
この記事の答え
ベンチャー企業(スタートアップ)だけの生存率を示す公的な統計は、2026年10月時点で見当たりません。起業した企業全体では、2023年版中小企業白書で5年後の生存率は80.7%(実際より高めの可能性あり)です。日本政策金融公庫の調査では、2016年に開業した企業の89.7%が2020年末も続いていました。よく見る「5年後15.0%」は、元の調査がはっきりしない数字です。
「ベンチャー企業の生存率が低いのは本当か?」や「生存率の低いベンチャー企業の特徴を知りたい」と考えている人もいるのではないでしょうか?
今回は、ベンチャー企業(スタートアップ)の生存率を公的な調査の数字で紹介し、生存率が低いベンチャー企業の特徴を解説します。ベンチャー.jpが取材した起業家が、潰れかけた危機をどう乗り越えたかも紹介します。
ベンチャー企業(スタートアップ)に限った生存率を、国などが調べた統計は、2026年10月時点で見当たりません。ここでは、起業した企業全体の公的な数字を紹介します。
中小企業庁の2023年版中小企業白書によると、日本で起業した企業の5年後の生存率は80.7%です。ただし、実際より高めに出ている可能性があると注記されています。欧米の主な国では、5年後の生存率は50%を下回っています。
日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業パネル調査」では、2016年に開業した企業のうち、2020年末までに8.9%が廃業しました。倒産だけでなく、自分で事業をやめた場合も含みます。業種別では「飲食店、宿泊業」が14.7%、「小売業」が13.2%と高くなっています。
一方、ネットでよく見る「5年後15.0%、10年後6.3%、20年後0.3%」は、日経ビジネスの記事(2017年)で講演者が紹介した数字です。どの機関の調査かは書かれておらず、元のデータを確かめられません。
起業した企業の生存率・廃業率(調査ごとの比較)
| 調査 | 対象 | 生存率・廃業率 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 2023年版中小企業白書(中小企業庁) | 日本で起業した企業 | 5年後の生存率80.7% | 実際より高めの可能性 |
| 同上(国際比較) | 欧米の主な国 | 5年後の生存率は50%未満 | — |
| 新規開業パネル調査(日本政策金融公庫総合研究所) | 公庫の融資を受けて2016年に開業した企業3,517社 | 存続:2017年末97.5%→2018年末94.7%→2019年末92.0%→2020年末89.7%(廃業8.9%) | 公庫の融資先が対象 |
| 日経ビジネスの記事(2017年) | ベンチャー企業 | 5年後15.0%、10年後6.3%、20年後0.3% | 元の調査が不明 |
出典:中小企業庁「2023年版中小企業白書」コラム2-2-3、日本政策金融公庫総合研究所「新規開業パネル調査(第4コーホート)」、日経ビジネス「【創業20年後の生存率0.3%】を乗り越えるには」(2026年10月時点)
数字は調査によって大きく違いますが、起業した会社の一部は数年のうちに事業をやめています。生存率が低くなるのには理由があり、適切な対策を行うことが大切です。
ベンチャー企業の生存率が低い理由は、下記の3つです。
ベンチャー企業の成長に合わせた資金調達ができていないことが、生存率が低い原因となります。ベンチャー企業には、ベンチャー特有の「死の谷」が存在します。死の谷とは、ベンチャー企業が成長する段階で、必要資金の増加と調達資金に差が生じてしまうことです。
例えば、商品やサービスを開発する段階や販売を増やす段階が挙げられます。開発費や広告費が必要なのにも関わらず、適切な資金調達ができていなければ潰れてしまう可能性が高いです。

引用:Forbes JAPAN「『死の谷』を越えた起業家たちが当たり前にしている14のこと」(木暮康雄、2019年)
経理の知識を持っている経営者が少ないことも、ベンチャー企業の生存率が低い理由の1つです。経理の知識が乏しければ、経営を進める上で適切な資金管理ができません。
例えば、どんぶり勘定をしたことで適切な経営判断ができなかったり、正しいタイミングと方法で資金調達ができなかったりします。
経理ができる人を雇用するのもおすすめですが、経営者自身が経理の知識を身に付けることが大切です。経営者自身に経理の知識があれば、スピード感を持った決断ができます。
ベンチャー企業の生存率が低い理由は、ベンチャーキャピタルからの出資を得づらいことも挙げられます。信用度が低いため、銀行からの融資を受けづらいです。
ベンチャーキャピタルは、企業に投資することで将来リターンを得るために出資しています。そのため、ベンチャー企業のように将来が不透明な企業は、資金調達自体が難しいです。
クラウドファンディングやファクタリングなどを利用して、資金調達の手段を複数持っておくことが大切です。ただし、ファクタリング(売掛金を業者に売って、早めに現金にする方法)については、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者がいるとして、金融庁が注意を呼びかけています。(出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」)
生存率が低いベンチャー企業には、下記のような特徴があります。
ベンチャー企業の潰れる確率が高いかどうかは、事前情報だけで判断できることもあります。ベンチャー企業へ転職する際の指標にもなります。
経営者が財務関係の数字に弱いベンチャー企業は、生存率が低くなる可能性が高いです。数字に強くない経営者だと、感覚や勢いで経営判断をしてしまう恐れがあります。数字を分析し、適切な経営戦略を立てられなければ倒産してしまうでしょう。
過去の経営戦略と資金状況を確認すれば、経営者が数字に強いかどうかを判断できるためおすすめです。
会社全体の営業力が弱いベンチャー企業も、生存率が低いです。営業力が弱ければ、会社として仕事を獲得できないため、売り上げが作れません。売り上げが作れないと、徐々に衰退してしまうでしょう。
会社全体の営業力が強いかどうかは、優秀な営業マンがいれば良いというわけではありません。会社全体で営業に強い組織・システムが必要です。
営業力については、求人でどんな職種を募集しているのかによって判断できます。
生存率が低いベンチャー企業は、移転先のオフィスが縮小している可能性が高いです。移転先のオフィスが縮小しているということは、資金繰りが安定していないという証拠です。
ただ、オフィスの移転状況だけを見て、ベンチャー企業の生存率を判断するのはおすすめしません。
近年では、レンタルオフィスの普及によって都会の一等地にオフィスを低額で借りることも可能です。そのため、オフィスの移転状況は、他のポイントと合わせて補足材料として考えることをおすすめします。
生存率の高いベンチャー企業になるためには、下記4つのポイントを確認しましょう。
生存率の高いベンチャー企業は、優良なベンチャーキャピタルから資金調達できていることが多いです。優良なベンチャーキャピタルは、投資先企業に対して、厳しい審査を行っています。厳しい審査に通り、資金調達ができているということは、将来性が高い企業だと判断できます。
ベンチャーキャピタルが出資しているかどうかは、HPからも確認できるため事前に確認しておきましょう。
生存率の高いベンチャー企業は、競合の少ない事業を行っている可能性が高いです。競合が多い事業をしていると、知名度を伸ばして継続的な売り上げを立てられない恐れがあります。他社と明確な違いがあれば話は別ですが、大きな強みがないなら生存率は低いでしょう。
競合が少なければ、市場でのポジショニングが取れます。一定の顧客からは、長期的に利用される商品やサービスになるため、生存率も高くなるでしょう。
社員がやりがいを持って仕事をしているベンチャー企業は、生存率が高いです。
不満を抱えやすい点としては、求人と実際の給料の違いや待遇、福利厚生、社員同士の親密度が挙げられます。
社員に不満がなければ、ベンチャー企業特有の内部崩壊の心配もありません。企業としてだけでなく、企業の内部状況も把握することは、生存率の判断材料になります。
生存率の高いベンチャー企業は、適切な採用戦略が取れています。適切な採用戦略が取れていなければ、事業に失敗しやすいだけでなく、計画性がないことによって資金調達ができないなどのデメリットもあります。
採用戦略の具体例としては、人材採用の頻度から判断できます。「とりあえず人を増やそう」と考えていると、人件費だけが増えてしまうでしょう。採用戦略が明確化されていれば、1人に対する費用対効果までが綿密に計算されています。
株式会社スポーツネーション 三木 智弘さん
スポーツチームの新しい経営モデルづくりに取り組む三木さんは、資金調達に苦労しました。調達の目処は3ヶ月後でしたが、実際には約10ヶ月かかったそうです。その間、予定していた倒産ラインを超え、いろいろな人に頭を下げてお金を借りたといいます(本人談)。
株式会社Creative Group 中原 一真さん
取締役の辞任、お客様の倒産、コロナ禍の営業不振が重なり、税理士から「今すぐ資金調達をしないと会社が終わります」と言われました。それまでは自己資本で経営していましたが、すぐに銀行へ融資を申し込み、初めての資金調達をしたそうです。現在は完全黒字化し、無借金経営になったといいます(本人談)。
株式会社Your Verse 長谷川 朋弥さん
一時は約20人のメンバーが集まっていましたが、資金面で苦労し、翌月にはキャッシュアウト(手元の現金が尽きること)するところまで追い詰められました。残った10人に解散を告げましたが、会社は潰さず、事業の価値を捉え直したそうです(本人談)。
ベンチャー企業として生き残るためには、生存率の高いベンチャー企業を真似する必要があります。明確な戦略がない状態で経営を進めてしまうと、生存率の低いベンチャー企業の特徴に当てはまっていることが多いです。
公的な調査では、起業した企業の多くは5年後も続いていますが、数年のうちに事業をやめる会社もあります。数十年後の未来ではなく、数年後生き残ることを考えなければいけません。まずは、3年間生き残ることを目標にしましょう。
この記事の要点は、次の3つです。
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執筆:ベンチャー.jp編集部
この記事の情報は2026年10月8日時点のものです。
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