- 井上 啓文(いのうえ ひろふみ)
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関西大学経済学部卒業。会計ファームで税務・経営の指導を経験。
財務・経営視点を踏まえた人事労務支援を強みとする特定社会保険労務士へ。
IPO準備企業や成長企業を中心に、労務監査、内部体制整備、コンサルティングなどを担当。
専門的な知見と現場経験を活かした的確なアドバイスを得意とし、顧客への手厚い対応が高い評価を得ている。2024年より社会保険労務士法人クラシコ所長に就任し、さらなる顧客貢献を目指す。

なぜ、イケてるベンチャーが「労務」で上場延期になるのか?
ビジネスモデルは秀逸で、投資家からの評価も高い。
それなのになぜか、上場直前になってIPOが延期、あるいはストップしてしまう‥。
その原因の多くは、社内に静かに潜んでいた「労務リスク」が、上場審査や労務監査(労務DD)の過程で一気に爆発することにあります。
実は、IPO準備企業には「恐ろしいほど共通する典型的な失敗パターン」が存在します。
「うちは社員のモチベーションが高いから大丈夫」「審査直前に何とかすればいい」と甘く見ている企業ほど危険です。
ここでは、絶対に潰しておくべき「3つの留意点」を解説します。
1. 不適切な労働時間管理
労働時間の適切な管理は、企業に多岐にわたる深刻なリスクをもたらします。
例えば、労働時間の端数切り捨て(15分未満)や勤怠打刻とPCログの乖離などは、未払い賃金の発生リスクに直結します。
未払い賃金は、労務監査上において
「財務インパクトが大きく、即時対応が必要な重大リスク」として扱われます。
発覚した場合は、現在は最大3年分(将来的に5年)遡及して支払い義務が発生するため、
一気に数千万〜数億円規模のキャッシュアウトとなり、上場スケジュールに大きく影響します。
遅くともN-2期までには、未払い残業や労働時間管理のリスクが自社に潜んでいないかを客観的に確認しておきましょう。
万が一発覚した場合は、迅速な解決が一番大切です。
給与計算ルールの整備や未払い賃金額の計算を早急に実施し、完全な精算と運用ルールの再構築を終えておく必要があります。
2. 管理監督者制度の誤用(いわゆる“名ばかり管理職”)
労働基準法上の厳しい要件を満たしていないのに、「マネージャー」や「店長」「部長」といった肩書きだけで安易に管理監督者とし、残業代を支払っていないケースです。
この判定は肩書きで決まるものではありません。
「職務内容」「責任と権限」「勤務態様(出退勤の自由度など)」「賃金等の待遇」の4要件に照らして、自社が法的に当てはまっているかを厳格に確認しなくてはなりません。
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■管理監督者の判断基準 ①労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること ②労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること ③現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること ④賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていることがなされていること |
御覧いただいてもわかる通り、これらの基準は実態に基づく総合的な判断が求められるため、自社のみで明確な線引きを行うことは容易ではありません。
実際に労務監査上でも、管理監督者に該当すると判断した場合の「具体的根拠」が鋭く問われます。
客観的な判定を行い、該当しない場合はただちに一般社員と同じ労働時間管理へ移行するか、職務権限と待遇を法基準に合わせて引き上げなければなりません。
我々も個々の事情をヒアリングしないと判断が難しい論点ですので、もし悩まれた場合は社労士など専門家にお問い合わせいただくのが良いかと思います。
3. 就業規則と実態の乖離
創業時にネットから拾った雛形や、知り合いからもらった就業規則をそのまま放置しているケースです。
例えば、
- 就業規則に「詳細は育児介護休業規程による」と書きながら別規程を作成していない
- 正社員向けの就業規則しかなく、パートや嘱託社員に適用される規程が存在しない
- リモートワークを実施しているのに規程が未整備
といった状態は、審査上、ガバナンス不備として評価されます。
また、働き方改革以降は重要な法改正が相次いでおり、継続的なアップデートが不可欠です。
IPO審査においては「法改正に適切に対応しているか」という観点にも対応しなくてはなりません。
法改正に未対応のまま運用している場合、それだけでコンプライアンス違反と判断されます。
就業規則は「あるだけ」では意味がなく、
「実態と完全にリンクし、継続的にアップデートされているか」が問われるのです。
まとめ(経営者へのメッセージ)
そして労務領域は、問題が顕在化した時点で、すでに経営インパクトが避けられない状態になっているケースがほとんどです。
時間が経てば経つほど、是正範囲は広がり、コストも膨れ上がります。
重要なのは、「問題が起きてから対応する」のではなく、起きる前に潰すことです。
労務監査を通じてリスクを可視化し、必要であれば早期に抜本的な是正を行う。
この意思決定を先送りせず、早期にリスクを可視化・是正することこそが、IPOを確実に実現している企業に共通する成功パターンです。
無料相談30分 最短距離でIPO成功へ
複雑化する法改正への対応、未払い賃金の精算、
審査に耐えうる規程整備とその運用定着――
これらを自社のみで短期間に完遂するのは、現実的に容易ではありません。
社会保険労務士法人クラシコでは、IPO支援に特化した専門チームが、
最短2ヶ月の初期労務監査から、制度改修、未払い賃金精査、運用定着支援までを一貫して伴走します。
「今の労務体制で、本当に審査を乗り切れるのか。」
その問いに少しでも不安がよぎるなら、問題が顕在化する前に一度現状を可視化することをおすすめします。
■ IPOを実現するための労務支援サービスの詳細はこちら
https://classico-ipo.com/
■ オンライン無料相談はこちら
https://classico-ipo.com/contact/
参考URL
・労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために_厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf
企業情報
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法人名 |
社会保険労務士法人クラシコ |
|
HP |
https://classico-os.com/ |
|
設立 |
2013年12月 |
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事業内容 |
成長企業から中堅企業を中心に、人事・労務領域の戦略支援を行う全国対応の社会保険労務士法人。 年間約25社の上場準備企業をサポート。上場審査を見据えた体制整備や運用改善に取り組み、持続的な成長を支える組織基盤の構築を支援している。 |
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