株式会社ウィルズ 代表取締役社長CEO 杉本 光生

株式会社ウィルズは、上場企業の株価・企業価値の最大化を支えるIR(インベスター・リレーションズ)の専門会社です。個人投資家向けの株主管理プラットフォーム、世界の機関投資家を網羅したデータベース、統合報告書の制作という三つの事業を、いずれも競合の少ないニッチ領域で展開しています。代表の杉本光生氏は、30年に及ぶIRコンサルティングの経験を経て、2004年にウィルズを設立しました。今回は、事業の中身から起業に至るまでの道のり、創業期に直面した壁、そして今後のビジョンまで、杉本氏に伺いました。

選択肢のないニッチ領域で、唯一無二の価値を提供する

どのような事業をされているのでしょうか?

当社は、上場企業のIR活動を専門に支援している会社です。現在は約500社の上場企業に対して、株主や投資家との関係づくりを支援しています。上場企業が向き合う投資家には、個人投資家、国内外の機関投資家など、さまざまな層があります。それぞれ求める情報やコミュニケーションの方法が異なるため、当社では投資主体に応じた三つのサービスを展開しています。

 

一つ目は、個人投資家向けの株主管理プラットフォーム「プレミアム優待倶楽部」です。株主の皆様に対して、株主優待をポイントとして付与できる仕組みを提供しています。投資額に応じてポイントを付与し、そのポイントをグルメや美容家電など、株主向け専用サイトに掲載された約9,000点の商品と交換することができます。

 

このサービスは、もともと、これまで紙で郵送されていた事業報告書や招集通知を電磁的に送るために、株主管理をDXし、効率化とコスト削減を目的に開始しました。たとえば、個人株主を多く抱える企業では、紙の優待カードの発行・管理に大きなコストがかかります。そうした仕組みを電子化することで、より効率的な株主対応が可能になります。

 

二つ目は、機関投資家向けIRのデータベース「IR-navi」です。世界中の機関投資家に関する情報を集約し、上場企業が投資家との関係構築を進めるための基盤として活用いただいています。どの投資家がどの銘柄の株式を保有しているのかといった情報を把握できるため、企業が戦略的にIR活動を行ううえで役立つサービスです。

 

三つ目は、統合報告書の企画・制作です。統合報告書は、上場企業が投資家に向けて、自社の業績や経営方針、成長戦略、非財務情報などを伝える重要なコミュニケーションツールです。当社では、企業の価値や方向性が投資家に正しく伝わるよう、企画から制作までを支援しています。

 

これら三つの事業に共通しているのは、IRという専門性の高い領域において、企業と投資家をつなぐ仕組みを提供している点です。IRは企業ごとの状況や投資家視点を深く理解する必要があり、単に情報を届けるだけでは不十分です。

 

前職でIRコンサルタントとして培った知見をもとに、企業の課題と投資家のニーズの双方を踏まえながら、実務に落とし込めるサービスを作ってきました。誰もが取り組みやすい領域ではないからこそ、専門性を活かし、上場企業のIR活動を支える存在でありたいと考えています。

 

現在の事業を始めた経緯をお聞かせいただけますか?

学生の頃から起業への憧れを持っていました。とりわけリクルートの創業者である江副浩正さんに強く憧れ、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)の不動産部門に就職しました。しかし、入社した時期はちょうど不動産バブルが崩壊したタイミングで、早い段階で退職することになりました。  

 

次に入ったのは、先輩が立ち上げたインテリジェンスという人材派遣・紹介の会社でした。当時はまだ社員10人ほどの規模で、私は営業として働いていました。成長していく会社の現場を間近で経験できたことは、後の起業にも大きな影響を与えました。 

 

その後、リクルート時代の先輩のご縁で、当時国内最大のIR会社だったアイ・アールジャパンに転職しました。ここでIRコンサルタントとして長く経験を積むことになります。周囲に刺激を与えてくれる起業家がたくさんいたため、私の中の起業への思いは消えませんでした。そして38歳のとき、ここでやらなければ一生できない、これがラストチャンスだと一念発起し、起業に踏み切りました。

量より質。安売りしない、高付加価値という流儀

仕事におけるこだわりや、譲れない軸を教えてください。

私が大切にしているのは、量よりも質を追求することです。インテリジェンス時代に、長い時間をかけて努力し、労働量で成果を出すという考え方に触れる機会がありました。もちろん、それも一つの大切な姿勢だと思います。ただ、私自身は、たとえ短い時間であっても密度の高い仕事をし、お客様にとって本当に価値のあるものを提供したいと考えるようになりました。

 

そのため、私たちは価格の安さを前面に出すのではなく、専門性やサービスの質によって選んでいただけるサービスづくりを大切にしています。IRという領域は、企業ごとの状況や投資家の視点を深く理解する必要があり、単に作業をこなすだけでは十分な価値を提供できません。

 

だからこそ、誰もが簡単に真似できるものではなく、専門的な知見をもとにした高付加価値なサービスを提供することにこだわっています。お客様にとって本当に必要な支援とは何かを考え抜き、結果として「この会社に依頼してよかった」と感じていただける仕事を積み重ねていきたいと考えています。唯一無二の価値を磨き続けることが、お客様への貢献につながるという信念を大切にしながら、これからもサービスづくりに向き合っていきます。

 

起業から今までで、最大の壁は何でしたか?

起業後、最初に大きな壁となったのは、主力サービスである「IR-navi」の導入実績をつくることでした。起業して一番実現したかったのが、このIR-naviでした。ようやくサービスを完成させたときには、大きな手応えと感動がありました。

 

しかし、実際に上場企業へ提案してみると、想像以上に厳しい現実に直面しました。約500社に提案して回りましたが、実績がないものは導入できないという理由で、提案はなかなか前に進みませんでした。売上が立たないまま時間だけが過ぎ、半年ほどで手元資金も底をつきかけました。税理士をしている父からは、事業をやめれば一定の利益は手元に残ると言われ、撤退を勧められました。

 

そこで、背水の陣で狙いを定めたのがパナソニックでした。本気度を示すため、機材をすべてパナソニック製に買い替えたうえで大阪へ向かい、プレゼンに臨みました。プレゼン自体には高い評価をいただいたものの、やはり実績がないという理由で、一度は導入を見送られてしまいました。

 

それでも諦めきれず、A4で4ページにわたる手紙を送った結果、1週間のトライアルの機会をいただき、大阪本社、ニューヨーク支社、ロンドン支社で実際に使っていただけることになりました。先方社内には、従来の紙のレポートで十分ではないかという慎重な意見もありましたが、担当の部長が社内を説得してくださり、最終的に正式な発注が決まりました。

 

この一社の実績を得られたことで、状況は大きく変わりました。改めて企業を訪問すると、以前は導入に踏み切れなかった企業からも、次々に契約が決まるようになりました。結果として、半年のあいだに時価総額が数兆円規模の企業を含む多くの上場企業に導入いただくことができました。

 

振り返ると、最初の一社をどうつくるかが、起業後の最大の壁だったと思います。どれだけ良いサービスであっても、実績がなければ選ばれにくいという壁を越えるまで諦めずに動き続けたことが、その後の成長につながりました。

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

ここで諦めるわけにはいかないという思いです。自分が取り組んでいることへの自信もありますし、最後にはきっと世の中に認めてもらえるはずだという確信もあります。その気持ちが前に進み続ける原動力になってきました。一方で、今でも不安がまったくないわけではありません。

 

いつかお客様に飽きられてしまうのではないか、必要とされなくなってしまうのではないかという恐怖は常にあります。だからこそ、立ち止まらずに挑戦し続けることを大切にしています。私にとってのモチベーションは、第一線に立ち続けることそのものなのだと思います。変化の激しい市場の中で、常に価値を生み出し続ける存在でありたいという一心で、今も事業に向き合っています。

 

富士山の五合目から、いざエベレストの頂へ

今後やりたいことや、展望、野望をお聞かせください。

富士山にたとえるなら、今はまだ五合目か六合目あたりです。まずは頂上を目指し、あわよくばエベレストにも登りたいと思っています。自分が描いてきた世界は、まだ半分ほどしか実現できていません。だからこそ、今も事業を続けているのだと思います。 そろそろ引退してもいい歳かもしれませんが、人生の最後に後悔しないために、描いたものを全部やりきりたいと思っています。

 

具体的には、IR-naviのフルリニューアル版を開発しています。メインの言語を英語にして、ロンドン、エジンバラ、ニューヨーク、シンガポール、香港といった海外の投資家に広げていきたいと考えています。そして日本のすべての上場企業と世界中の投資家をオンラインで結ぶ、グローバルなIRインフラをつくることを目指しています。

 

現在、企業の経営陣と海外投資家をつなぐ役割は、主に証券会社が担っています。もちろん重要な役割ではありますが、その一方で、手数料や仕組みの面に課題を感じている投資家もいます。私たちは、こうした企業と投資家の出会いを、より効率的で開かれた形に変えていきたいと考えています。ネット上で完結できるIRインフラを整えることで、日本企業と世界の投資家がより直接的につながれる環境をつくりたいのです。

 

それが実現できれば、当社にとっても大きな成長につながりますし、資本市場そのものに新しい選択肢を提示できる可能性があると考えています。簡単な挑戦ではありませんが、私にとってはまさにエベレストの頂を目指すような、大きな挑戦です。

清水の舞台から飛び降りる覚悟があるか

これから起業しようとしている方へ、メッセージをお願いします。

中途半端な覚悟では、起業はできません。サクッと始めた人は、サクッと撤退していきます。それくらい厳しい世界だと思っておくべきです。私自身、38歳のときに起業しましたが、当時勤めていた会社では次期社長になる話もいただいていました。

 

しかし、それでは自分にとってはあくまで「雇われ社長」であり、本当に自分の人生を懸けた挑戦とは違うのではないかと感じていました。起業を決断する前には、京都の清水の舞台に立ち、長い時間下を見つめながら、本当に飛び降りるほどの覚悟があるのかと自問自答しました。それほど、自分にとって大きな決断でした。

 

起業後は、思い通りにいかないことの連続です。会社を続けていく中で、厳しい現実に直面する場面も必ずあります。だからこそ、起業には強い覚悟が必要です。それでもなお、自分の手で実現したい世界があるのなら、挑戦する価値はあると思います。厳しさを理解したうえで、それでもやりたいと思えるかどうかが、起業に向き合ううえで最も大切なことだと考えています。

採用を強化されているそうですね。どのような人材が理想でしょうか?

ともに事業を成長させていく仲間を募集しています。私たちが大切にしているのは、量よりも質を追求する姿勢です。誰もが取り組んでいる領域ではなく、まだ十分に開拓されていない分野で、独自性のある高付加価値なサービスを生み出すことにこだわっています。

 

価格の安さで選ばれるのではなく、提供する価値そのもので選ばれる存在でありたいという考えに共感し、本当に価値ある仕事をつくっていくことにやりがいを感じられる方と、一緒に働きたいと考えています。高い目標に向かって挑戦し続けたい方、専門性を磨きながら唯一無二の価値を提供していきたい方を歓迎します。ご興味をお持ちの方は、ぜひ採用情報をご覧ください。

 

株式会社ウィルズの採用サイトはこちら

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:杉本 光生  氏

同志社大学商学部卒業後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)に入社。株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)、アイ・アールジャパン株式会社、株式会社ストラテジック・アイアール(現ジー・アイアール・コーポレーション)などを経て、2004年10月に株式会社ウィルズを設立し、代表取締役社長に就任。30年に及ぶIRコンサルティングの経験を持つ。日本IR協議会メンバー。

企業情報

法人名

株式会社ウィルズ

HP

https://www.wills-net.co.jp/

設立

2004年10月

事業内容

     

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