像×生成AIによる現場業務の自動化・効率化)
  • SaaS企業向けパートナーモデル(既存SaaSに画像解析機能をバックエンドとして組み込むVideo Backend as a Service)
  • 人工知能および関連する情報サービスのコンサルティング・開発・構築・保守

 

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